サンロケ多目的ダムプロジェクト
サンロケダムに関する国会審議
参議院 行政監視委員会 (質問:岡崎トミ子議員)(2002.07.15)


  
→→公共事業チェック議員の会が融資凍結を申し入れ(2002.07.05)
→→国際協力銀行への要望書・賛同依頼(2002.07.10)

   日時:2002715日(月)14:1015:00

   質問者:岡崎トミ子参議院議員

   答弁者:吉田幸弘財務大臣政務官

   参考人:溝口善兵衛財務省国際局長

       篠沢恭助国際協力銀行総裁

 

※この記録は、FoE Japanが国会審議インターネット中継を聞き、起こしたものです。

  • 岡崎トミ子議員
  •  ダムをめぐる紛争は、日本でも世界各地でも絶えません。今日は、二〇〇〇年の十一月二十日にこの行政監視委員会で取り上げましたフィリピンのサンロケ多目的ダム事業について質問をしたいと思います。

     この事業につきましては、一九九九年九月に先住民の方たちと一緒に国際協力銀行の担当者の方にお目に掛かりました。二〇〇〇年十月には、来日いたしましたフィリピンのロナルド・コサラン下院議員と一緒に面会をいたしました。今月五日には、衆参百名を超える議員が所属をしております公共事業チェックの会として、本日御出席をいただいております財務省の吉田大臣政務官と国際協力銀行の篠沢総裁にお目に掛かって、融資凍結を求める申入れ書をお渡ししております。

     このサンロケ多目的ダムは、フィリピンのアグノ川に建設中のダムで、アジアでも屈指の巨大ダムとなる予定で建設をされております。既に主な構造物の建設は終わっております。ダムの高さ百九十メートル。

     日本のダムで最も高いダムはどのダムで、高さはどの程度か、吉田政務官、御存じでしょうか。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  ダム及び発電所の概要についてのお尋ねというふうに……

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  ごめんなさい。日本で一番高いダムは何か、どこか御存じでしょうか。高さと場所でございます。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  黒四ダムと承知しております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  私も調べましたので、最初はよくうろうろという感じだったんですけれども、日本のダムで最も高いのは富山県の黒部川第四ダムですね、百八十六メートルあります。堤防の長さは四百九十二メートルで、これサンロケ・ダムの約半分でございます。次いで長野県の高瀬ダムが百七十六メートル、三位は群馬県の奈良俣ダムで百五十八メートルで、このサンロケ・ダムというのがいかに大きいのかということをお分かりいただけると思いますが。

     ちなみに、霞が関ビルの百五十六メートルより高いということでございまして、私の参議院議員会館から山王パークタワーが見えておりますが、あの一番高いところ、あそことほぼ同じでございます。テレビのニュースでこのサンロケ・ダムのことについて見たんですけれども、下からのぞき込んでいるニュース、映像で、百五十トントラックという世界最大級のトラックがもう本当にかすんで見えるという、そういうものでございました。ダムの高さが百九十メートルで、堤防の長さ一・一キロメートルでございます。首相官邸から議員会館を突き抜けて国立劇場の端まで至る長さになっております。アジア最大級のものでございます。

     総事業費は、レストランでビール一杯四十円で飲めるフィリピンで千九百億円でありますから、日本の協力がなくしてこの事業はとてもできないということでございます。現地のたくさんの報道でも、サンロケ・ダムに関する報道には、JAPAN、日本という文字が躍っております。

     この事業については、環境あるいは社会に対する破壊的な影響が懸念されまして、計画が持ち上がった一九九五年から現地の先住民族、それから立ち退きの対象となっている住民の反対が根強く続けられておりますが、しかし、そうした中で建設工事は九割方完了しております。国際協力銀行の融資も残すところ約一〇%と聞いております。

     今後は、七月末から八月初めに掛けて貯水を開始する予定と聞いておりますが、貯水開始はいつになるか、篠沢総裁にお聞きしたいと思います。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  貯水の開始につきましては、現時点で正確な日程の連絡は受けておりません。実務的な話合いの中で出ております申し方としては、八月以降に決定されるのではないだろうかという感じになっております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  この事業に対して融資が一時中断されたことに注目をしております。一九九九年の二月から九月に掛けて、サンロケ・パワー・コーポレーションに対する投資金融が一時中断されたと認識されておりますが、間違いありませんか。その場合に、一時中断された理由は何だったでしょうか。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  このダムに対する私どものいわゆるアンタイドローンでございますが、一九九九年に承諾を行ったのでございます。

