ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
6月6日の衆議院・外務委員会での政府答弁

   第151回国会 衆議院 外務委員会 第12号 2001年06月06日
   国際情勢に関する件

保坂委員
    社会民主党の保坂展人です。
    田中外務大臣、連日の断続的に出てくる報道に対しては私は疑問を持っています。 やはり改革に取り組む、特に機密費の問題であるとかあるいはODAだとか、いわゆ る利権の聖域的なところにタッチするということは非常に大変なことだと思いますけ れども、まずは負けないで頑張っていただきたいと思います。そういう視点から、私 はODAの問題を取り上げたいと思います。
   私、公共事業をチェックする議員連盟、この幹事をやっておりまして、全国各地で ダムなどの現場、これを視察したり調べに行ったりします。ここの会に、ケニアの水 力発電所について、もう参議院でもこの委員会でも議論されているし、御存じと思い ますが、ソンドゥ・ミリウ水力発電所の問題、これを検証してくれと。でもケニアは 遠いですから、なかなかこれは調べるのが難しい。そこで、質問主意書を出させていただきました。そして、これは小泉内閣になってから答弁書もいただきました。
   まず、事実関係を外務省の経済協力局長に確かめながら質問を進めていきたいと思 います。
   まず、八九年の十月に、技術協力の最初の所要資金として六億六千万円の円借款が 供与されたんですね。これは、事業実施に先立つ調査や設計や環境アセスや事業規 模、あるいは事業費全体の確定、期間、どのぐらいかかるかなどの調査に使われたと答弁書にあるんですけれども、それぞれどのように使われたのか、概要を述べていた だきたい。

西田 外務省経済協力局長
   お答えいたします。
   ただいま御指摘のように、八九年六月に交換公文が締結された円借款は、事業実施 に先立つ環境の影響評価、それから事業規模等の調査、設計のために使いまして、六 億六千八百万円でございました。

保坂委員
   これは答弁になっていないんですね。つまり、六億六千万円かけて事前 調査をやったんです。この事業、八五年にマスタープランが策定されて、随分後に なってから始まった。これは税金ですよ。その六億六千万の使い道はどうだったんで すか、公表されているんですか。はっきりしてください。

西田 外務省経済協力局長
   ただいまの調査の内容につきましては、環境評価につきましては 公表いたしております。基本的には、ケニア側によって行われたものでございますの で、いわばケニアのものということになっておりますので、我が方が一方的には公表 できないという性格のものであるというふうに理解をしております。

保坂委員
   公表しないと言うんですね。ケニア側によって行われたといっても、日 本のコンサル会社を使ってこの調査は行われたものというふうに存じ上げています。
   そして、第一期工事、今度は六十九億三千三百万円、これは取水設備、導水路、ア クセス道路の整備及びコンサルに対して払われたということですね。それぞれ幾ら払 われたんですか。そのぐらい明かしたっていいでしょう。

西田 外務省経済協力局長
   ただいま手元に数字がありませんので、至急請求してお答えいたします。

保坂委員
   手元に資料がないから言えない、後でなら言えるということですね。
   公共事業、日本国内のさまざまなところでチェックするといろいろ出てきますよ。 畳一枚が何十万円という例も新潟でありました。では具体的にお聞きしたいんですが、この事業に伴って二つの小学校が移転をしたというふうに聞いています。その建 設費用は日本円にして四億二千万円もかかっている。ところが、この小学校には電気 も水道もまだ整備されていないと報告を受けています。しかも、この小学校に備えら れた始業ベル、学校ですからベルが鳴ります、そのベルはドイツ製で九百五十万円。
   これはどうでしょうか。こういう事実、確認できますか。きちっと予算を管理して 適正に支出しているかどうか、大いに疑念があるんです。調べてもらいたい。

