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REDDについての解説
REDDについてのFoE Japanの見解
森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減(REDD)についての解説
2007年12月11日
はじめに
インドネシア・バリで開催されている国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)では、森林減少・劣化による温室効果ガスを如何に削減するかが大きな議論の1つとして注目されまています。2000年の世界の温室効果ガスの約20%が土地利用変化により放出されていますが、その主な原因は途上国における森林ガバナンスの不全にともなう森林の過剰伐採や農地への土地利用転換です。昨年度公表されたスターンレビュー(注)でも指摘されたように、急激に進んでいる森林減少や劣化を食い止めるほうが植林による二酸化炭素の吸収を試みるより経済的・効率的であるという考え方が背景があります。

(注)スターンレビュー、付録7f 「土地利用変化及び森林セクターからの排出」(FoE Japan仮訳)を参照ください

主に途上国における急激な森林の減少・劣化を食い止めるため、 森林減少抑制による温室効果ガスの排出抑制分を新たに排出権と認め、「ポスト京都」において森林減少対策のかなめとする提案がブラジルやインドネシア、パプアニューギニア等の森林大国から出されています。ここでは市場メカニズムを導入することによりその資金源を確保しようとする構想も見られます(例えば、途上国で森林保全事業(伐採権の停止等)を実施した場合、仮に何も行わなかった場合に排出されたであろう温室効果ガスに相当する量の排出権が与えられ、その排出権を炭素市場で売買する)。また世界銀行は、そうした市場メカニズムを補完するための基金「森林炭素パートナーシップファシリティー(FCPF)」を提唱していますが、日本政府はこれに3年間で最大1000万ドル(約11億円)を拠出すると表明しています。

ここでREDDについての議論のポイントを簡単に解説していきたいと思います。

1.ベースライン(リファレンスレベル/リファレンスシナリオ)の設定
ベースラインとは、仮にREDD政策を行わないと森林減少・劣化がどの程度起こるかを予測するシナリオです。 このベースラインはREDD政策を行った場合にどの程度その政策が効果があったのかを判断し、 回避できた森林減少・劣化による温室効果ガス量を算出、コンペンセーション(補償)を 支払うための目安(ベンチマーク)として必要です。ここでベースラインをどう設定するかがとても重要になっていきます。 ベースラインはまず時間軸としてBAU(ビジネス・アズ・ユージュアル)に基づいたものと歴史的傾向に基づいたものとの2つ分けられます。

BAUに基づいたベースラインとは、現在の"ビジネス"をそのまま行った場合に森林減少・劣化がどの程度起こるかを予測するベースラインです。現在の森林減少・劣化を誘発している"ドライバー(要因)"とそれらの森林に対する影響が考慮されます。ここでは将来の森林減少・劣化への直接的影響と間接的影響の展開を考慮に入れなければならないため正確さに課題が残ります。例えば農産物やアブラヤシ、林産物の値段の変化により農地・林地の開発度合いが変わります。過大な森林減少・劣化ベースラインが作られることにより排出削減量を多く算出することもできてしまいます。

歴史的傾向に基づいたベースラインとは、今まで一定の期間内で既に起こった森林減少・劣化の傾向・度合いを参考に森林減少・劣化の程度を算出するベースラインです。今までに森林減少・劣化の度合いがより高かった国がより多くのコンペンセーションを獲得したり森林減少・劣化の対策を行ってきた国がコンペンセーションをあまり受け取れなかったりする可能性があることから公平性に課題があることや、開発途上国各国の過去のデータの信頼性・正確さにも懸念が残ります。

2.リーケージ
またベースラインは空間軸として地域レベルのものと国レベルのものとに分けられます。地域レベルのベースラインとは個別の限られた地域にREDD対象範囲を絞った、後述の国レベルよりも小さな面積のベースラインです。対象が絞られるため比較的正確に排出量を計測できる反面、そこで森林減少・劣化が抑制されたとしてもその分他の地域で増えた伐採活動等により森林減少・劣化が増える可能性があるため、排出削減量の"リーケイジ(漏れ)"が問題になります。

