聞こえていますか、私たちの声 オンダンカクサの現場から
ブラジル/Brazil
2004年3月、ブラジル南部の人々は、これまで経験したことのないほど大きなハリケーン被害(最高風速180km/h)に遭いました。温暖化によるものかどうかは、いまだ定かではありませんが、ハリケーン「カタリーナ」は温暖化リスクを知らせる警告となりました。今後の脅威に立ち向かう為の課題に対応する為、公開討論会や多くのワークショップが開催され、ハリケーン「カタリーナ」から学ぶ厳しい教訓と今後必要とされる対策の両面を交えて話し合われました。

■ 青天の霹靂(へきれき)
 − ハリケーン「カタリーナ」

ハリケーン「カタリーナ」により、ブラジル南部の40,000軒の家が被害を受けました。農家はとうもろこしの90%、バナナの70%、米の25%に被害を受けました。また、80%の学校が2週間閉鎖を余儀なくされました。人々は、この大きな被害・損害にどう向き合えばいいのかわからず、不安が広がりました。特に貧困地域では、もとの生活に戻る為の資金も方法もなく、大きな不安と混乱を招きました。気象変化の観察・観測するシステムが十分でなかったことも、被害を拡大してしまった原因のひとつです。

■ 広がる気候変動の影響

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による最新の研究では、南アメリカ地域の気温上昇と、土壌の水分の減少が報告されています。東アマゾン地帯では近い将来、熱帯雨林はサバンナになり、半乾燥地帯は乾燥地帯になると予想されています。乾燥地帯の農業関係者達は、彼らの土地が砂漠化し、塩害(土壌塩類化の拡大)により農作物や畜産に莫大な影響を及ぼすことを懸念しています。また、研究者の間では、今後も「カタリーナ」と同規模のハリケーンの発生が予測されています。

■ 地域に根ざすワークショップと政策提言

ブラジル南部地域では、温暖化に対応していく為のフォーラムが設置され、さらに特に被害を受けた各地域で「温暖化影響対策ワークショップ」が開催され、食物、農業、干ばつ、自然災害、健康、生態系等に関する適応対策として必要となることが議論され、南部州政府に対し、緊急対策の立案と防災、環境保全、持続可能な農業などの要望と課題が提出されました。 また、ブラジル政府と先進国政府に対しては、石炭火力発電所の段階的廃止、効率的でクリーンなエネルギーの採用、および森林の伐採や焼失の禁止を盛り込んだハイレベルマニフェストを提出されました。

ブラジル 厳しい教訓からの学び

テレジナ・ダ・ロカ・キリーノ

あの日、終日農場で働き、晩に帰宅した時に聞いた国営通信では危険などないように言っていたのですが…。
強風が近づいてくることがわかるととても怖くなりました。不安でどうしたらよいのかわかりませんでした。2本の木が家の屋根に倒れてきました。隣人宅に避難しようとした際、強風により、屋根の上にあった倒木が私達の車の上に落ちてきました。夫は亡くなり、私は脾臓に怪我をしました。そのあとのことは気絶してしまったためわかりません。
私達には、災害を予防する為に十分な情報が不足しています。世界には情報から隔離された地域がたくさんあるのです。ラジオや電話、インターネットを持たない人々だってたくさんいるのです。政府には、選挙のとき以外にも地域社会とコミュニケーションを持ってくれるよう願います。

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ルイス・イスマエル・デ・カルマルゴ・レメ
(44歳 農家)

ハリケーンの前とハリケーンの後では、何もかも変わってしまいました。たくさんの鳥、猿、野生動物、および植物がひどく被災しました。マニオク、トウモロコシや米などの作物はひどい被害を受け、収穫できませんでした。塩害も作物に深刻な影響を与えました。温室や穀物貯蔵庫も被害を受け、多くの穀物を失いました。
今後の対応策として、農家への影響を軽減するために、作物を多様化することが考えられます。それぞれの作物を少しずつ栽培し、1年のある時期にはある作物を植えつけ、別の時期にはほかの作物を植えつけます。もし問題が発生しても、その時期に植えつけられた作物のみが影響受け、その後は別の作物を植えつけることができます。すべてを失うことはなくなり、農家が受けるリスクが軽減されます。

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ダルマ・サントス・ニレ
(42歳 軍消防士)

湾岸線沿いの水を観測して、昨夏はとても暑かったことを確認しました。ここ数年、干ばつが多く、降水量の不足は大きな被害を及ぼしています。
市民として、また救急隊員としても、ハリケーンが特に心配です。以前は、ハリケーンは南大西洋に存在しませんでしたが、今や私たちはそれがどのようなものか知らしめられました。今後も類似した災害に突然脅かされる可能性もあります。私たちの地域社会は、どのように対応したら良いのでしょうか?明確な説明がないため、強風が起きるたびに、人々は混乱し、不安におののきます。
地域社会は、物理的被害だけでなく、精神的に大きな打撃を受けています。
緊急サービスは、今まで以上にハリケーンに備えるようになりました。この備えは、地域社会に届けられなければ意味がありません。

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情報提供:カロリーナ エレマン コエロ デ ソーザ / FoE ブラジル
協力: カロリーナ ガット、ダニエレ サラベリ、ルシア オルティス、南サンタ カタリーナ州協議会
(Voice from communities affected by climate change)

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