聞こえていますか、私たちの声 オンダンカクサの現場から
ペルー/Peru
ペルーは、世界で3番目に温暖化影響に脆弱な国といわれています。この国の人々は、壮大ではあるが繊細な大自然の恵みを受けて生きています。今、その大自然は、頂を雪に覆われた山々から熱帯雨林に及ぶまで、すでに氷河の融解、異常気象、エルニーニョ現象などの深刻な温暖化の影響を受けています。

消え行く凍結貯蔵水

気温上昇によって、ペルーの熱帯性氷河は、後15年で消えてしまうかもしれません。水の供給、発電、観光資源等、人々は生活の大部分を氷河に頼って生きています。乾期には、氷河は「川の水を保つための唯一の生態系」となります。氷河後退は、ペルーやその他のアンデス山系の国々にとって危機的な状況となのです。また、最近では氷河湖の突発的な洪水が起こり、多くの死者が出ました。

エルニーニョフリアッヘ

ペルー南部では、エルニーニョ現象が激しさを増しています。太平洋の海面温度が上昇し、異常な豪雨、洪水、土砂崩れが起こっています。また、エルニーニョによって穀物の脅威となる菌性の病気の異常発生が起こりました。一方で、“フリアッヘ”と呼ばれる、霜や雹を伴う極端な寒さがかつてないほど頻発し、最も貧しく孤立した山岳地帯を直撃し、牧草地や家畜が失われました。

温暖適応対策と持続可能な開発

ペルー政府は、温暖化と大気環境の問題解決と持続可能な開発政策と組み合わせ、貧困削減を目指しています。過酷な状況にも耐えられる穀物品種の開発、新種の試行、植物病害の管理のプロジェクト等を実施しています。また、水供給源の確保の貯め、国立公園内の氷河、高緯度にある湖を調査しています。灌漑方法を改善するための様々な取り組みも進行中です。

ペルー 猛威をふるう極地の温暖化

ユロジオ・カピタン・コレト
 (63歳、アンカシュ県 ビコス居住区環境委員会委員長

時期に関係なく霜が降りたり、雹(ひょう)が降ったりすることで、住民たちは気候の変化に不安を感じ始めています。以前は霜や雹の影響を受けるのは3〜4年に一度でした。今では、異常気象がどの年、どの月にも起こり得ます。私達は、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、エンドウ豆、その他の豆類、キノアなどを栽培しています。気候の変化に対し、ジャガイモやキノアの種類は変えなければならなくなるかもしれません。以前はもっと高品質で、たくさん収穫できたのですが、今では、質は悪くなり、虫がついてしまいます。農薬の散布も、昔は一度でよかったところを、今では2〜3回撒かなければならなくなりました。新種の病気が現れているのです。黒斑(カビ)はちょうど10年前から現れはじめました。これも気候の変化と何らかの関係があるはずです

このページのTopへ

アウレリア・ルリア・カフェリーナ
(45歳、農業従事者・主婦

以前はいつ霜が降りるのかわかっていたので穀物が凍らないように暖かくしておくことで穀物を守ることができました。今では、全くわかりません。雨はとても激しくなり、地面を洗い流してしまいます。風も強いのでトウモロコシは曲がってしまいます。霜は穀物を凍らせてしまいます。女性達は普段は家にいて、家庭菜園と子供達の世話を受け持っていて、夫の手伝いをするときだけ上地の農場に行くものでした。でも、今では霜のために女性達までみんな農場に駆り出され、この変化を何とか乗りきろうと必死です。

このページのTopへ

ヴィンセント・サルバドール
(58歳、農業従事者

ひとたび霜が降りると、一年間の収穫も、投資したものも、全て失ってしまいます。予期することのできなかった2月の霜により、穀物はみんなだめになってしまいました。ここでは、主に自家用の食べ物を栽培しています。売るためのものを栽培している人はほとんどいません。140家族もが、食べ物を失ってしまったのです。ジャガイモの生産は、10年前に私が栽培を始めたころのようではなくなりました。以前は15〜17袋はとれたのに、今では5〜8袋です。突然の大量の雨が、ジャガイモの花をダメにしてしまうのです。 3年前まで山には雪がありましたが、今では山は真っ黒です。雪がとても少なくなっているのです。以前は、雪解け水は、澄んだ色をしていましたが、今ではむき出しの地表の上を通ってくるので鉛色です。こうした水はネグロ川に流れ込み、私達の飲み水となる川の水を汚染しています 。

このページのTopへ

マルコ・ゼパタ・ルヨ
(氷河学・水源部門長、INRENA

地球温暖化は、コルディエラ・ブランカの最も象徴的な氷河であるパストルリ氷河を、4年間(2001〜2005年)で21%も減少させてしまいました。これが続けば、数年後にはでこの氷河は完全に消えてなくなるでしょう。1989年には、航空写真をもとに、2041キロ平米にわたる3044個の氷河が確認されました。しかし、1997年に実施した新たな調査では、446キロ平米にわたる111の氷河の消滅が確認されたのです。現時点では、ブロッギ氷河とヤナマレイ氷河が温暖化による悪影響を受けています。近年、かなりの量の氷が消滅してしまったため、今ではブロッギ氷河はもはや氷河とは考えられていません。私達は、貯蔵水の減少により、将来、特に農業に深刻な影響が及ぶことを懸念しています。

このページのTopへ

ペルーの熱帯性氷河は温暖化に対して非常に脆弱ですが、経済のあらゆる側面で、氷河からの水に大きく依存しています。しかし、手立ては少なく、温暖化の環境や経済、文化、健康への影響は、人々の知識が不足していることで、さらに状況は悪化します。正しい情報の提供、迅速な適応対策の指導が必要とされています。

other photos

ペルーの現状 1/6
ペルーの現状 2/6
ペルーの現状 3/6
ペルーの現状 4/6
ペルーの現状 5/6

ペルーの現状 6/6

情報提供:マリア・テレサ・コルケ・ピネロ、ヴィクトール・エミリオ・サンチェス・カンポス Asociacion Civil Labor / FoE ペルー
(Voice from communities affected by climate chang)

このページのTopへ


アルゼンチンオーストラリアガーナスワジーランドツバルドイツブラジルペルーホンジュラス