西田 外務省経済協力局長
   ただいまのベルの件を含めて詳細を承知しませんので、事実関係 を精査いたします。

保坂委員
   さらに時間を追っていきますけれども、今度は一九九九年、今から二年 前、第二期分の百六億円の円借款の供与に当たって、いわゆる自然環境や地域社会へ の影響について、答弁書にはこう書いてあるんですね。ケニア側の本件計画にかかわ る環境影響評価書等を作成したことを受けて、海外経済協力基金がOECFガイドラ インに照らして審査を行って確認をしたということなんですけれども、実は今、本 件、この水力発電所問題でNGO側が問題にしているのは、あるいは住民の中から声 が上がっているというふうに伝えられているのは、工事に伴っていろいろな自然環境 へ影響が出たじゃないか。例えば泉がかれてしまっただとか、あるいは住民への説明 不足、いろいろなことが言われていますね。
   このケニア側の環境影響評価書というのは、これは九六年以前に作成されたもの じゃないですか。九六年以前に作成されたもので、九九年から始まった、そういう工 事の影響をこれは反映されないですよ。その点はどうですか。

西田 外務省経済協力局長
   これは先生御案内のとおりに、第一期それから第二期と、いわば 全体として一つのプロジェクトになっておりますので、第一期のときに行いました環 境評価、それをまた、ただいま御指摘のとおり、JBIC、当時は旧輸銀、OECF でございますが、そのガイドラインに従いまして精査をした結果として認めたもので ございます。
   なお、先般もいろいろ御指摘等ございました。NGO等からも御指摘がございまし て、本年三月に、JBICから補足的に新たなミッションを出して、環境、社会問題 について精査をいたしてきたところでございます。

保坂委員
   先日も外務省とJBICから説明に来ていただきまして、随分聞きまし た。答弁書も、全部これは問題ないということなんですね。全然問題ないのだと。私 が聞いていること、これはNGOからいろいろ出してもらって、私なりに整理をして質問主意書を出しているのですね。
   資料を配付しましたので、ちょっと見ていただきたいのですが、例えば一点目の資 料に、これは一、二と一緒に刷ってありますけれども、二のところに、共同通信の配 信記事なんですが、実は、地元の住民集会に参加をしていた日本人記者が、プレス カードも持っているのにケニアの警察当局から逮捕されてしまった、こういうことを 配信しています。
   そして、このことについて、日本大使館はケニアの当局に対して抗議しているので すか、こういう事実を確認しているのですか、どうでしょう。

西田 外務省経済協力局長
   本件につきましては、累次の大使館――他の問題も含めまして、 先方に対して照会をいたしております。
   それから、私たちの理解では、現在、ケニア側による司法手続の中でもって調査を されているというふうに伺っております。

保坂委員
   現地の日本大使館は、取材中の記者が住民も含めて逮捕されてしまっ た、こういうことに対して抗議をしたのじゃないのですか。抗議をした結果、どうい うふうにケニア当局から答えが返ってきたのか、簡潔に答弁してください。

西田 外務省経済協力局長
   当方からの照会に対しまして、先方は、本集会は州知事への事前 の届け出をせずに行われたものであり、通報を受けた現地の警察当局が出動し、集会 を解散させ、その間におきまして、記者七名を含む十七名が逮捕され、拘束をされた 後、数時間後に解放されたという経緯があったということを述べたところでございます。

保坂委員
   取材中の記者も逮捕されるということがあった。
   次の資料を見ていただきたいのですが、資料の三、四、ちょっとわかりにくいかも しれませんが、写真をつけておきました。これは、昨年の十二月に、アフリカ・ ウォーター・ネットワークというNGOのオデラさんという方が、囲まれて銃撃をさ れた。左側の方が、車がタンクローリーなどによって進路をふさがれて、とめられて いる様子。そして、右側の方が、サイドミラーがもぎ取れていますよね。銃痕も、コ ピーで見にくいかもしれま せんが、見てとれる。
   こういうことが起きているではないかということを質問主意書で問うていますけれ ども、外務省、どうですか。やはりこういう銃撃の事実はあったのじゃないですか。 このオデラさんは、おまえを殺せというふうに警官の上司が命令をしているのを聞い て、身震いをした、大変けがもして、負傷も負った、そういうふうに証言しているの ですね。この点についてどうですか。

