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ツアーレポート 東京近郊の『千葉の森』を訪ねて

日本各地の森を訪れ、森林・林業の現状を知る林業視察ツアー。今回は3月21日、千葉県を訪れました。ちばの山を愛する活動家、柏原博文さんにツアーをアレンジしていただき、木材市場、製材所、東大演習林、森林塾かずさの森など、東京近郊の身近な森を満喫してきました。

モクイチ見学 / 製材所見学 / 東大演習林見学 / 森三昧屋の森見学

 

敷地内に大量に積まれている製材されていない材。

モクイチ(千葉県木材市場協同組合) 見学

https://www.mokuichi.or.jp/

東金にある千葉県の木材市場。敷地は広大で大量の材木が積み上げられています。

まず、敷地内にある木造の巨大なストックヤードが圧倒的な存在感を発揮しています。高さが12.95m(-5cm)、面積は2952m2(-48m2)と木造建造物としては建築基準法のギリギリの線をついた逸品とのことです。ここでは主に業者間の取引が行なわれており、年間50回程度(ほぼ毎週)の市売りが行なわれるそうです。

千葉県は人工林の歴史が浅く、せいぜい江戸期からとのこと。人工林の始まりは社寺林の植栽からのようです。千葉はスギ志向が強い土地柄のようで、ストックヤード、施設ともにスギが多く、ヒノキは少ないようでした。ヒノキの殆どは三重県から来ます。

また千葉県は元々木材生産県で、東京の木場などに木材を供給していましたが、昭和30年代から消費量が上回り現在は消費県となっています。県産材自給率は近年ではおよそ40%程度で、県外から50%、外材が10%という割合です。

 
モクイチにある木造ストックヤード。大量の材木が格納されている
 施設内を説明して頂いた、木材市場協同組合の中村さん。
 場内を見学する参加者。
幹の太さごとに選り分ける機械。
太さごとに選別された木材の山。一目瞭然。
 木材につけられている伝票。これから樹種、長さ、直径、および誰がどれだけこの材を出したかが分かる
     
ちなみに出した量は「何本」ではなく「何m3」で表記されるのが通例です。流通関係者には都合がいいようですが、一般人にはわかりづらい気もします。

木材価格についてはやはり相対的に安価な輸入材が価格の決定力をもっていて、国産材は輸入材によって値段が引っ張られて下落するという状況のようです。当然のことながら木材価格は植栽からはじまる管理費の合計ではないため、元が取れない例が多々あるものと思われます。千葉に限らず、やはり林業はなかなか苦しい様子です。

興味深く思ったのが、モクイチの敷地内に千葉県産の木材の普及啓発を目的とした「木と住まいの情報館」という施設で、館内には建築工法から内装・水周りなどの紹介など様々な展示があります。

普段は取引に来る業者の人しか来ない木材市場ですが、これから家を建てるエンドユーザーの人にも国産材の存在を理解してもらうために建てたそうです。そういえば普段生活している際、住宅メーカーを選ぶことはあっても自分の家の木材を決める機会や、自分の家に使われている木材がどこから来たものか考える機会というのはあまりないように思います。県産材を使ってもらうにはまずそういうところに選択肢があるということを消費者にアピールする必要性を説明され、なるほどと納得しました。
 
「木と住まいの情報館」で中村さんの説明を聞く参加者。
情報館の中には様々な興味深い展示があった。
 情報館の様子。
     

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案内してくださった清水さん

製材所見学

ちば山グループの一員である清水さんが経営している製材所を見学しました。ここで製材された材も前述の木材市場に流れていくそうです。

ここでは特にちば山の木材として出す場合用に、葉枯らし材という材も製材していた。葉枯らし材とは、伐倒した樹木の枝を取らずにそのまましばらく山に倒したままにしておき、樹木中の水分が蒸散によって減少するのを待ってから玉切り・製材するというという手法によって作られた材である。この葉枯らし材は通常の方法による材とは区別されて製材が行われているという。

また、製材によって発生した木屑はトラックに積み込んで静岡に送られます。製紙会社が買取ってパルプの原料になるそうで、全く無駄がないシステムだなと感心しました。しかし、現在の木屑の買取価格は一番良かったころの半分以下なのだそうです。「昔は、買いとってもらった金額で子供を学校にやれました。」(清水さん談)。

