ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
4月18日の質問に対する内閣からの答弁書(5月25日)

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内閣衆質一五一第五六号

  平成十三年五月二十五日

内閣総理大臣 小泉 純一郎

衆議院議長 綿貢民輔殿

衆議院議員保坂展人君提出

 ケニア共和国、ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   衆議院議員保坂展人君提出
    ケニア共和国、ソンドゥ・ミリウ水カ発電事業に関する質問に対する答弁書

一について      →→質問主意書の該当部をみる

 ソンドゥ・ミリウ水カ発電計画(以下「本件計画」という。)については、ケニアとの間で、平成元年六月に事業実施に先立つ調査、設計等(環境影響評価、事業規模、事業費及ぴ事業期問の調査等)に対し六億六千八百万円までの円借款を供与することを内容とする交換公文の締結を行うとともに、平成九年一月に第一期分として土木工事の一部(取水誤備、導水路、アクセス道路等の整備)及びコンサルティングサービスの実施に対し六十九億三千三百万円までの円借款を供与することを内容とする交換公文の締結を行った。

 また、現在、第二期分として残りの土木工事(放水路、発電所、変電所等の整備)及び発電機等の調達に対し追加の円借款を供与することを検討中であるが、その具体的規模はいまだ確定していない。

 本件計画に関運し、平成十三年一月、現地において事業実施機関であるケニア電カ公杜、事業実施薬者、地域住民、非政府組織(以下「NGO」という。)及び有識者の参加を得て対話集会が行われ、本件計画の継統の支持、第二期分の円借款の早期供与の要望及ぴ関係者による定期的な協議の場の設立が決議されたと承知している。これを受けて、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成される本件計画に関する技術委員会(以下「技術委員会」という。)が設立されており、本件計画の実施上の諸間題については技術委員会の場において改善に向けた議論が行われると承知している。地域住民やNGOからの苦情及び指摘については、事業実施機関において技術委員会での協議を踏まえて必要な検酎が行おれるものと承知しており、我が国としても、適切な対応を促していくこととしたい。

二について      →→質問主意書の該当部をみる

 本件計画による発電所が完成し、導水路にソンドゥ川の水を転流する際には、転流に伴うソンドゥ川の流量の減少による生態系等への影響に配慮し、乾季においても河川維持流量を確保することとなっている、

 アレステス、ク一フリアス及ぴシルべ(以下「アレステス等」という。)はケニア国内に広く分布している魚種であり、ソンドゥ川流域の固有種ではないと承知している。また、転流が行われる区間には滝が存在しており、アレステス等は川を遡上する魚種であるが、滝を乗り越えられるものではないと承知している。

 ソンドウ川の流量については、雨季においては転流後も十分な奈流れる一方、乾季においても河川維持流量を確保することが計画されていることから、アレステス等に対する影響は小さく、現時点において特段の対策は不要であると考えられていると承知している。

 御指摘の水供給プロジェクトは、我が国の支援によって実施されているものではないが、本件計画の実施地域に対して当該プロジェクトの計画どおりの水供給が行われていない状況にあり、この間題の改善等を含めて技術委員会の場で議論されていると承知している。また、当該プロジェクトの進ちよく状況、社会環境の変化等を考慮し・必要に応じ事業実施機関において河川維持量の見直しが行われることになっていると承知しており、我が国としても、適切な対応を促していくこととしたい。

 オディノ滝が文化的又は宗教的に重要な場所であるとの確認はされていないと承知している。また、発電開始後も河川維持量は確保されることとなっており、この滝が消減することはないと承知している。

 野生動物については、本件計画の実施地域において固有種が生息するとの事実は確認されていない。また、本件計画の実施地域ではガゼルの一種であるディクディク等の動物の生息が認められるが、これらはケニア国内において広く分布する種とされており、本件計画が与える影響は小さく、現時点において特段の対策は不要であると承知している。なお、微生物に対する影響の調査については、現時点で十分な科学的知見の蓄積がないこともあり、一般にこのような調査を行わないことについて特段の問題はないとされており、本件計画においても調査は行われていない。

