ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
529日の参議院・外交防衛委員会での政府答弁(未定稿)


*この議事録は、5月29日に行われた外交防衛委員会のビデオを利用して作成したものです。

  • 櫻井充 参議院議員 
      我々、市民の目線で見たときに、ODAのあり方、特にきょうまず一例を示させていただきますけれども、ケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電事業について、これがどう見てもこのまま援助を続けなきゃいけないのかどうか非常に疑問がございます。
      まず、財務省の方にお伺いしたいんですが、ケニアの財政状況が非常に悪化している中で、この先こういう
    ODAの事業を続けなければいけないのかどうか、その点について、財務省としての考え方をお伺いさせていただきたいと思います。

  • 政府参考人(溝口善兵衛君) 
      この案件につきましては、現在、財務省ほか外務省等関係省庁が、ケニアの経済社会状況を総合的に勘案しつつ、慎重に検討している状況でございます。
      ケニアの財政状況につきましては、干ばつの影響などもありまして若干悪化しているとは承知しておりますけれども、現在、総合的に対応を検討しているところでございます。

      それから、それぞれの国の財政状況と申しますのは、その国の経済状況あるいは世界経済の状況等々いろんな要素に、要因に影響されるわけでございますから、こういうものをよく見て検討すべきものだと考えております。

  • 櫻井充 参議院議員 
      つまり、ケニアの場合には、延滞債務、
    200011月のパリ・クラブでリスケジュール、要するに債務繰り延べが決まったばかりだというような状況ですから、果たしてその国に、もちろん必要なものであれば援助していくべきところもあるのだろうとは思いますけれども、もう一点、このプロジェクト自体が果たしてケニアの国民の方々にとっていい案件なのかどうかということを検討しなければいけないんだろうと思います。
      まず一つは、これが環境案件ということに指定されているわけですが、水力発電所をつくるということが果たしてその環境案件に当たるのかどうか、その点についての外務省の見解をお伺いさせていただきたいと思います。

  • 政府参考人(西田恒夫君)
       環境案件に当たるかどうかについての御質問でございますが、政府が環境案件を取り進めるに当たりましては、環境の定義はやや広目にとらせていただいているのは先生御案内のとおりだと思います。水力発電所を含めまして、例えば水力の場合には大気汚染等が出てこないとか、いろんな形でもって基本的に環境に対してはよりよい、フレンドリーなものだという理解をしておりますので、もちろん具体的な、ケース・バイ・ケースでございますが、場合によっては環境案件という取り上げ方をこれまでもいたしているところでございます。

  • 櫻井充 参議院議員 
      外務省のまず認識をお伺いしたいんですが、この案件が今事業を行っているその地域に対して現時点でどの程度影響を及ぼしているというふうにお考えでしょうか。つまり、正のというよりも負の影響というのはどの程度おありだというふうに認識されていますか。

  • 政府参考人(西田恒夫君)
     
    この案件は、御案内のように、ケニア政府から大変に高いプライオリティーでもって要請がありまして、これまで、第一期におきましては、その意義を認めまして円借の対象として実施をしてきたところは御案内のとおりでございます。他方、一部のNGOの方々を初めとしまして、住民の移転問題あるいは広い意味での環境問題について問題があるのではないかという問題提起がなされていることは十分承知をいたしております。
      私たちとしましては、ケニア側に対しまして、このような問題点を十分にクリアするようにということを重ねて申し上げておりますし、またケニア側におきましても、対話集会等を行うなどしかるべき手当てをしているものというふうに理解をいたしております。

