FoE Japan
開発金融と環境プログラム
開発金融 トップ キャンペーン 資料室
開発金融と環境プログラムキャンペーンサハリン石油開発>レポート
サハリン石油開発
サハリン・トップページ
プロジェクトの概要
これまでの活動・動き
English Documents
サハリン写真館
関連リンク
サハリンU第二期工事、JBICガイドライン及びIFC政策の違反点
2006年4月21日

FoE Japanは、サハリンUの第二期工事が国際協力銀行(JBIC)のガイドライン及び国際金融公社(IFC)の政策に違反していると考えられる点をまとめたレポートを作成し、4月12日に行われたパブリックミーティングの場でJBICへ提出しました。

レポートで言及されているのは以下の4点。

  1 環境影響評価補遺版の記述の不正確さ
  2 工事が約60%終了した段階での環境影響評価補遺版の公開
  3 油流出対応計画の不在
  4 生態系の視点の不在

以下、レポートの全文です。
 
_____________________

サハリンU第二期工事
環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドライン及び国際金融公社政策の違反点


 国際協力銀行(以下、JBIC)は、融資プロジェクトの引き起こす環境や社会に与える影響を回避又は最小化し、受け入れることのできないような影響をもたらすことがないよう、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(以下、ガイドライン)を策定した。現在、JBICはサハリンU第二期工事への融資を検討しているが、同事業は、ガイドラインに違反している点が見られる。従って、以下、サハリンU第二期工事が同行のガイドライン、及び国際基準として用いられている国際金融公社の政策に違反している点を挙げた。

 なお、同事業第二期工事は、ガイドラインの施行前(2003年10月)に融資申請がなされたため部分適用案件であるが、国際協力銀行自身がガイドラインの精神に基づいて本プロジェクトの審査を行うことを明言しており、また融資審査を開始してからほぼ3年が経過しようとする中、部分適用であることを以ってガイドラインを順守しなくてもよい理由とはなり得ない。

 よって、JBICは、自行ガイドラインを順守していないサハリンU第二期工事に融資をするべきではないと考える。

1 環境影響評価補遺版の記述の不正確さ

【問題点】

 日本語訳版の不正確さもさることながら、英語原文に関しても鳥類の学名などを含む基本的な記述に誤りがある。

【ガイドライン違反該当部分】
  • 「(環境影響評価(アセスメント)に含まれるべき項目)基本情報―数値の正確さ、信頼度及び情報源についても、この節に記される(ガイドライン別表2カテゴリA案件のための環境アセスメント報告書/基本情報)」(※IFCのOP4.01にも同様の記述)
【理由】

 公表された環境影響に関する文書の記述が不正確であるという事実は、記述内容が十分か、あるいは対策が適切かどうか以前の問題である。環境に関する基本的情報が不正確では、適切な対応を取ることも不可能である。


2 工事が約60%終了した段階での環境影響評価補遺版の公開

【問題点】

 2003年初めに環境影響評価が公表されてから、補遺版完成、公表まで約3年かかっている。その間一部遅れたものの、工事は着実に開始、リグ(2基)の設置、海底パイプラインの敷設、陸上パイプラインの部分的施設、LNGプラント建設、石油輸出ターミナルが進行し、完成に近づいている。

【ガイドライン違反該当部分】
  • 「プロジェクトが環境や地域社会に与える影響を回避または最小化し、受け入れることのできないような影響をもたらすことがないよう…(ガイドライン第一部1基本方針)」
  • 「プロジェクトを実施するにあたっては、その計画段階で、プロジェクトがもたらす環境への影響について、できる限り早期段階から、調査・検討を行い、これらが回避・最小化するような代替案や緩和策を検討し、その結果をプロジェクトに反映しなければならない(ガイドライン第二部1.対象プロジェクトに求められる環境社会配慮(基本的事項))」
【理由】

 JBICのガイドラインでは、回避・最小化することが求められている。これを達成するためには、必然的に「早期段階からの代替案や緩和策」の検討が不可欠であったが、実際に、それらが盛り込まれた補遺版が公表されたのは、工事の約60%が完了した昨年12月(日本語版は06年2月末〜3月初め)であった。現状では、ガイドラインの最も重要な本質を本プロジェクトが満たすことは不可能である。