     その際、まず私どもとしましては、全体状況の把握に努めまして、さらに、フィリピン政府に環境等の配慮の督促をしたわけでございます。そしてその後、水没地域での移転対象世帯数の確認とそうした世帯からの同意の取得、移転対象世帯以外の人々についてのコンサルテーションの実施、対策の策定、それらが満足すべき水準に達したのではないかというふうに判断をいたしまして、この融資の実施を行ったものでございます。いわゆる、先生が再開とおっしゃいましたのは、この融資事業の実施ということになろうかと思います。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  この事業に対しましては、フィリピンの法律に対して反対、違反というふうに言われております。先住民族権利法に対する違反と地方自治法に対する違反と、この二つでありますが、私も可能性を疑っております、違反ではないかというふうに思っております。

     まず、この先住民族権利法についてお尋ねしたいんですが、この法律は、影響を受ける先住民族が自由な選択権を持ち、十分な情報を与えられた上で、事前に事業に同意することを事業実施の必要要件としております。

     先住民族権利法が求める同意が正式に得られていない以上、この事業の継続は違法と考えますが、国際協力銀行の認識はいかがでしょうか。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  私ども、先住民族のみならず、このダム建設によりまして影響を受ける住民の権利は当然保護されるべきであり、適切な補償や生計支援の確保が重要であるとまず考えているところでございます。

     法律との関係でございますが、この法律、おっしゃいました先住民族の権利法の問題につきましては、国家先住民族委員会自体及びこのフィリピン政府の方からの意向といたしまして、現在のこの状況が、いわゆるこの法律の制定時期と私どものこの事業の実施時期との関係からいいまして、いわゆる法律違反の状態が起こっていたということではないという見解が示されているわけでございますが、私どもといたしましては、実態的にこの先住民族権利法の求めておりますところの内容が確保されている必要があるだろうということは重々認識をしているわけでございます。

     そういう点から申しますと、移転や生計手段の喪失等の影響を受けます先住民によるプロジェクトについての合意の取得、これはフィリピン政府によってこれまでなされているというふうに認識をしております。

     また、実際問題としまして、これを踏まえまして、上流の水没予定地域の居住者への家屋に対する補償、あるいは土地、作物等に関する補償もほぼ完了しているというふうに認識をしております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  この事業に対しまして、先住民族権利法を適用しない理由として、この法律が発効しました一九九七年十一月二十二日から一か月前の十月十一日に売買契約が締結されたということが挙げられておりますけれども、この権利法が発効する前に決定された事業に対しては先住民族権利法が適用されないかどうか、争われるべきだと考えます。

     特に、この事業については、事業の実施を最終的に許可いたしました環境適合応諾書、これは環境天然資源省が発給しておりますけれども、これは翌年の二月十七日ですよ。ですから、この事業の実施が正式に決定されたのは、この権利法が発効した後のことであります。先住民族権利法の適用は当然と考えますが、総裁、いかがですか。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  この御指摘の法律を所管しております国家先住民族委員会が、本件に関しまして電力売買、電力購買契約、九七年の十月十一日でございますが、この調印が先生御指摘の法律の発効に先立つことをもってこの法律は本件に適用されないという見解を正式に出しているところでございます。

     本行といたしましては、この本件の融資に当たりまして、当初から、先住民族の権利の確保ということを十分念頭に置いてきたつもりでございますが、事実このアンタイドローンの貸付契約の中にもそのようなことについて明記をしたところでございますが、しかし、この御指摘の法律、先住民族権利法の適用の要否自体につきましては、これはフィリピン法の解釈によらざるを得ない、フィリピン当局の正式見解というものによらざるを得ないというふうに考えているところでございます。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  もう一つ触れておかなきゃいけないんですが、フィリピンの環境天然資源省の説明によれば、環境適合応諾書は事業の実施の前に取得されなくてはならないということなんですね。実際、事業に対して発給された環境適合応諾書を見ると、提案されているこの事業について、開始を許可するという趣旨の文面になっているんですね。ですから、事業の実施が先住民族権利法発効後であることは明らかであります。

     先日、吉田政務官をお訪ねして公共事業チェック議員の会として申入れ書をお渡しした際にも、これは財務省の方から、適用論議についてフィリピン政府と日本政府に違いがあるというふうに発言をいただいております。