  • 櫻井充 参議院議員
      しかし、この計画自体そのものがかなり難しいというか無謀だったというふうに思うものがございます。
     
    ちょっときょう資料をお渡しすればよかったのかもしれませんけれども、その川の水量、月ごとの流量を考えると、乾季やそれから雨が少ない時期、1月、2月、3月、それから10月、11月、12月というのは、水力発電に必要な水量よりもかなり下回るというようなことが実はもう最初からわかっているわけです。ですから、そのために、実はこの地域で農業やそれから漁業を行っている方々にまず多大なる影響が出るのではないかというふうにも言われております。
      それから、取水地の下流にオディノの滝がございますけれども、これはその地域の方々にとってとても神聖な場所でして、この滝も、こういう事業を行うことによって、もしかすると流量が減ってしまって滝がなくなってしまうかもしれないというふうにも言われておりますし、それからもう一点ですが、その滝つぼで魚が繁殖しているというようなこともあるわけですけれども、ここも枯渇まではいかないけれども水量がかなり減ってしまうなど、地元の方々に対していろんな影響が出てくるのではないだろうかというふうに言われておるわけでございます。
       まだこれだけじゃなくて、今の工事をやっている最中にも実はいろんな問題があります。今回ぜひ知っていただきたいんですが、タンクで道路に水をまいているんですけれども、これは実は汚水、汚水といいますか、し尿をくんで、そのタンクがまた同じように水をくんでその辺いばらまいているんです。つまり、どういうことになるかというと、とてもじゃないけれども衛生環境がよくなるとかそういう状況にはないのにもかかわらず、調査をしてみると、環境がよくなる、衛生環境がよくなるというような調査結果になっているわけです。

      外務省として、本当にどの辺まできちんと調査されて、この案件が継続で、しかもケニアいとって、ケニアの方々にとっていいと判断されているんでしょうか。

  • 政府参考人(西田恒夫君)
      ただいまの水の量に関しての御質問でございますが、私たちの調査を通じましても、先生御指摘のとおり、当然その地域の特性からしまして雨季と乾季で大変に水量には差が出てまいります。年平均流量が大体毎秒
    41立方メートルというふうに見込まれておりますけれども、このような、雨季におきましては大変に豊富なものになりますし、乾季においては、年によって差がありますが、かなり少なくなるということは御指摘のとおりでございます。
       したがいまして、今回の計画をつくるに当たりましては、いずれにしましても、導水路にソンドゥ川の水が引かれた後も、生態系への影響を緩和するために必要な河川流量を確保するという大前提のもとで計画が立てられているというふうに考えております。

       それから、先ほど、地域住民等々に対する負の影響がたくさん出ているのにもかかわらずさらに進めるのか、今、現地においてはどういう対応になっているのかという御質問でございましたが、先ほど申し上げました対話集会を通じまして技術委員会というものが、事業の実施者、地域住民、
    NGO、有識者から構成されるものがただいま設置されておりまして、それにはそれぞれ分科会もございまして、毎月、さらには年に4回のペースで委員会が行われております。ここで環境あるいは住民移転の問題を含めましてありとあらゆる問題について議論ができるという仕組みができておりますので、そこでしかるべき対応ができることを希望している次第でございます。

  • 櫻井充 参議院議員
      大臣、ぜひもう少し知っていただきたいことがありますので。

       アクセス道路をつくって、この周辺のほこり被害によって、子供のぜんそく、肺病、それから女性が片目の視力を失う、家畜が視力を失うなど深刻な事態がまず明らかになっている。それから、工事の汚水が地域住民の農地に流れ込み、土壌汚染が進んでいる。それから、家畜が畑にたまっている工事の汚水を飲んでおり、その影響が心配。まだこれは影響が出ていないようです。それから、トンネル工事の始まった昨年
    10月ごろから、年間を通じてかれることはなかった地域の小川や泉がすっかりかれてしまった。このため、飲料水や家畜に飲ませる水、畑の水も遠方までくみに行かなければならなくなったとか、それから大量の砂を採取したために土壌の荒廃が進んで農地に適さなくなったとか、それから水系伝染病やマラリア等の増発のおそれが指摘されるにもかかわらず、保健施設の充実などそれに対する適切な措置がとられていないだの、現地で調査されているNGOの方からこういう報告も受けております。それは、先ほど市民の目線でという話を私はいたしましたけれども、市民の方々が見るとこういう案件でございます。
       ですから、ぜひ大臣は、先ほどのお話ですと市民の目線でということでしたので、もう一度この案件を見直していただきたいのと、それからもう一点、ちょっと不思議なことがあるんですが、このプロジェクトもフェーズUに入っておりまして、プロジェクトの借款の仕組みというのがありますけれども、その借款の仕組みで言いますとこのフェーズUというのは一体どこまで進んでいるのか、それについて教えていただきたいと思います。

