公開セミナー報告(2000年10月27日)
『フィリピンの開発と先住民族の権利』
〜コミュニティと文化の破壊に対抗して〜
 
セミナー議事録 2-3
コラサン氏による講演
サンロケダム開発の5つの問題点

  このサンロケダムに関しては様々な問題点が挙がっているわけですが、ここでは私達が最も大きいと思う5つの点について述べます。その第1は環境面についてですが、このダムの建設を推進している事業体、それからそこに融資を行っている、なかんずく、日本の国際協力銀行、JBICですが、われわれは、国際協力銀行が持っている環境に関する基準であるとか、ガイドライン、指針、環境配慮(をおこなうため)のものを厳しく、きちんと実行してほしいと考えています。実行しなくてはならないという風に私達は考えています。

   私達は皆さんもこの問題に向けて、こういう環境上の問題の解決に向けて、貢献できると思います。それは皆さんが日本の国際協力銀行に圧力をかけ、そしてこのベンゲット州のそこはイトゴンという町ですが、その環境の懸念される状況にきちんと対応するように国際協力銀行に圧力をかけるということです。そういう行動を皆さんがとることによって、この問題解決に寄与できると考えます。

   次に重要なのは、先住民族の土地に対する補償であります。ダムの建設によって移住を余儀なくされる人達の土地に対して、あるいは、その移住に関して、これまで明確な計画は打ち出されていません。

   次に、先程は環境面、補償面でしたが、3番目になりますが、法律面の懸念事項、ここにはフィリピンの法律違反があります。フィリピンの地方自治体法というのがあり、これによると、開発プロジェクトなどを進める場合には、その影響を受ける地方自治体の合意を取り付けていなければ、そういうプロジェクトを始めることはできないということになっています。ところが、今尚、ベンゲット州の議会もコルディリェラ地方開発評議会もこのサンロケダムプロジェクトに対する支持表明を拒否しています。まだ、支持がないのです。ですから、そういうなか、プロジェクトが始まってしまったということは、法律違反ということになります。

   それから先程も詳しく説明した先住民族権利法にも違反しています。この国家先住民族委員会というところが、今尚、十分な先住民族との協議が行われたという証明書を出せずにいるわけです。ですから、そういう住民とのきちんとした協議がなければプロジェクトを始めてはならないという先住民族権利法があるので、この法律に違反していることになります。

   それから5つの懸念事項といいましたが、その5番目、それは1985年のECC、環境遵守証明書というものに関してです。これは1985年に環境天然資源省が発行しましたが、その後状況が変わったので、このプロジェクトに対しては新規のECCが発行されなくてはならないと思います。というのも、この地域では、実は、1991年に大地震が起きました。あるいは、大きな台風もいくつか襲いましたし、地域の状況が変わってきているのです。ですから、新しい状況に合わせた新しいECCが出なくてはならない。いいかえれば、もはやダムを作る場所としては、1985年のECCで言っているほど適切な場所ではなくなったと、私達は考えています。

   もちろん、われわれフィリピンに対して、色々な融資が差し向けられるということに関しては、大変感謝しておりますが、このサンロケダムに関しては、そもそも始められるべきではなかったいう風に思っています。様々な問題があるプロジェクトですが、今となっては、ダムは建設中であり、ほぼ半分が完成しています。そして、西暦2004年には完成する予定になっているわけです。

   ですから、この後に及んでは、日本の国民の皆さんに訴えることができるのは、ここで使われているのは皆さんのお金であると、ですから、皆さんのお金はこのような環境を損ない、あるいは先住民族の権利を損なうようなプロジェクトには使われるべきではないということです。それを日本の国民の皆さんに直接訴えたい。あるいはNGOの皆さんに、あるいは議員の皆さんにも何とか力を貸してほしいと訴えているわけです。そして、何とか私達を助けてほしい。そして、このプロジェクトが完成する前に、私達の懸念事項に適切に対処してもらうよう、あるいは、そのような処置をとることができる立場にある人に影響を及ぼすことのできる人に対して、皆さん、どうか働きかけてほしいということなのです。

   そういう私のお願いというのは、実に簡単な混じりっ気のない単純なものであります。要するに、フィリピンの私達の州の環境を守ってほしいということなのです。いま、先祖伝来の土地をもつ先住民族の権利を守ってほしいということです。私の話は以上です。ありがとうございました。

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