     国際協力銀行の監督官庁であります財務省の見解を改めてお伺いしたいと思います。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  今、見解の相違があるというふうに委員から御指摘があったわけでありますが、財務省としてもその申入れを強くさせていただいているところでございます。それで、その回答としては、関連法案等に明確に違反はしていないというふうには聞いているわけであります。ところが、そうじゃない声も聞こえてくるわけでありまして、更なる要請をさせていただいているところでございます。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  一九九九年の九月、融資が再開される直前、私はこの先住民族の方たちと一緒に国際協力銀行の担当者の方々にお会いしたんですが、その際に、先住民族権利法で対応するので大丈夫というふうに、これは何回も説明を繰り返し受けております。これは国際協力銀行の勝手な説明ではなくて、フィリピン側の国際協力銀行やあるいは財務省に対する説明という裏付けのあるものだったというふうに考えております。

     九九年六月に、旧日本輸出入銀行営業第一部波多野部長も参加しました地元の住民集会の席におきましても、当時のフィリピン大統領補佐官が、先住民問題については先住民族権利法に基づき解決するという発言をしております。これ発言に記憶はないでしょうか。当時の現地の新聞を見ますと、融資前に満たすべき要件を輸銀が提示という記事と、もう一つ、要件の一つに先住民族権利法の遵守が挙がっているというふうに新聞にも書いてあるんです。

     この法律の適用が融資再開の条件ではなかったのかと思いますが、篠沢総裁、いかがでしょう。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  当時の担当者から、その今御指摘の点につきまして詳細に確認をしておらないところでございます。また、フィリピンの補佐官の当時おっしゃったことの中身を今にわかに確認できないところでございますが、私どもといたしましては、この法律それ自体の適用関係につきましては先ほどから申し上げているようなことになるのではないかと。

     特に、フィリピン政府側がそのように既に法律、意見を出しておりますものですから、私はそれに従いたいと思うのでございますが、私ども、先ほどから申し上げておりますように、終始ここに記載されているこの内容についてはしっかり確保していくべきであると、こういうふうに思っておりますし、恐らく、私のそんたくしますところでは、当時私どもの銀行の一部長が申しましたことも、既に当時、先住民族権利法の言わば規定というものは明らかになっているわけでございますから、そういう規定の中身について、それをきちっと確保しなければならないという決意を述べておるのではないかと、これはそんたくしておる、推測しておるところでございますが、そのように理解をさせていただきたいと思います。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  もう一つ、細かいことになりますけれども、ここは反対しているところなんですけれども、当時の日本輸出入銀行がまとめましたサンロケ多目的ダムプロジェクト、イトゴン市庁舎、ここで行われました住民対話集会の要約が手元にあるんですが、ここに大統領府アヴェンタハード補佐官の発言として、先住民族問題についてはやはりこの権利法に基づき解決するというふうに大変こだわっているわけですね。

     なぜこういうふうに言うかといえば、このダルピリップ村、二千人の方々なんですけれども、自給自足の生活をされてきた、そしてとても豊かだったんですね。そこが、先祖を大変大切にして生きてきた、これからもそういうものを引き継いで孫子の代までという思いで生活をずっとされてきている方たち、このイバロイ族の方にとってダムは死ですというふうに言い切っているわけなんですね。

     先住民族の生活に影響を与える可能性がある事業を行う場合には、やはり自由な選択権を持ち、十分な情報を与えられた上で、事前の同意を前提とするということは今や国際水準であるというふうに理解をしておりますが、このフィリピン政府の解釈にかかわらず、実質的にこういう同意が担保されることが本当は不可欠なんじゃないでしょうか。

     財務省からそのことについてお伺いしたいですし、国際協力銀行からも見解を伺っておきたいというふうに思います。

     

  • 溝口善兵衛財務省国際局長
  •  先住民権利法、保護法の関係は、先ほど篠沢JBIC総裁からおっしゃったとおりだと我々も理解しております。法律の解釈としては、フィリピン政府の解釈に私どもも従う必要があります。

     他方で、実質的な問題として、影響を受ける方々が今まで補償された人以外におりまして、そういう方からいろいろなことが問題が提起されていれば、それは当然、法の趣旨に沿って対応していくべきだというふうに考えておりますし、私どももフィリピン政府に対しましても、私どもから直接もございますし、あるいはJBICを通じてそういう申入れはしておるわけでございます。