西田 外務省経済協力局長
   本年一月の住民集会におきましては、我が方からも、自由な意見 交換が行われることを希望しまして、参加制限等を行わないよう、ケニア側に十分に 申し入れをいたしました。その結果、ただいま委員の方から御指摘のありましたよう な事件があったということになっておりますが、まさにその事実関係を含めて、現 在、ケニア側の司法手続の中で明らかにされるものというふうに理解をしております。
   また、同集会に関連しまして、問題点を指摘しようとする人々に対する脅迫があっ たという事実は、現時点では確認されていないというふうに私たちは承知をしております。

保坂委員
   また次に、資料をつけておきました。ナンバー五ですけれども、この中 で、オデラさんは、サイドミラーを壊されて、車からおりた警備員らに、おまえが事 を荒立てた張本人だと叫ばれて、殴られた、そしてその後、その警官らに包囲され、 発砲された、運よく一命は取りとめたが、こういう内容になっています。
   これは、事実は一つしかないだろうと思います。ケニア側の司法手続でそれはやら れているのでしょう。しかし、日本は、ODAの四原則で、例えば、環境と開発を両 立しようとか、あるいは開発途上国の民主化を促進させるということを前提に置こ う、こういうことを原則として持っているわけですから、ダム建設に対する問題点を 指摘するような方がこういう暴行に遭うというようなことは、これは許されないの じゃないか。
   これは、田中外務大臣、いかがですか、ここまで聞かれて。

田中真紀子 外務大臣
   私はいつも思うことなんですけれども、こういう事件、例えば誘拐 事件とかなんかも、今それも私はチェックして、このとき大使館は何をやっていたの かと。最近、特にNGOが活発で、環境問題とかこうした開発問題でいろいろトラブ ルが起こるときに、NGOが前に出て大変よくやってくださっているということがあ るのですが、そういうときに大体我が国の大使館というのは何をやっているのだろう といつも思うのです。
   別の点で時間をあれするといけませんけれども、基本認識に関連しますからお話し させていただきたいと思いますけれども、前の科技庁長官のときだったのですが、あ る会議で、国際会議なのに情報が入りませんで、役所は幾ら言ってもだめなんです ね。私、知り合いの商社にばっと言ったら、だだだっと情報が来ましたよ。それで、 それは正しかったのですね。
   ですから、ODAトータルですけれども、委員のおっしゃっている、この質問を見 ましても大体論点はわかるのですけれども、きょう、午前中はお見えになったかどう か、私、ずっとODAについて言っていますけれども、聖域なき改革ということをこ の内閣は言っておりますけれども、やはりこれは人間の言ってみれば安全保障みたい なものだという面もあると思うのですね。それは、地球上にともに生きる人間として の連帯感とか共生とか、そういうことでもって、我々の納得いくような税金の使い方 をしなければいけない。
   ただし、それは、きょう言ってあしたというものじゃないのですね。ですから、長 い目で見ていって、これの場合は何年と言われましたか、全部で十数年たっています よね。(保坂委員「十六年」と呼ぶ)十六年目ですよね。ですから、そういう中で もって、しょっちゅう、やはり国が責任を持って、アラートになって、常時チェック をしてフォローしていく、何かがあったらそれを本国に言って、やはり見直しをする なり、適切なアドバイス をするなり、そして、どうしてもこれが必要であれば、さらに推進するためにどのよ うな手だてがあるかというために、NGOでも、あるいは現地等のいろいろな方から の意見を聞きながら、ところが、政権がかわるとか、いろいろな政治的なファクター もありますから、すべてがすべて理想的にいくとは思いませんけれども、やはりそう いうフォローアップといいますか、そういうことがなければいけないと思います。
   そして、やはり出先の大使館が何をやっているかということですよね。兼轄であれ 何であれ、世界じゅうに日本は大使を送り込んでいますので、大使でなくても館員の 皆様も御熱心な方もたくさんおられるわけですから、そういうような国民にかわった チェックというものをやっていくべきだというふうに思います。
   そして、このことも聖域なきでございますので、外務省がやる見直しの中でリスト にもちろん含めますし、その結果、推進になるかもしれませんし、中止になるかもし れませんけれども、客観的な評価というものをしてまいりたいというふうに思っています。

