公開セミナー報告(2000年10月27日)
『フィリピンの開発と先住民族の権利』
〜コミュニティと文化の破壊に対抗して〜
 
セミナー議事録 2-1
コラサン氏による講演
先住民族の権利を認める動きについて

   皆さん、こんばんは。本日、日本の若い人達の前で講演できることを大変光栄に思います。今日はフィリピンの先住民族の話をしたいと思います。また、フィリピンという国について、それから今そこで行われているサンロケダムの建設について話したいと思います。このサンロケダムに対しては、11億ドルというお金が融資されていて、その中で日本からのお金が大半を占めるわけですが、なかんずく国際協力銀行からの融資が大半です。   今日のこのシンポジウムは2部に分けて考えたいと思います。というのは、私のこの講演のタイトルが『先住民族と開発』という風に銘打たれているので、サンロケダムそのものの話をする前にその話を少ししたいと思うからです。まずは、いまのフィリピンの先住民族の地位についてお話したいと思います。

  フィリピンにおける先住民族の権利の闘いは、1987年の憲法ができた時に一つの闘いが始まっています。この憲法の中に先住民族の権利を認める6つの条項があるわけですが、それによって、先住民族の文化、習慣、伝統、そして先祖伝来の土地に対する権利を認めるものです。また、それによって、先住民族がフィリピンという国の建設に貢献できるということを認めるものです。

   フィリピンの先住民族の人口全体に占める割合は20%。全体で110あまりの民族が先住民族として存在します。それをさらに細分化すると、もっとさらに色々なグループがあるということになります。

   1987年の憲法で先住民族の権利が認められたわけですが、その後は1997年になり、議会が、憲法で認められた先住民族の権利をさらに認める、そしてなおかつ、それを保証するための「先住民族権利法」(Indigenous Peoples Right Act)(IPRA)、省略してIPRAと呼びますが、1997年「先住民族権利法」というのができました。

   この1997年の先住民族権利法というのは、憲法のなかで認められた先住民族の権利を施行するための法律でした。それはすなわち、先住民族の文化、習慣、伝統そして土地に対する権利を認めるということです。

   では、具体的なその中の重要な取組みについていくつか紹介します。この先住民族権利法の中で一つには、先住民族の先祖伝来の土地に対する権利を認めた証明書、これを先住民族に対して発行することができるという風になっています。

   この土地の権利の証明書というのは、先住民族にとって極めて重要なものであります。というのも、この法律ができるまでは全てのフィリピンの土地、これは先住民族の土地も含みますが、これは政府のものと言われてきたのです。というのも、フィリピンがスペインの植民地だったころ、全ての土地はスペイン国王のものだったわけです。だから、法律ができるまで、ずっと、個人の所有でないものがあったとすれば、それは、政府の所有する土地であって、それに対して先住民族が先祖伝来持っている土地であるといっても認められなかったわけです。

   この法律によって、先住民族の人達は自分たちの土地に対する権利が認められるようになるのですが、自分たちの土地と認められるには、自分たち本人あるいはその先祖が、自分たちが住んできたとか、自分たちの家があったとか、あるいは、自分たちの先祖伝来の埋葬地がここにあるといったようなことをフィリピン政府に対して証明できれば、あるいは、これはもうずっと大昔から自分たちの土地であるというような何らかの証明ができれば、政府はその土地を先住民族の先祖伝来の土地として認め、そして、それに対する証明書を発行するということになってきたわけです。

   これは、それまでの古い法律にあった土地に対する証明の手続きの、いわば、非常に簡略化されたもので、事実上、これによって初めて先住民族の人々がそのような手続きを取れるようになったものです。というのも、それまでのやり方は、裁判所でそういうことを証明し、証明を出さなければならないという手続きがありました。ですから、これは非常に煩雑であって、また非常にお金もかかっていたのです。教育を受ける機会のなかった先住民族にとって、それは大変なことであり、また、裁判を行う裁判手続きを賄う資金力のなかった先住民族にとっては、これは非常に難しいことだったのです。

   フィリピンにおいて、経済にとっての重要な一つの産業といえるのが、鉱物資源を取るための鉱業です。それは、金を掘ったり、銅を掘ったりする鉱山ですが、それがために森林や山間部の開発が進められるという状況がありました。ところが、そういった山間部、あるいは森林といったものは、先住民族の住む場所でもあったわけです。ですから、先住民族権利法ができて初めて、そういう法律の上でも、きちんと、国の資源に対する先住民族の権利というものも認められるようになってきたわけです。そして、それに沿って、法文的な措置も必要になるということを明記して、先住民族の人達がそういう開発の搾取、収奪の対象にならないようにという取決めができたわけです。

   この先住民族権利法によると、先住民族のほうに優先的に鉱山資源に対する権利が認められます。それは先住民族の先祖伝来の土地と認められる地域においてですが、開発を進めようとするフィリピン政府ないし企業は、まず、最初に自由な形で事前にきちんと情報を与えた上で、先住民族の文書による合意を取り付けないことには開発は行えない、そういう資源の開発利用は行えない、ということになってきました。だから、全ての開発、とくに鉱業、鉱山に対する投資に対しては、非常に厳しい要件が必要とされるようになってきたわけです。

   この法律によれば、先住民族には、何らかの開発プロジェクトが進められるにあたって、事前に住民との十分な協議、相談が行われていないものには、そのプロジェクトの中止、停止を求めることができるという権利があることが明記されています。

   また、この法律に関して具体的な条項をあげる最後になりますが、この法律ができたことによって、新たに国家先住民族委員会というものが設置されました。この委員会を通じて、先住民族の権利擁護をおこなおうということです。

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