     いずれにしても、こういう事業でございますから、やっぱり皆さんの理解を得て円満に解決していくことが大事だというふうに考えておるところでございます。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  この先生御指摘のような反対の声があることは重々承知しているところでございますが、移転や生計手段の喪失などの影響を現に受ける住民からの合意の取得というものは、先住民族からのものも含めまして、フィリピン政府によってこれまでなされているという認識がございます。そして、それを踏まえて、移転等の手続や補償もほぼ完了に近づいているという状況にあると認識をしているわけでございます。

     しかしながら、今、先生御指摘のような声がなおあるということについては、今後とも十分重きを置いてまいりたいと思っております。そして、私どもといたしましては、そういった、今申し上げましたように、いろいろな合意の取得から移転手続あるいは補償、そういったものがほぼ完了に近づいてまいります道筋で大変多くの努力を尽くしてきたと思っておるわけでございます。そして、フィリピン政府におきましても、これはほかの問題でございますが、例えば、土砂堆積の問題でございますとかいろいろございますが……

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  そこまで聞いていませんので、ごめんなさい。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  はい。

     多くのコンサルテーションなどもやっておりますし、また、去る六月二十二日には、これも先生御承知のとおりでございますが、プロジェクトサイトにおきまして、私どもの職員や、またNGOの方々も参加された上で、様々な立場の関係者の対話集会が広く行われたといったようなこともございます。

     これからもこの問題についての十分な配慮が尽くされるよう、フィリピン政府側にも注意を喚起し続けてまいりたいというふうに思っております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  結局、先住民族の同意は得られていないんですね。ですから、今日この委員会で質問をさせていただいているわけなんですけれども。

     二〇〇一年六月、先ほど総裁も触れられました先住民族委員会の調査チームが、割とここがきちんと民族の皆さんたちの声を聞いているわけなんですけれども、この事業にやはり権利法が要求する同意が欠如しているということを報告しているんですね。

     今年の三月には、先住民族の人々はこの権利法の要求する同意がなかったということを根拠にして事業を中止するように先住民族委員会に請願書を出しています。そして、彼らはこの請願書を受けて、じゃ、きちんとした対処を取らない、そういう場合には裁判に訴えて判断を最高裁にゆだねる構えも見せていると、こういうふうに聞いているんですが、こういう現実をどう受け止めるかですね。

     そして、しっかりとした対応を取らないのであれば、融資条件が満たされていないということですから、これは融資を中止する必要があるのではないかと思いますが、総裁、いかがですか。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  今御指摘になりました国家先住民族委員会の調査チームの報告書というものでございますが、これにつきましては、先住民族委員会自体及びフィリピン政府から、この報告書はあくまで特定個人の意見であり同委員会の公式な文書ではないという見解が示されたという事実が一つございます。

     それから、請願書、今年の三月に請願書が出されておるというお話でございますが、確かに、先住民族権利法の本件への適用を前提としてこのプロジェクトの中止を求めるという請願書が委員会に出されておりまして、その請願書への答えそのものは国家先住民族委員会において現在検討中というふうに認識をしているところでございます。

     しかしながら、先ほどから実務的、内容的にいろいろな手当てが進んでおるということを御説明しているところでございますが、移転や生計手段の喪失等の影響を現に受ける住民からの合意の取得がなされて、いろいろ補償あるいは移転等がほぼ完了に近づいておるところでございまして、これを私どものこの貸付契約の状況に照らしてみますると、今の状況が貸付契約で言っております違反、すなわちフィリピン関連法規に違反しているという状態に、違反している状態にあるとは認識できないのでございまして、その点につきましては御理解を賜りたいというふうに思います。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  総裁はそういうふうにおっしゃいますけれども、これはこのまま強行しますと、国際社会から批判を必ず受けることになるだろうと思います。現に、先住民族のグループの皆さんは、国連人権委員会で今年開かれる予定の特別調査委員会でこのサンロケ・ダムの問題を取り上げるように依頼をしておりますし、世界ダム委員会の方でも、このサンロケ・ダムは問題案件の一つとして調査されまして、先住民族の権利侵害、報告をされているということ、御存じだと思います。

     当初、フィリピン側もこの権利法による解決を方針としていたんですけれども、これが同法違反が指摘される、そういう状況が打開できなくなったというところになりましたら、これは法律適用しないというふうに、不適用という見解を取り始めたんですね。

     日本側としては、毅然として、やっぱりここはそういうふうではなくて、きちんと私たちはやるべきことはやるんだという、そういう態度で臨むべきだというふうに思うんです。ですから、きちんと同意を得られていないという、実質的にそうだということであれば、これは凍結融資を選択肢に入れた対応が必要となるというふうに思いますが、財務省にお聞きしますけれども、いかがでしょうか。