保坂委員
   はっきりした答弁だったと思います。そういう意味で、やはり今ターニ ングポイントで、ODAでこういう、一たん決まったら走り出して、もう全然チェッ クはされないということではやはり困ります。
   それで、人権上の資料をたくさんつけたのですけれども、その後についているの は、これは住民集会があったのですね、ことしの一月でしょうか。その住民集会の後 に、三人の住民の方が工事関係者から暴行を受けた、このことについて抗議をする手 紙とその診断書なんです。私は質問主意書を政府に出して、すべて問題ありませんと いうふうに回答が来たのです。そして、JBICの方も現地に行かれて、非常に平和 的にやっていて、この事業は何ら問題ない、そういうふうに断言しているんですね。
   かなり詳細に、十項目にわたって質問をしたんですが、全部問題なしというふうに 答えるに当たってはどういう調査を外務省はしたんですか。今、田中大臣もおっしゃ いました、現地の大使館は何をしていたと。そして、どのような調査を踏まえてこう いう答弁をしたのか。

西田 外務省経済協力局長
   お答えをいたします。
   ただいま御指摘のようなJBICのミッションでありますとか、累次にわたります 日常的な大使館と先方政府及び事業主体との対話を通じまして、今委員の方から言及 のございました環境、人権問題も含めて、これは非常に詳細にかつ厳しい形で我が方 の考え方は提起をしてきておりまして、そのような結果を踏まえてそのような答弁書 を、答えを書かせていただいた次第でございます。
   それから、その中でも私たちが指摘させていただいておりますのは、まさに今委員 が御指摘の集会がございました後にできました技術委員会というものが、その中には まさにNGOの代表の方も入っておられるわけでございますから、それらの中でもっ ていろいろな問題については継続的に取り上げて、必要なら対応措置をとっていくと いうことが、ケニア側自身の努力がなされておりますので、その中での努力を尊重し たいと思っております。

保坂委員
   それでは、財務省、ちょっとお話し中のようですが、よろしいでしょうか、国際局長。
   大蔵省改革で当時議論させていただきました。今回は、財政構造改革が言われる中 で、これは聖域はないんだ。これは二百億円近い、これから百億というのは、決して 少ない額じゃなくて、大変大きなお金ですよね。これが、いろいろ懸念や指摘が、国 会での議論もありました。その以前にNGOからもいろいろ指摘があったでしょう。 そういう声が財政当局に届いているんでしょうか。
   そしてまた、今外務省がいろいろ答えられましたけれども、資料をごらんになっ て、やはり、こういうことを踏まえて、どのように今後いわば最終判断も含めて受け とめていくか。このことについてどうですか、財務省から。

溝口 財務省国際局長
   円借款の供与につきましては、JBICの調査とかを踏まえまし て、政府の中で関係省庁幾つかございまして、まあ外務省中心でございますけれど も、財務省あるいは経済産業省等で内容をよくチェックいたしまして最終的に結論を 出しているものでございます。本件につきましても、ケニアの経済社会状況あるいは プロジェクトの内容、効果等々を慎重によく検討して、適切に対応してまいりたいと いうふうに考えているわけでございます。

