公開セミナー報告(2000年10月27日)
『フィリピンの開発と先住民族の権利』
〜コミュニティと文化の破壊に対抗して〜
 
セミナー議事録 2-2
コラサン氏による講演
アグノ川流域のダム開発問題

  では、ここで私の地元で抱えている懸念事項の話に移りたいと思います。これが取りも直さず、私が今回来日をした目的です。

   私自身、ベンゲット州のイバロイ民族の一員です。そして、私はベンゲット州から選出されてフィリピンの下院議員を勤めている者ですが、先住民族はこれまでフィリピンの国家建設に寄与してきました。

   その具体的な企業ですが、1950年代から80年代の間に、ベンゲット州では合計8社の鉱山企業が操業を行っており、金・銅・銀を掘っていました。そして、ベンゲット州はフィリピン経済を支える重要な柱の一つと言われていました。

   しかしながら、ベンゲット州が、自らの天然資源あるいは州の山や川を企業の収奪的な操業を許して、鉱山開発を認めたわけですが、その結果、ベンゲット州はフィリピン78州のうち最も貧しい20州の一つになっていったわけです。

   そしてそのような収奪の後に、ベンゲット州の天然資源、山、川、環境、そういうものを犠牲にして天然資源も乏しくなっていき、そして、残るわれわれの資源の最後の一つをさらに開発しようということで、また新たな問題にわれわれは直面してしまったわけです。それが取りも直さず、アグノ川に作られようとしている、いま建設が進んでいるサンロケ多目的ダムです。

   ベンゲット州アグノ川流域のイバロイ民族の闘いの歴史は今から50年ほど前に始まりました。当時、アンプクラオダム、ビンガダム、この2つのダムが作られたのですが、いまなお、この2つのダムは存在します。

   しかしながら、この2つのダムが建設されるときに、環境に対する十分な配慮を怠っていました。あるいは生態系のバランスといったようなことも十分考えていなかったわけです。ですから、その後、大変なことになり、このダムが原因で土砂の堆積がどんどん進んでいきました。その堆積のために川の流域の集落であるとか、貴重な水田までもが埋まっていってしまったのです。

   さらに、非常に皮肉なことには、このダム、作られたのは50年前なのですが、ほんのここ2年ほどの間に、このダムが作られた周辺地域に、ようやく活力がでてきたということです。

   ベンゲット州のイバロイ民族が今ダムに反対しているのは、これまでのいきさつがあるからですが、それはどういうことかというと、50年ほど前のダムのために、これまで流域の人々が苦しんできた、そして今尚、苦しんでいるという状況、これがサンロケダムが完成すると、また、将来の世代に繰り返されるという、そういう気持ちがあるからです。それは、環境の色々な懸念に対して適切な処置を取らなければ、あるいは、先祖の土地に対する補償などがきちんと行われなければ、ということです。

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