     

  • 溝口善兵衛財務省国際局長
  •  先ほど篠沢総裁の方から御説明ありましたが、国際協力銀行と借入先との間の借款契約の規定上、本プロジェクトが違法性を有しておるということは確認されてはいないわけでございますから、そういう立場に立って対応を、法律的な関係は対応をせざるを得ないんではないかというふうに申し上げているわけです。

     他方で、現実にそういう方がおられますから、そういう話合いとか円満な解決にいくようにフィリピン政府は努力すべきだということも併せて私どもとしてはフィリピン側に伝えておると、申し入れているということでございます。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  次に、地方自治法の違反についてもお尋ねしておきたいと思いますが、ベンゲット州の合意は得られていませんが、これでよろしいでしょうか。それから、以前はフィリピン側も国際協力銀行もベンゲット州の合意を得るように努力する、ずっとそういうふうに言ってきたと思うんですね。また、そういう必要があるという態度だったというふうに認識しておりますけれども、総裁、いかがですか。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  地方自治法上必要とされる関係自治体による同意ということでございますが、現段階におきましては、関係するすべての市及び村、バンガライと申しておりますが、この市及びバンガライから同意の決議を取得済みになっております。また、フィリピン法上必要とされるその他の許認可につきましても、環境適合証明書への同意を含めまして、関係する地方自治体による同意を取得済みになっております。

     ベンゲット州の問題でございますが、地方自治法を所管するフィリピン内務省といたしましては、現段階で、先ほど申しましたようなすべての市及びバンガライからの同意決議をもちまして本件に係るすべての地方自治体の合意はできており、現状、取得済みの同意決議をもって地方自治法上の問題はないという見解をお出しになっているというふうに承知しております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  私がお伺いしましたのは、各それぞれの町の自治体ではなく、ベンゲット州の合意を得るように努力する、しかもそれは必要だというふうにずっと言い続けてきたわけですから、そのことについてだけ本当は言っていただければよかったんですが。

     ここに一九九九年六月二十四日付のサンロケ・パワー社、フィリピン電力公社、旧輸出入銀行の間の覚書のコピーがございます。この覚書の六ページ、第九項にこのような記述がございます。すなわち、フィリピンの法規、特に地方自治法に従う観点から、サンロケ・パワー社はベンゲット州評議会と協議し、正確な情報を与えて適当と思われる支持、若しくは支持表明を得ることに合意した。さらに、先住民族権利法に従うために、サンロケ・パワー・コーポレーションは先住民族委員会スタッフ立会いの下に必要な協議の実施を地域委員会と調整することに合意したというふうに書いてございました。

     当初、フィリピン電力公社、サンロケ・パワー・コーポレーション、国際協力銀行の三者がこの先住民族権利法の適用とそれからベンゲット州の合意を事業の条件としていたと思います。事業の継続が覚書違反であることを示していると考えますが、違いますか。地方自治法違反を回避するために、解釈変更ではありませんか。財務省、どう考えますか。吉田政務官。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  事実関係については、JBICの方から答えていただきたいと思います。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  私どもも、地方自治法上、関係自治体からの同意というものについては当然重視をして臨んでおるところでございますが、結果的に関係するすべての市、村からの同意決議というものが取得され、それをもって地方自治法上の要件は満たされたという公的な解釈が出されておりますので、地方自治法の問題につきましては、それをもちまして要件充足というふうに理解をしたいと思っております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  先ほどから私は、各自治体ではなくてベンゲット州という、全部網羅してそこの話をしているんですけれども。

     それでは、環境調査の結果に対する覚書違反は事業中止の十分過ぎる根拠と考えておりますが、この事業のおかしさというのはこれだけにとどまっておりませんで、地方自治法違反の疑いのいま一つの根拠とされますイトゴン市の承認についてはどうお考えになりますでしょうか。

     このイトゴン市の承認決議はあくまでも条件のものだったというふうに思います。今、篠沢総裁がそういうふうに細かくおっしゃっていらっしゃいますから。ここは、一度承認したんですけれども承認撤回しているんですね。つまり、大変重いですよ。承認を撤回しているということは、イトゴン市の基本姿勢というのはやっぱり変わっていないんですね。やることをやっていないということに関して、これは承服できないということです。一度した支持を撤回した、この重さを受け止めるべきだというふうに考えますけれども、総裁、いかがですか。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  しばらく前の段階でイトゴン市から既になされた承認を撤回する決議というものがなされたことがございます。これは重い事態でございましたが、御承知のとおり、その後、同市を含めまして全市、村からの同意、地方自治法上必要とされる関係自治体同意というものが得られることによりまして、そこは治癒されたものと思っております。