3 油流出対応計画の不在

【問題点】

 第二期工事の油流出対応計画(OSRP)は、生産開始6ヶ月前に改訂されることになっている。

【ガイドライン違反該当部分】
  • 「プロジェクトを実施するにあたっては、その計画段階で、プロジェクトがもたらす環境への影響について、できる限り早期段階から、調査・検討を行い、これらが回避・最小化するような代替案や緩和策を検討し、その結果をプロジェクトに反映しなければならない(ガイドライン第二部1.対象プロジェクトに求められる環境社会配慮(基本的事項))」
  • 「負の影響については、これを回避し、最小化し、緩和し、あるいは代償するために必要な方策を評価すると共に、さらに環境改善を図るための方策があれば当該方策も含めた評価を行う(ガイドライン第一部4環境社会配慮手続き(3)カテゴリ別の環境レビュー/カテゴリA)
  • 環境チェックリスト2石油・ガス開発5その他(2)事故防止対策「A原油・ガス等の貯蔵、排出、輸送時の漏洩事故や坑井掘削時の暴噴事故に対して十分な防止対策(防止設備の設置、防止管理体制の整備)が取られるか」
  • 「石油流出対応計画が義務付けられる(IFC Guidelines, Oil and Gas Development (Offshore))」
【理由】

 元の計画では、OSRPは操業6ヶ月前で2005年の末には完成予定だった。既にその時期に来ており工事も進む中、油流出対応計画が改訂されたものが公表されない。上記ガイドラインで必要とされる「対策」が不明確な状態では、融資の判断はつかないはずである。JBICは万全を期すために、OSRPも融資審査対象として、これをしっかり評価したうえで融資の判断をすべきである。


4 生態系の視点の不在

【問題点】

 2003年の環境影響評価及び補遺版において、生態系保護の視点が抜けている。

【ガイドライン違反該当部分】
  • 「調査・検討すべき環境への影響には、大気、水、土壌、廃棄物、事故、水利用、生態系及び生物相等を通じた、人間の健康と安全への影響及び自然環境への影響、社会的関心事項…越境または地球規模の環境問題への影響が含まれる(第二部1(検討する影響のスコープ))」

  • 環境チェックリスト2石油・ガス開発/環境チェックリスト3パイプライン 3自然環境(2)生態系 「Aサイトは当該国の法律・国際条約等で保護が必要とされる貴重種の生息域を含まないか。B生態系への重大な影響が懸念される場合、生態系への影響を減らす対策はなされるのか」

  • 「IFCは重要な自然の生息環境を著しく改変あるいは悪化するプロジェクトを支援しない」「事業者が環境的に持続可能な開発の機会を確保するために自然資源管理のための予防手段を適用することを、IFCは支持し、求める」(IFC OP4.04 Natural Habitats)
【理由】

 JBICのガイドラインでは、上記のように貴重種・希少種にとどまらず、生態系保護の観点が重視されているが、サハリンU第二期工事の環境影響評価及び補遺版にはその視点が欠けている。ニシコククジラへの影響を考慮し、海底パイプラインルートを再検討したことは評価する一方、この変更ルートがオオワシの重要な営巣地を通過する結果となったのは、生態系の視点が欠けている一例である。また、ニシコククジラ保護に関しても掘削リグの位置の変更は考慮されないなど、「予防手段」はとられていない。

 その他ガイドラインで求められているサハリンIを含む他プロジェクトによる「累積的影響」の評価や対策がない、などの点も挙げられる。

 最後になるが、「JBICの意思決定、融資契約等への反映」に関し、「本行は、プロジェクトの環境社会配慮が適切ではないために、プロジェクトが環境に望ましくない影響を与えると考える場合、適切な環境社会配慮がなされるよう借入人を通じ、プロジェクト実施主体者に働きかける。適切な環境社会配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる。」とある。

 これまで、JBICは実施主体者であるサハリンエナジー社に対し、事業が環境や社会に与える負の影響を回避・緩和するよう、働きかけてきたと理解しているが、事業者によって、事業がもたらす現地での負の影響が回避・緩和されることほとんどなかったといってよい。

 上述した不適切な環境影響評価補遺版を鑑みても、今後も、そのための適切な対策がとられないであろうと考える。このことは、上記ガイドラインの「適切な環境社会配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる」にあたるものであり、JBICとして、ガイドラインの遵守を通して、その基本方針にある「持続可能な開発に寄与する」ためにも、融資をするべきではないと考える。

(c) 2002 FoE Japan.  All RIghts Reserved.

サイトマップ リンク お問い合せ サポーター募集 English