サンロケ多目的ダムプロジェクト
現地NGOから日本の財務省へ

サンロケダムへの融資見直しを求める要望書(2001.11.13)

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→→ベンゲット州リーダーズ・フォーラムの声明文(2001.11.08)をみる

2001年11月13日

1008940
東京都千代田区霞ヶ関311
財務省
塩川 正十郎 財務大臣
Fax. +81-3-5251-2154

コルディリェラ人民同盟(CPA

前略

 サンロケダムの影響を受ける先住イバロイ民族およびカンカナイ民族の共同体による合意の問題をご配慮いただき、ありがとうございます。日本で活動する地球の友ジャパンおよびその他のNGOが我々の要望を受け、先住民族問題に関する大統領諮問事務局(OPAIPA)および国家先住民族委員会(NCIP)による共同調査の報告書をすでに提出済みかと存じます。

 この共同調査の報告書は、イトゴン町の影響を受ける共同体の権利が侵害されているという我々の主張が正当なものであることを裏付けているだけでなく、我々がサンロケダム事業に反対しつづけてきた、その根拠をも示すものです。とりわけ、本報告書では、以下の点が確認されています。

  1. 先住民族権利法(IPRA)の法的要請である、影響を受ける共同体の自由意思による、情報を十分与えられた上での事前の合意(Free, Prior, Informed Consent; FPIC)が確保されていない。また、仮に事業の開始前にコンサルテーションが行われていたとしても、共同体は合意しなかっただろう。
  2.  とくに、OPAIPAによるコンサルテーションが、法律が遵守されているか否かを見極める目的で行われたという観点からすれば、道徳的に考えて、フィリピン政府は彼ら自身による調査結果を尊重し、法律違反を犯していることを認めるべきです。フィリピン政府は、この調査結果を簡単に片付けてしまうことはできませんし、また、事業がIPRAの施行前に始まったという見え透いたテクニカルな理由で、IPRAFPIC条項をサンロケダムの問題に適用できないと言い逃れることもできません。

     これは、先住民族の権利を認めるべきであるフィリピン政府の本分とは打って変わり、彼らの不誠実な態度を例証しているものです。本件における先住民族の権利は、先祖伝来の土地や生活手段を失い、また、事業によるその他の悪影響の矛先が向けられるイバロイの共同体にとって、すでに生死を争う問題なのです。

  3. 本事業は、地方自治法によって規定されている地方自治体(LGUs)の承認を得ていない。

 イトゴン町およびベンゲット州の多くの政府職員も含む、イトゴン町の影響を受ける共同体は、イバロイの先祖伝来の土地に対する権利の侵害だけでなく、地方自治法の違反、また、サンロケダムが引き起こす悪影響の問題を取り上げてきました。イトゴン町議会が過去に採択した本事業への承認を撤回する決議は、依然としてそのままの状態となっており、また、ベンゲット州議会もこれまでに、本事業を承認しておりません。

 このことは、フィリピン国法の法的要請、また、民主的プロセスに反して、フィリピン国家政府が本事業を強硬に推し進めていることを明確に示しています。地方自治法では、共同体に悪影響を及ぼす可能性のある事業について、その実施前の段階で、その共同体へのコンサルテーションを行うことを要請しているほか、さらに、関係する地方自治体による承認も必要としているからです。

 以上の点から、我々は、フィリピン国家政府に対し、影響を受ける先住民族の共同体の権利を尊重し、認めるよう、また、サンロケダム事業を中止すべきであると、引き続き要請したいと思います。

 一方、我々は、早急にあなた方の公正な判断を要請し、日本政府が本事業への財政的支援を中止することで、影響を受ける先住民族の権利を認めるということを行動で示していただきたいと思います。

 あなた方が本事業への支援を続ければ、それは、すでにフィリピン国法にあからさまに違反していることと同じです。また、本事業が先住民族の共同体に及ぼす悪影響をあなた方が無視していることを示すことになります。事業がすでに始まってしまった今、本事業への日本の財政的支援を凍結することは、影響を受ける先住民族の共同体が彼らの権利をさらに侵害されることを回避するために、非常に効果があるでしょう。日本政府が、国際的な義務である人権保護という本分から、影響を受ける先住民族の権利を法的、また、道徳的に、尊重する義務があると我々は考えます。

 CPAのメンバーでもあるシャルピリップ・サンタナイ先住民族運動(SSIPM)およびイトゴン・インターバランガイ同盟(IIB-A)は、これまで、先住民族としての彼らの権利が認められるべきだと主張してきました。また、彼らは、先祖伝来の土地や生活手段を決して手放さないと誓ってきました。これは補償の問題ではなく、土地と一体である彼らの生活を尊重し、認めるかという問題なのです。本事業への日本の融資を中止していただきたいという彼らの要望は、社会的正義の問題なのです。この問題は国際協力銀行に対しても、さまざまな意見表明書により、これまで繰り返し提示されてきたものです。

 SSIPMIIB-AおよびCPAのリーダーとメンバーは、喜んであなた方との会合を開催し、継続されているサンロケ多目的ダムの建設に対する意見を直接表明したいと考えています。また、我々の意見に対して十分な配慮がなされ、サンロケダムに関連した問題の解決に向けて先住民族の権利が尊重されるならば、多くの利害関係者が一堂に会する(Multi-stakeholders)会合/対話集会にも喜んで参加したいと思います。

 ご高覧ありがとうございます。あなた方が我々の要望に十分に配慮してくださることを願います。お返事をお待ちしております。

草々

コルディリェラ人民同盟(CPA)代表
Joan Carling

Cc. 国際協力銀行(JBIC

国家先住民族委員会(NCIP

先住民族問題に関する大統領諮問事務局(OPAIPA

国際連合人権委員会(UN-CHR

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