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「新JICA設立にともなうODA業務の改善に関する要請書」を提出

2008.07.14

2008年10月、これまで外務省が実施してきた無償資金協力及びJBICが実施して
きた有償資金協力を、JICAが実施することになりましたが、これに関連し、日本
のODAが大きく変わろうとしています。その変革にあたって、これまでODAの環境
社会影響の回避・緩和に取り組んできた日本のNGO3団体(賛同団体5団体)が、
ODAの業務改善について以下の通り、日本政府に要請しました。

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2008 年7 月14 日
外務省国際協力局長 別所浩郎様
                        国際環境NGO FoE Japan
                        メコン・ウォッチ
                        「環境・持続社会」研究センター(JACSES)


新JICA 設立にともなうODA 業務の改善に関する要請書


本年10 月から新JICA が設立され、ODA の業務のあり方が大きく姿を変えることにな
ります。私たちは、ODA の透明性・アカウンタビリティの向上とODA 事業における適切
な環境社会配慮を求めてきたNGO として、以下のODA 業務改善を求めます。

1. ODA の事業展開計画(ローリングプラン)を公開すべきである。
現在、有償資金協力・無償資金協力・技術協力の候補案件を記載した事業展開計画(ロ
ーリングプラン)の作成が始められています。外務省はローリングプランの目的として、
予測可能性の向上と、有償・無償・技術協力を一体的に活用した効果的援助の実施を挙げ
ています(「ODA の点検と改善 2007」)。

私たちは、下記の理由で、ローリングプランの公開が必要であると考えます。

(1) ODA の透明性・効率性の確保:ODA 大綱は、「ODA の政策、実施、評価に関する情
報を、幅広く、迅速に公開し、十分な透明性を確保する」とし、ODA における透明性
確保の重要性を強調しています。これを達成するため、1999 年からは円借款の候補案
件をロングリストとして公表しています。ローリングプランの公開は、候補案件の公
開を円借款以外のスキームにも広げることを可能にし、また、ODA の案件発掘・形成
過程の透明性確保と、他のセクターとの連携促進を通じたODA の効率的・効果的な運
用に資すると考えます。

(2) 早期段階からの住民参加:日本政府によるODA の候補案件を外部に公表することによ
り、ニーズの把握や環境社会影響への対処等について、早期の段階からの地域住民に
よる参加や意見の表明が可能になります。

(3) 不透明な慣行の防止:一連の報道が示す通り、ODA は多くの汚職事件の温床となって
きました。ローリングプランに含まれる情報が公開されなければ、ODA の候補案件を
一部の関係者のみが把握することになり、不透明な慣行を生みかねません。甚だしい
場合は、汚職などの遠因になることも考えられます。
なお、現在でも円借款のロングリストは公開されており、またロングリストと同様候補
案件のリストを含む、世界銀行の国別援助戦略やアジア開発銀行の国別パートナーシップ
戦略も公開されています。したがって、ローリングプランの公開には特段の支障はないも
のと考えます。


2. 新JICA が実施を担当する無償資金協力の交換公文は、円借款における交換公文と同様、日
本政府が資金供与義務を負わない形式に改め、新JICA の責任による援助停止・中止の判断を
可能にするべきである。

ODA の供与決定後における適切な環境社会配慮を確保するためには、相手国政府との合
意において、相手国政府・実施機関が実施するべき環境社会配慮上の義務を明記すると同
時に、環境社会配慮を確認する日本側機関が、相手国政府の契約不遵守に対する適切な法
的救済手段を有していることが重要です。

現在、有償の資金協力である円借款においては、日本国政府と相手国政府が締結する交
換公文(E/N)においては、「国際協力銀行(JBIC)が締結する融資契約に基づき一定額の
円借款を供与する」旨の文言が用いられています。JBIC が相手国政府と締結する融資契約
においては、必要に応じて環境社会配慮上の義務が盛り込まれ、また相手国政府の義務違
反に対してJBIC が取ることができる法的な救済手段が定められています。「環境社会配慮
確認のための国際協力銀行ガイドライン」も、融資契約等を通じて必要な環境社会配慮上
の条項を確保するようJBIC に求めています。

これに対し、無償資金協力は現在外務省が直接担当しており、独立行政法人国際協力機
構(JICA)は実施の促進のみを担当することとされています。現在用いられている無償資
金協力のE/N には、「日本国政府は相手国に対して一定額の贈与を供与する」旨の文言が用
いられており、日本国政府は相手国政府に対して直接資金を供与する義務を負うものとさ
れています。

JICA 法の改正に伴い、本年10 月から、外交政策上の必要から外務省が引き続き実施す
るものを除き、無償資金協力は新JICA が実施することになります。このため、新JICA は
相手国政府ないし実施機関との間で、新たに贈与契約と呼ばれる法的合意を締結すること
になります。

私たちは、新JICA が個別案件の監理において責任ある対応を可能とするために、新JICA
が実施を担当する無償資金協力におけるE/N は、円借款における交換公文と同様、日本政
府が資金供与義務を負わない形式に改めるべきであると考えます。
上記の通り、案件監理段階における実施機関による適切な環境社会配慮を確保するため
には、贈与契約に、相手国政府が実施段階における環境社会配慮上実施すべき措置を義務
として定めると同時に、相手国政府の義務違反に対して適切な対処を行えるよう、新JICA
に法的な権限が付与されるべきです。しかしながら、旧来のE/N の文言が放置されれば、
日本国政府として資金を供与する義務を負う以上、実施機関にすぎない新JICA が締結する
贈与契約に、供与停止・中止などの独自の権限を付与することはできません。これでは、
新JICA が相手国政府に対して適切な環境社会配慮上の対応を求めることが困難となって
しまいます。


新JICA 設立後は、海外経済協力会議や外務省等を中心としてODA 政策を企画・立案す
る一方、個別案件の実施は新JICA が一元的に行うものとされています(外務省・JICA・
JBIC「新世代のODA 実施体制作り」)。また案件実施における新JICA の責任、外務省と
の役割分担の明確化は「国際協力に関する有識者会議」中間報告でも指摘されています。
上記のE/N の文言変更は、ODA における政策と実施を明確に分離し、実施において新JICA
が責任ある対応を行うために不可欠な改革であると考えます。

以上


CC:
財務省国際局長 玉木林太郎様
経済産業省貿易経済協力局長 安達健祐様
独立行政法人国際協力機構企画部長 大部一秋様
国際協力銀行開発業務部長 岡村邦夫様
国際協力に関する有識者会合 委員各位
無償資金協力実施適正化会議 委員各位
新JICA の環境社会配慮ガイドラインの検討に係る有識者委員会 委員各位


賛同団体:
インドネシア民主化支援ネットワーク
AM ネット
ODA 改革ネットワーク
債務と貧困を考えるジュビリー九州
ヒューマンライツ・ナウ
本件に関する連絡先:
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ(担当:福田)
〒110-0015 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル2F
Tel: 03-3832-5034, Fax: 03-3832-5039

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