  • 政府参考人(西田恒夫君) 
      先ほど
    NGOについて御言及がございましたけれども、ただいま申し上げました委員会にはNGOの代表の方も入っておられます。当然のことながら、NGOとしていろいろ御意見がある場合にはこの場を通じて御意見が反映され、委員会としての結論を出されていくものというふうに承知をいたしております。
       それから、フェーズUはどうなっているのかという御指摘でございますが、これは御案内のとおり、現在まだ正式な、いわゆる円借に対する政府の立場を決めます対応についてはなされておりませんので、慎重に検討という段階にとどまっております。

  • 櫻井充 参議院議員 
      しかし、これは恐らく閣議決定がされて交換公文署名が行われて借款の契約が締結される、そしてその後入札ということになるんだろうと思いますが、もう工事の入札は終わっているんですよね。つまりは、非常におかしいと思いますのは、こういう閣議決定が済まなければ入札ができないはずなのに、なぜもう入札が終わっているんですか、この案件は。

  • 政府参考人(西田恒夫君)
     
    御指摘のとおり、正式の入札はそのような日本政府としましての正式な決定が行われてからということでございます。したがいまして、今御指摘の第2フェーズに関します入札に関しましては、あくまでもケニア側がケニア側の責任において一定の見通しのもとに行ったものというふうに理解しておりますので、そのこと自体が直ちに違法とかそういう話には当たらないと思っております。
     
    しかし、日本政府としましては、日本政府としての正式な決定をした後、改めて、例えばJBIC等の調達ガイドライン等に則しましてこれを検討して、それが正式なものにふさわしいかどうかについて検討するということになると思います。

  • 櫻井充 参議院議員
      私、ここにちょっと公電を入手しておりますけれども、その公電によりますと、ある方がケニアに行かれたときに、円借款としては前向きに検討したいんだ、私が帰国次第、関係省庁に連絡、指示を行って、本件プロジェクトへの円借款供与の迅速な検討を進めることを約束しましょうかというような趣旨のことを述べられているわけです。それがこういう形で公電で送られてきておりまして、これは平成
    11年度、8月にもうこういう外電というんですか公電というんでしょうか、これが送られてきております。
      つまり、この時点で、実はこれはもう前向きに検討するから、方向性を決めているから、では入札まで済ませてくださいと。ですから、手続論としては非常におかしくて、こういう約束があったのかどうかということをぜひ外務大臣にお調べいただきたいことと、つまりは、こういう横やりをある政治家が行っていくということが、私は何かどす黒い利権という中に一つ案件としてあるのではないかというふうに思っております。
       大臣、この件に関してきちんと調べていただけますでしょうか。

  • 田中真紀子 外務大臣 
      ぜひ調べさせていただきます。

       これは
    4年前の政権下で発足したことだと思いますが、基本的にはODAというのはやっぱり私たち国民の税金ですし、よかれと思っていい方向に世界に貢献していくということが本来の眼目、目的でございますから、その途中でやはり何か、今この問題を聞いていますと、大体途中で水の問題で、環境との関連でいろいろ問題化してきていると。
       そうであっても、またそのまま、もしも委員が発言なさったように引き続き問題をはらみながら進行するのであれば、それをもう一度、国とそれからケニアの、この場合はケニアですが、相手の国とよく相談をしながら再検討するということを、ほかの
    ODAのありようも含めまして検討するということも必要であろうと思います。
       ご示唆に富んだ指摘、どうもありがとうございました。

  • 櫻井充 参議院議員
       ありがとうございます。

 

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