サンロケ多目的ダムプロジェクト
ダム建設地上流 ベンゲット州のリーダーズ・フォーラム
参加者による声明文
(2001.11.08)

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私達の人権を尊重してください!私達のこの声に目を向けてください!
今!!
サンロケダムの建設を止めてください!

サンロケダムに関するベンゲット・リーダーズ・フォーラム参加者による声明文

(2001年11月8日 バギオ・シティーにて)

 ここには、現在進められているサンロケダムの建設によって影響を受ける共同体の市民団体、自治体職員、一般の関係市民、および構成員のリーダー達が集まっています。私達はベンゲット州の住民で、この州で土着の文化を築いてきたイバロイ、カンカナイ、カラングヤ先住民族であったり、他州から来た開拓者の子孫であったり、また、土地所有を認められ他州から移住してきた者であったりします。ベンゲットは私達の故郷です。その地の住民とは、私達のことに他なりません。そして、その地の問題は私達の問題に他ならないのです。

 私達ベンゲット州の住民が現在、直面している最も深刻な問題の一つに、サンロケ多目的ダム事業の実施継続によって起こっている問題があります。私達は長い間この事業に反対してきました。私達のなかにいる地方自治体の職員らは、この事業に州の最優先事業というラベルが付いているのにもかかわらず、事業への賛同を頑なに拒みつづけてきました。残りの者も、公然と事業に対し異議を申し立ててきました。国家政府が、私達住民にとって事業は無害であり、私達の州の発展につながると保証しているにもかかわらずです。

 サンロケ多目的ダム事業の推進者および実施者らは、私達の反対にかまわずダム建設に固執するなら、私達の権利を侵害したことになります。その権利とは、まず、私達住民および私達の州に影響を及ぼすいかなる事業であっても、(自分達の自治体職員を通してではあるが)その事業の容認・非容認の決定権を行使できる市民としての権利。二つめは、私達の共同体や私達の先祖伝来の土地領域に影響を及ぼすいかなる事業であっても、合意、あるいは、拒否する権利を行使できる先住民族としての権利です。前者は、地方自治法に、後者は、先住民族権利法によって保証されている権利です。

 私達は、これまでに受けてきた侮辱に我慢するのではなく、この事業への反対の意を伝えつづけます。

 私達は、同事業の完成が近いことから反対は無意味だとする主張に感化されることもなく、また、現時点で国家政府が同事業を中止することになれば、フィリピン国民全員が非常に高い代償を支払うことになるという主張に屈することもなく、反対の姿勢を貫いていきます。私達多くの者にとって生存の脅威となるダムの完成を最後の最後まで食い止めようとすることは、努力するに値することなのです。政府が事業の完成に至ったとき、フィリピン全土が被る長期にわたる環境・社会・経済コストは、今現在、事業をやめた時に負うことになる財政的負担より、なお一層甚大なものとなります。

 考えてみてください。

  1. サンロケダムの建設は、今住んでいる、あるいは、生計目的で利用している土地から、私達住民の多くに即座に物質的な立ち退きを迫るだけではありません。サンロケ町で行われているアグノ川流域における第3番目のダム建設は、主流だけでなくアグノ川水系の土砂堆積を助長することでしょう。これは結果として、アグノ川水系の洪水を誘発することになります。浸食を減らす手段として集水域管理が効果的に行われたとしても、土砂堆積の問題の解決に十分とは言えず、結果として、洪水の制御はできないでしょう。土砂堆積や洪水は、アグノ川流域で我々が生きていくために居住し、利用し、必要としている土地やそのほかの資源を荒廃させることになるでしょう。このようにして起こる破壊により、今後数年間、経済的にも、物理的にも移住を迫られる人々の数はますます拡大していくでしょう。そうして、私達の多くが所属する先住民族の共同体は次から次へと分断されていくのです。共同体が解体することによって、そのメンバーの生存能力も衰えていくことになるでしょう。

  2. ダム建設や土砂堆積、洪水によって移住することになる私達全員の生活を扶助できるような能力はフィリピン国家にもフィリピン経済にもありません。半世紀近く前に政府が依頼して進めたアグノ川流域の最初の2つのダム、アンブクラオおよびビンガダムの建設による犠牲者への補償金についても、国家の財政が非常に厳しいため、全額を支払うような余裕はこれまでありませんでした。フィリピン電力公社は経営状態が非常に悪いので、すでに請求されているサンロケ関連の補償にともなう負債支払いのため、借金をしなければならない状態にあります。現在、その補償請求者には、ダム建設により現時点で犠牲になるとされているほんのわずかな住民しか含まれていないのにもかかわらずです。実際、犠牲となる住民には、アグノ川流域に暮らす私達だけでなく、パンガシナン平野のアグノ川流域で洪水被害にあう私達の仲間も含まれます。

  3. 実際に、この私達の仲間は、アンブクラオおよびビンガ両ダムの犠牲者でもあります。というのも、2つのダムの水門が開けられる度に毎回、彼らの土地は洪水に見舞われるからです。また、彼らは、まさに2つのダムの貯水能力を無にしてきた原因である土砂堆積の犠牲者でもあります。そして、より大きい洪水被害が彼らにふりかかるたびに、政府が災害対策費として何百万ペソもの資金を出さなければならなくなるのです。しかし、彼らのうち農民にとっては、穀物や魚類、家畜を失った結果、何ヶ月も断続的な飢えに苦しむことになり、それをいやすにはその何百万もの資金すらそれほど十分な金額ではありません。サンロケダム内での堆積が一旦始まってしまい、サンロケダムが洪水を制御するよりもむしろ洪水発生の一因となってしまえば、政府は災害対策費として一体、あと何百万ペソの支払いを強いられることになるのでしょうか?そして、その何百万ペソもの資金を政府は一体どこから調達してくるというのでしょうか?

  4. 実際に、フィリピン電力公社がサンロケパワー社(SRPC)から購入する電力コストを支払う能力がないということがわかれば、政府が拠出せざるをえなくなる可能性のある何百万ドルもの資金をどこから調達するのでしょうか?電力購買契約のなかに載っている支払明細の概要をみると、フィリピン電力公社が今後25年間にわたり、毎月トータルで約1700万ドルをSPRCに支払わなければならないことがわかります。また、フィリピン電力公社は、SRPCが実際にサンロケダムを稼動して発電するかどうかに関わらず、支払いをしなくてはなりません。森林伐採により土砂堆積が非常に進んでしまった場合、あるいは、アグノ川の流れが非常に狭められた場合に、結果として、サンロケ発電所の発電ができなくなったとしても、フィリピン電力公社は支払いを請け負わなければなりません。もちろんこの場合、フィリピン電力公社は単に、消費者の電力料金の請求書で「電力購買調整費」に上乗せをするだけという可能性もありますが。

  5. 今、ダム建設を中止すれば、結果として、ダム建設者の日本に対する債務は10億ドル以下ですむかもしれません。これは、債権者の課す年利率7%でいくと、25年間で総計約27億ドルの計算になります。しかし、今後25年間ダムを稼動させれば、SRPCに総額約51億ドルの支払いを負うことになるでしょう。

 以上のことから、私達はサンロケ多目的ダム事業への反対を続け、仲間であるフィリピン国民に私達の反対運動への参加を訴え、ダム建設の中止がすぐには無理であっても、少なくとも事業を一時停止するよう、政府の指導者に要請しているのです。

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