保坂委員
   外務大臣に再び伺いたいんですけれども、いろいろ細かなことは、もう 時間がありませんから。
   これはケニアの中でも今大問題になっているようです。そして、これは、途中で工 事がとまればそれは何の意味もないものが残るということになるでしょう。ですか ら、本当に必要なのは、こういう事実がどのようにあったのか、あるいは疑念が、い ろいろ具体的に出しましたからね、こういうものをやはり客観的な立場できちっと調 査をしていただきたい。
   それから、本当にこのような、威迫といいますか、脅迫的なことも含めて、いろい ろデータを出していますから、調査をこれはもうきちっとするべきではないかと思う んですね。政府として再調査するべき案件だと思いますが、いかがですか。

田中真紀子 外務大臣
   
ODAはたくさんのものがありまして、きのう、先ほど来申し上げ ている中でもたくさんのものがありますので、それらについてできるだけ精査をする ようにということは言ってございますので。
   ただ、すべては、やはり初めは善意から始まっていまして、よかれと思って始めて いるわけでございますから、たくさんある中で今私はできるだけ評価をしてもらうようにしていまして、先ほどほかの委員にもお答えしたんですが、これは今うまくいっ ているし、二重丸とか、一重丸とか三角とかやっていただいております。それでもって、三角っぽいものについては、やはり全部行くわけにはいきませんから、これもま たコストがかかりますので。したがって、できるだけ現地に指示をして、こちらの段 階で、今ある情報でもそれが三角であれば、もちろん現地で調査をするのは当然だと 思います。

保坂委員
   
後ろで手を挙げておられるので外務省の局長にも伺いますけれども、こ れは答弁書の作成の時点ではこうだったでしょう。しかし、これはケニアでも大きな 問題ですよね。そして、日本のODAの今後のあり方を問う意味でも、これはもう時 を余りかけるわけにはいかないという段階だと思います。
   こうした疑問点についてきちっと答える、調査の必要はないと答えているわけです から、やはり調査をきちっとすべきだ。この点についてどうですか。

西田 外務省経済協力局長
   お答えをいたします。
   ただいま大臣の方から御発言がございましたが、大臣は、五月二十九日、参議院の 外交防衛委員会でまさにそのような趣旨のことをおっしゃいました。直ちに私たち は、五月の三十一日、在ケニア大使館青木大使より、先方財務省及び実施団体幹部に 対して、詳細にわたる我が方の立場を、真剣な考え方というものを伝え、先方はそれ に対して、先ほど申し上げました技術委員会等の場を通じ、それからさらに、政府と してもこれについては真剣に対応していく、ただし、ケニア政府としてはこれは非常 にいいプロジェクトなのでぜひ進めてもらいたいというような趣旨のことを回答をい ただいております。
   それからもう一つは、現地の報道ぶりも私たちも集めてもおりまして調査しており ますが、ぜひ案件を続けてもらいたい、いろいろな問題点についてはまさにそのよう な定期的な場を使って解決していくことが望ましいという意見がどちらかというと多 かったように私たちは理解をしております。

保坂委員
   
外務大臣に伺いますけれども、先ほど、一番最初のやりとりの中で、工 事に着手していくときのアセスだとか計画の策定だとか、六億何千万ですか、そういうものについては公表されていないんですね。どういう事業の見通しがあるのかとい うことについて、これだけの巨費を投じるODAについて、やはり国会に情報が公開 されるべきだろうし、そして、第一期のこの事業で六十九億ですか、そういう中で、 先ほど一例ですけれども小学校のベルが九百五十万という話をしました。これは本当 に確認をしていただきたいと思うんです、そのベルのことだけじゃなくて。
   これは、国際的に評価の高い監査法人などに、ちゃんとこの予算は本来の目的のも とに使われているかどうかということをやはりチェックする時期に入っているんじゃ ないでしょうか。そういうことについても、これは聖域じゃないと思いますが、いか がですか。