 事業実施機関は地域住民に対して、土木工事の実施前から本件計画の内容に関する脱明を行ってきており、ソンドゥ川の水の発電所への転流や放水路を通じての復流による流量変化についても既に説明済みであると承知している。また、事業実施機関は、今後とも定期的に地域住民との対話を行っていく予定であり、その中で更に本件計画の内容に関する説明を行うとともに、環境杜会面のモニタリングの結果等について検討し、問題がある場合には、必要に応じ対策を講ずる考えであると承知し.ており、我が国としても、適切な対応を促していくこととしたい。

三について      →→質問主意書の該当部をみる

 地域住民に対する補償については、代替地の提供、金銭補償及び両者の組合せという三つの選択肢が提示されたが、補償対象者の大半が金銭補償を選択したと承知している。補償金額については、市場価格に基づいて交渉が行われ、更に協カ費を加算した価格により契約及び支払が行われており、強制的な立ち退きが行われたとの事実は確認されていないと承知している。

 また、補償手続の前には説明会が開催され、補償金の使途等についての啓発が図られていると承知している。さらに、補償後における地域住民の生活水準等の状況については、モニタリングが行われ、問題があれば技術委員会において改善に向けた検討がなされることとなると承知しており、我が国としても、適切な対応を促していくこととしたい。

四について      →→質問主意書の該当部をみる

 本件計画の実施現場では、労働組合の結成が認められており、労働組合を結成するとすぐに解雇されるとの事実はないと承知している。御指摘のストライキに際しては、事業実施業者がケニア労働省の現地事務所と協議し、その助言に基づいて労働者に対して職場復帰通告を行ったが、これに従わなかったために解雇を行ったものと承知している。

 平成十三年三月現在の本件計画の実施現場における雇用者については、本件計画の実施地域であるニャンド地区及びラチュオニョ地区からの雇用者は約八百名であり、本件計画の実施地域から優先して雇用が行われているものと承知している。また、このような雇用状況については、技術委員会による調査が行われており、問題があれば技術委員会において改善に向けた議論が行われることになると承知しており、我が国としても、適切な対応を促していくこととしたい。

 本件計画の実施現場における雇用者の給与がケニア政府指定の最低賃金以下であるとの事実は確認されていないと承知している。問題が発生した場合には、技術委員会で改善に向けた議論が行われ、事業実施業者において適切な対応がなされるものと承知している。

五について      →→質問主意書の該当部をみる

 本件計画の実施現場において発生するほこりの削減については、既に事業実施機関において一定時間ごとの定期的な散水、道路に段差を設けることによる車両の遠度制限等の対策を実施しているが、状況の更なる改善のために、散水の間隔を短縮し、必要に応じ舗装を行う等の措置を講ずることも検討されていると承知している。また、ほこりによる地域住民の健康への影響については、御指摘のオボーチ保健所の報告書の内容も含め、技術委員会で検討が行われており、必要に応じ事業実施機関において対策を講ずることになっていると承知している。

 工事に伴う排水は中性化処理を行ってから放流しており、農地に未処理のまま流れ込んだという事実はないものと承知している。なお、御指摘のとおり、トンネルエ事現場付近の農地の一部に中性化処理を施した後の水が流れ込んだが、事業実施業者が工事用排水路の移設等再発防止策を講ずるとともに、被害に対する補償を行ったと承知している。

 トンネルエ事現場付近で泉や小川が枯渇しているとの問題については、技術委員会において検討が行われており、必要に応じ事業実施機関において対策を講ずる予定であると承知しており、我が国としても、適切な対応を促していくこととしたい。

 アクセス道路の建設によって土壌の侵食が生じたとの事実は確認されておらず、住民が従来から利用していた道路が破壊されたとの事実も確認されていないと承知している。

 工事用の砂の採取については、ビクトリア湖周辺地域を中心に複数箇所で分散して行われている。本件計画により、特定の地域で砂の採取がなされたことにより土壌の荒廃が進み、当該地域が農地に適さなくなったとの事実は確認されていないと承知している。

六について      →→質問主意書の該当部をみる

 本件計画の実施地域では既に保健所等は設置されているが、当該地域の人口が増加していることから、現在技術委員会において保健施設の充実の必要性について議論が行われており、必要に応じケニア側において対策が講じられる予定であると承知しており、我が国としても、適切な対応を促していくこととしたい。