 
製材所の中の様子。 清水さんに話を聞く参加者。 参加者の様子。
     

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東大千葉演習林。山中にいるような気分だが意外と海は近い。

東大演習林見学

次の見学地は、安房郡天津小湊町と君津市にまたがる東大演習林で、およそ2000haもあるそうです。1894年(明治27年)にできた日本で最初の大学演習林です。

前日の雨のせいか、または標高が高いためか(といってもわずかだが)特に肌寒く感じました。技官さんの話によるとこの時期はそろそろ山ヒルが出てくるそうですが、寒さのため今日はあんまりいないだろうとおっしゃっていました。ほっと胸を撫で下ろしました。

昼食後、技官さんの案内で演習林内を歩きました。この辺りの木にはコケ(地衣類)がたくさんついていて、幹も緑色でした。

演習林内にある一番古い140年生のスギの林分も見学しました。先にも述べましたが、千葉県は人工林の歴史が浅いため、演習林で一番古いということは千葉県でも一番古い部類の木であることが間違いありません。最近何本か抜き切りをしたらしく、土場にその材が横にして積まれてありましたが、やはり140年ともなると存在感が違いました。同行していただいた製材所の清水さんによると140年生、しかも技官さんによってしっかりと管理されている木材はさすがに良質であるということでした。

しかし、問題はそのような立派な木材に対して、近年は以前のような需要がなくなってきていることです。良質な木は当然、節も少なく良質な柱や板になりますが、そのような材は高価なものにならざるを得ません。この高価な木材に対して現在の風潮では買い手が付きにくいのだそうです。確かに最近の消費者の趣向からすると、それほど節も気にしない人ならば安価でそこそこの材の方がよく売れるような気もします。

結局のところ、モクイチのところでも話題にしましたが、木材に対してしっかりと手をかけてもそれは必ずしも価格に反映されるものではないというのが現実のようです。従って、140年もの年輪を持った立派なスギはかつてのような評価がなされず、意外な低価格で取引されることもあり得るのでしょう。なんだかもったいないというか、複雑な気分になりました。

 
演習林内。コケ類の生育もいい。

演習林で一番古いという林分。圧倒的な威容。

演習林内最古の林分の拡大。
最近抜き切りがされ中はスカスカ、払われた葉や枝が散乱。  技官さんの説明を受ける参加者。 土場に積んであった最近伐採されたスギ。
     

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岩田さんの作ったログハウス。

森三昧屋の森見学

最後に岩田さんの山を訪問しました。千葉も南房総の方に下りてきて、先ほどの東大演習林からは山中にもかかわらず高台からは外房の海が見えたため、かなり海に近いという印象でしたが、こちらは逆にぐっと奥深い山にきたという感じです。山は切立って、渓流の水はとてもきれいでした。この小櫃川は東京湾最大の干潟である盤洲干潟に注ぐのですが、干潟まではたった一時間ほどしかかからないそうです。山奥に見えて実は海はすぐそこにある房総半島の面白さを感じます。

岩田さんは農業をやる傍ら、森三昧屋として森林ボランティア〜自然体験活動のコーディネートをされています。この場所では自らの山で切った木のログハウスを作り、イノシシ・サルなどの獣害が深刻なことから自らの山の一部を獣害よけ電流ネットで囲うなどの活動もされています。

そういえば道中、たくさんのサルを見かけました。岩田さんによるとこの場所に囲いをして動物が入らないようにしたら野生植物の多くが再生したそうです。逆にいえば、それだけこの近隣の動物密度が高く、餌が枯渇しているため植物が過剰に食べられてしまっているのでしょう。県でも害獣駆除などを行なっているそうですが、県の担当者が考えている以上に被害は深刻だと岩田さんはおっしゃいます。

ログハウス作りと植生復元を行なっているこの場所では、きのこ打ちや野鳥観察会などの自然体験イベントが行なわれ、今後も色々計画があるようです。

 
見学時はちょうど桜の咲き始める頃。 電気柵で囲われた中は植生が復元している?!。  森三昧屋の岩田さん。
     

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