気候変動による損失と被害

気候変動

損失と被害(Loss and Damage)とは?

気候変動は、化石燃料に基づくエネルギーや他の産業活動から排出されるCO2などの温室効果ガスが大気に蓄積されて引き起こされます。 今のままでは今世紀末までに現状から3℃以上の地球平均気温の上昇が予想されており、温室効果ガスの排出量を削減していくことが急務です。 一方で、過去1世紀半にわたり排出されたガスの効果だけで産業革命前に比べ1.5℃前後の平均気温上昇はさけられません。 このため、すでに起きている影響に適応する対策が必要になっています。  

気候変動の影響は、平均気温や海面の上昇、降水パターンの変化から森林火災の増大、海洋酸性化など環境や生態系への影響は多岐に渡ります またその変化は局所的で地域により異なります。 マングローブを植える、自然の防波堤であるサンゴ礁の保存で沿岸を守る、渇水に備えた地域の灌漑を改良する、 より高温に耐える作物種へ移行するなど、適応策は多岐に渡り地域や国によってニーズが違うのも適応の特徴です。 こういった適応策への支援が求められる一方で、排出削減が進まないと適応しきれない適応の限界を世界の科学者が指摘しています 。
>より詳しい情報は気候変動適応対策のページへ

世界中で増加・拡大している気候変動の被害

近年連続して超大型の台風に見舞われるようになったフィリピンでは、2013年には行方不明をあわせて6000人以上の人命が失われました。 米国の食糧生産の中核を担うカリフォルニア州では、4年以上に渡り歴史的な干ばつと水不足に見舞われており、 科学者は同州ではこの傾向が長期に渡り定着するであろうと警告しています。 1980年から現在までの約30年間で自然災害の数は倍増しており、その9割近くが気象条件により引き起こされるもので、 経済的な損失だけを見ても過去10年で大きく増大しています 。

温室効果ガスの大量排出国は高緯度に偏在しています。 これに対し気候変動の影響は低緯度や高地でより厳しく、対応力の乏しい途上国はその被害に脆弱で、既存の開発や経済社会問題への対応をより困難なものにします。 過去30年の自然災害の被害額の3/4は高所得国でのものですが、失われた人命の過半数が最も貧しい国々という事実は、 脆弱な国々が相対的に大きな被害を受けているわかりやすい例でもあります 。

平均気温や海面の上昇、降水量の変化など長年ゆっくりと起きてゆく影響には長期的な対策が必要とされます。 またすでに起きてしまった影響でもたらされる被害に対して対応力の乏しい国への国際的な対応や支援の強化が必要です。 このため2010年に国連気候変動枠組条約の下に設置された適応の国際体制に加え、2013年には適応の限界が認知され「損失・被害」国際メカニズムが設置されました。

国連気候変動枠組み条約における適応と損失・被害のあゆみ

2001後発開発途上国48か国への国別適応行動計画(NAPA)づくりの支援開始
京都議定書の下に適応基金を設置
2005ナイロビ行動計画により影響や適応に関する知見の国際的な共有を開始
2010産業革命前から今世紀末までに平均気温上昇を2℃未満に抑える国連目標に合意
カンクン適応フレームワークの下で適応の国際対策を計画調整する適応委員会の設置
すべての国が国家適応計画(NAP)を準備することになる「損失・被害」二か年作業計画開始
2013適応しきれない影響があることが決定文書に反映される
「損失・被害」国際メカニズムとその暫定執行委員の設置
2014IPCC第5次評価報告第2作業部会が報告書「影響と適応」を発表
各国が提出する国別約束草案に排出削減並び適応目標を含むことが可能となる
損失被害国際メカニズムの二か年作業計画が国連で承認される
正規執行委員会の下に専門家による下部機関が設置される
201512月 国連気候変動会議で2020年以降の国際機構体制の交渉
2016「損失・被害」国際メカニズムの包括的レビュー

各国の状況

FoE Japanは、必要な支援や適切な政策提言を行うために、気候変動による損失と被害の実態調査を行っています。これまでに、フィリピンやスリランカでのフィールド調査を行い、気候変動の被害の可視化、情報発信、政策提言に努めています。

 

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