国レベルのベースラインとは国全体をREDDの対象範囲としたものです。対象範囲が地域レベルよりも広いため、地域レベルで起こるリーケイジの問題を完全になくすことはできませんがある程度回避することができます。しかし当然ながら地域レベルとくらべ対象範囲が広いため、正確に広範囲を捉えるための技術が求められます。

3.モニタリング
Deforestation(森林減少(完全な森林面積の消失)とDegradation(森林劣化(森林面積は減少しない森林の質的劣化))により排出される炭素量を算出することは、エネルギー消費活動の排出量を算出するよりも困難です。森林生態系の多様さ、ベースラインの予測・計算結果、現存のデータの正確さにより森林保護をした場合の排出削減量が変わってくるからです。さらに森林減少・劣化は二酸化炭素のほかにメタンという温室効果ガスも排出します。

また森林の質が低下する森林劣化については"劣化"をいかに定義し察知するかという技術的な問題があります。現在、森林減少や森林劣化を人工衛星から観察し排出量を割り出すリモートセンシング技術の開発が始まっていますが、衛星画像から割り出す排出量の正確さの向上、森林減少にくらべその判断が非常に困難な森林劣化を判断する技術開発及び地上レベルでの確認作業方法、また、森林はあるが資金源が乏しい途上国でいかに技術開発を進めるかなどの課題があります。

4.非永続性
森林減少や森林劣化は、自然現象や人間の活動によりいつでも起こり得ます。ということは、森林減少や森林劣化の防止を成功し、排出が削減されたと認められた温室効果ガスのが、突然の森林火災や違法伐採により排出されてしまうことが起こりえます。そのためには、どれくらにの時間枠ででREDDの防止の成果を計測するのかを議論しなければなりません。

5.資金分配
REDDにより誰がその利益を得るべきかを慎重に議論する必要があります。REDD事業により、森林に依存した伝統的生活を続けてきた先住民族や地域住民の環境サービスを損なうことがないように、またREDD事業を通して利益分配で途上国の貧困問題が改善するような制度設計の重要性が様々なNGOや途上国政府から主張されています。減少・劣化にさらされる広大な森林を多く所有する途上国諸国は、ガバナンスの脆弱さ、蔓延する汚職が蔓延しやすい途上国において、REDDの適切な資金分配は非常に重要な課題です。

なお、COP12までのREDDにおける議論の経緯の概要は以下のとおりです。

2005年のCOP11においてCoalition of Rainforest Nations(熱帯雨林連合)をリードするパプアニューギニア(PNG)とコスタリカから正式に提案を発表しました。COP11が加盟国に森林減少からの排出の削減(RED)に対する見解・提案の提出を要請してから、3度のSBSTA(24、25、26)と2度のワークショップを経て議論されてきました。去年のSBSTA25(COP12)では、熱帯雨林連合からODAや二国間や多国間の協定、市場メカニズムなどを資金源とする案や、ブラジルから市場メカニズムは用いず国レベルで森林減少を防止しできた分に対し国際社会から何らかの形で支払いを受ける提案、アフリカ諸国のコンゴ台地にある6カ国からの提案など、大きく分けて3つの案が提出されました。

これまでに合意をみている主な事項としては、@森林消失に伴う排出量算定については、 IPCC good practice guidanceのLULUCFに適用される方法とIPCC 2006 ガイドラインを用いること(但しIPCCのガイドラインの高階位の方法を取るには、ベースとなるデータの正確性が必要で、それらの不備な途上国への対応策が必要)A森林消失に伴う排出量については、早急にその削減に向けた行動がおこされなければならないことB森林消失への対応策を進めていくにあたっては、 信頼性のある森林蓄積の推定や排出量の算定が出来る技術等を開発途上国が身につけるためのキャパシティー・ビルディングとそのための制度強化が必要で、加盟国による支援が求められることCキャパシティー・ビルディングや、パイロット事業の推進といった早期行動が必要で、この為の新しい資金源の手当てを要し、これは市場メカニズムによらぬボランタリー基金にならざるを得ないことなどです。

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