七について      →→質問主意書の該当部をみる

 現在、御指摘のような汚職等が発生しているとの事実は確認されていないが、技術委員会において事実関係を調査中であると承知しており、我が国としても、十分な実態調査が行われるよう促していくこととしたい。

八について      →→質問主意書の該当部をみる

 御指摘の平成十二年二月の集会は、州知事への事前の届出をせずに行われたものであり、通報を受けた現地の警察当局が出動し、集会を解散させるとともに、記者七名を含む十七名を連行し、数時間の拘束の後、解放した経緯があったと承知している。警察署への連行の際、連行者の人数が多かったために警察車両のみでは足りず、近隣に駐車していた事業実施業者の車両が使用されたとのことであるが、本件の詳細な事実関係は必ずしも確認されていないと承知している。

 平成十二年十二月にNGOに所属するアーグウイングス・オデラ氏が逮捕された事件については、現在係争中であり、今後ケニア側の司法手続の中で事実関係等が明らかにされるものと承知しており、我が国はケニア国内法上の評価を下す立場にない。

 御指摘の国際人権規約とは、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)を指すと解される。ケニアは同規約の締約国であるが、現段階では、御指摘のような人権侵害が行われたかどうかが不明であり、どのような点が同規約との関係で問題となり得るかをお答えすることはできない。

 平成十三年一月の対話集会については、我が国としても自由な意見交換が行われることを希望し、参加の制限等が行われないようケニア側に申し入れるとともに、在ケニア日本国大使館及び国際協力銀行からも同集会に参加した。同集会には地域住民、NGO等から幅広い参加があり、多くの参加者が意見の表明を行ったと承知しているが、本件計画の問題点を指摘しようとする人々への脅しがあつたとの事実は確認されていないと承知している。

 以上の事案の事実関係については、今後ケニア側の司法手続等を通じて明らかにされるものと考えられ、我が国としては引き続きケニア側の対応を注視するとともに、ケニア側に対して十分な実態調査を行うよう促していきたいと考えており、我が国が実態調査を行う予定はない。

九について      →→質問主意書の該当部をみる

 本件計画の第二期分の円借款供与については、ケニア側の要請を踏まえ、外務省、大蔵省、通商産業省及び経済企画庁の四省庁が、在ケニア日本国大使館及び海外経済協力基金による本件計画に係る報告を踏まえて御指摘のような問題を含む種々の観点から検討を行った結果、平成十一年九月、本件計画の必要性、ケニアの経済及び杜会の状況、二国間関係等を総合的に判断して、円借款供与を行うとの方針を策定し、ケニア側に事前通報を行ったものである。

 なお、特に自然環境及び地域社会への影響については、ケニア側が本件計画全体に係る環境影響評価書等を作成したことを受けて、海外経済協力基金が「環境配慮のためのOECFガイドライン」に照らして審査を行い、ケニア側が行うべき環境上の措置として、河川緯持流量の確保、排水の処理、.水質モニタリングの実施、工事による樹木伐採地域に対する植林、移転住民への配慮等があることを確認している。

十について      →→質問主意書の該当部をみる

 特別環境案件金利は、地球環境問題対策及び公害対策に資する円借款案件に適用することとされている。

 本件計画は、再生可能なエネルギーである水カを用いるため、発電に伴う温室効果ガスの発生量が極めて少なく、また、火カ発電所の運転に伴う化石燃料の消費を抑制する効果が期待されることから、地球環境間題対策に資する案件として特別環境案件金利の対象となると判断している。

十一について      →→質問主意書の該当部をみる

 本件計画については、海外経済協力基金(当時)による審査を踏まえた上で、ケニアとの二国問関係、ケニアの経済及び杜会の状況等を総合的に勘案しつつ、円借款の供与について慎重な検討を行い、必要に応じケニア側に環境杜会面の対応を求める等適切に対処してきたものである。

 今後とも、在ケニア日本国大使館及び国際協力銀行を通じて、現地の状況の把握に努めるとともに、環境杜会面に関する様々な立場の意見も参考にしながら、本件計画が適切に実施されるよう関心を持って見守っていく所存であり、必要に応じケニア側に対応を求める等適切に対処してまいりたい。

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