田中真紀子 外務大臣
   聖域であるとは思っておりません。要は、最近になってやっと日本 も言われてきていることですけれども、アカウンタビリティーとディスクロージャー の問題なんですね。説明責任があって、そしてやはり開示していかなかったら、なか なか、国民の皆様が税金を納めている立場で得心のいってもらえるようなODAは、 できると思っておりません。
   ですから、特殊法人もありますし、このODAの問題もありますし、聖域なき改革 ということをこの内閣は言っておりますけれども、特に莫大な費用のかかるものにつ きましては、私、午前中何度も言ったことの繰り返しになりますけれども、やはり世 界じゅうで今ODAというものは減ってきていて、それは援助疲れが出てきていると いうことなんですよね。日本もそれは含む。理念なき援助は不況になればもちろんだ めになりますよと。しかし、理念があってスタートしていても、今おっしゃるような 環境の問題があり、なおかつ、その途中でもって人命にかかわるような事故があった りする。それがあっても、さらに結果として、そういうものが遂行されてでき上がる ことが本当にその地域の方が喜ばれることになるのかどうか、これはなかなか判断が 難しいですね。
   ですから、そういうことを含めながらしっかりと見直していく。そして、進めるも のは進めます。それから、やはりカットオフするものはカットするということで、いずれにいたしましても、情報を開示しながら、全員の方の納得は無理だと思いますけ れども、必要最小限、皆様の御理解を得ながら、政府の責任において遂行するべきも のはするというスタンスでございます。

保坂委員
   世界じゅうたくさんのODAが広がっています。ですから、すべてを洗 いざらいというわけにいかないでしょう。  ただ、このケニアの件については、いろいろ問題の指摘もあった、国会での議論も あった。そして、外務省は十分だというふうに言っていますけれども、しかし、実際 に聞いてみると、調査に行かれたのはJBICの方で、いわば内輪です。そういうと ころで、具体的にだれに会ってどのようにインタビューして調査したのかということ は、公平な立場で、むしろ事業に関与しない、第三者性を持っている、そういうとこ ろがきちっと調査をして――私はこれはケニアにとっても不幸な事態になっていると 思うんです。だから、日本のODAの開発思想というものが、大きなものをどかんと つくる、こういう発想から、やはり地元の住民やその国の経済にとってもっと細かく 寄与できるように、比較的小さなものを丁寧にたくさんつくっていく、そういうふう に転換をしていくいい機会なのかなというふうにも思っています。
   そこのODA改革に向けた決意を最後に伺っておきたいと思います。

田中真紀子 外務大臣
   第三者によるチェックということをおっしゃいました。私もまさし くそう思っています。ですから、やはり企業とか一般市民の参加といいますか、プ レーヤーを広げるというか、国だけがやるのではない、そういうことが結果的には正 しいチェックにつながると思います。  ですが、その前に、私が先ほど来言っていますように、出先の大使館は大体何をし ているのか。政府で決まったんであったらそのまま、ほい来たほいで認めていく、追 認するのではなくて、もっとフットワークをよくして見ていく。そして、NGOであ り、第三者からの指摘がなくても本来はポイントアウトできるぐらいな、そのぐらい の大使館であるということ、出先機関であるということが、自立した外交でもある し、自立した日本の国 家になると思います。そういうことによってどこの国に対しても直言もできるし、責任もとれる、それが私たちが目指す日本の外国とのかかわりのあり方でもあるんでは ないでしょうか。
   これをもってお答えといたします。

保坂委員
   
ODAの改革について、特にこのことは日本国内の構造的にゆがんでし まったものを輸出しているようなものもありますから、やはりそういうことを正して いく、それでカットするものはカットしていく、おかしなものはやめていく。そし て、特に現地の経済やそれから住民の人たちに余計な混乱を持ち込んだり、あるいは 憎悪を増幅させていくというようなこともあるわけです。この工事がとまったらどう なるんだということは 確かに大きな問題です。しかし、その過程で、十分な説明があり、そして予算がき ちっと正確に使われているという検証があることが大事だと思っている。私たちも調 査をしたいと思っています。
   ぜひ田中大臣にもその点頑張っていただきたいということを申し上げて、質問を終 わりたいと思います。

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