     そのようなプロセスを経まする間に、いろいろな住民、関係住民からの合意でありますとか、いろいろな事態が、いろいろ御指摘をいただきましたことや、私どもあるいは日本政府の中では財務省等関係者が重々努力を積み重ねてきた結果としてそのように事態は進展しているというふうに理解をしております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  四月二十九日の決議というのが最新のものだと思っているんですけれども、その内容については承知していらっしゃいますか、四月二十九日の決議。国際協力銀行はこの四月二十九日の決議というのを、重要性を十分認識していない節があるんですよ。どうぞ。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  本年の二月に、ベンゲット州におきましてもイトゴン市が承認をしているという決議があったようでございます。そして、四月二十九日には、引き続き諸般の問題点を誠意を持って解決すべく努力をすべきであるという形の決議があったのではないかというふうに理解をしております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  結局、四月二十九日のところで、もう承認撤回というふうなことで自治体の合意が得られていない、承認撤回した後でもう一回、再度承認するというような状況の努力というのが全く見えていないわけなんですよね。

     それでは、このように国際協力銀行が前向きな情報を選択的に与えていないし、関連自治体の合意が得られていないというこういう状況で、財務省、改めて見解を伺っておきたいと思いますけれども、いかがですか。とにかく承認する、そして撤回をする、その後きちんともう一回承認ってなされていないんですよ。

     

  • 溝口善兵衛財務省国際局長
  •  事実関係につきましては、JBIC総裁の方から現状の説明ございましたけれども、私どもが報告を受けておりますのは、本プロジェクトにつきまして先住民保護法及び地方自治法上問題がないと。問題がないといいますか、フィリピン政府の方からそういう報告を受けているということでございます。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  とにかく、皆さんお聞きになったように、なかなか大まかに聞かされているということと現実が違っているということをお分かりいただけたのではないかと思うんですが。

     十七条件の履行、これは融資決定の前提だったと思いますけれども、もう本当に事業が九割を割って融資も一〇%残すだけという、こういう最終段階になっておりまして、もう本当にこの十七条件というものを完全に確保するということが急務ではないかというふうに思うんです。

     この中で、一番心配している人たちは、実は土砂堆積の影響の問題なんですね。先ほど総裁、ちょっとお触れになりましたけれども、直接の影響を受けるわけではないとの理由で説明が十分されていないんです。また、コンサルテーションで出された意見が事業計画に反映されているとも言えません。

     九九年に、事業者から独立した専門家による調査が行われましたけれども、この調査報告は事業者の調査の甘さを指摘をしております。また実際に、サンロケダムの建設現場の上流に二つのダムがありますけれども、アンブクラオ・ダムとそれからビンガ・ダム、この二つのダムの場合にも、貯水池の何キロも上流で堆積が起こって、住民たちが立ち退きを迫られました。島に住民の皆さんたちは移住させられて、でもそこがマラリアになってしまって住むことができなくて、またもう一回アグノ川の上流のところまでみんな戻ってきているんですね。だから、生活再建というのが全くできないという状況に、この二つのダムの経験から考えて先住民族の皆さんたちが当然、心配するのは当たり前だというふうに思うんですが、こういう現実があると。

     独立専門家の調査に対する見解はいつ示されるのかというふうに思います。そして、この事業に反対している人たちに対して情報公開や説明、そして話合いは十分に土砂堆積に関して行われているかどうか、お伺いしたいと思います。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  土砂堆積の問題でございますが、地元の自治体の御要請がございまして、一九九九年から二〇〇〇年に掛けて関連の調査が第三者のコンサルタント、これ米国の会社でございますが、これによって実施をされたわけでございますが、その結果として堆砂は、砂の堆積は九十年後でも当初水没域の上端から、一番上の部分から二・五キロメートルの地点までしか到達しないというような結論が得られたわけでございます。そして、その調査結果につきまして大変、何回も何回も、合計十七回であったかと思いますが、コンサルテーションが行われたわけでございます。そして、地元のイトゴン市議会でもその調査結果は受け入れていただいたわけでございます。

     それから、九九年に独立専門家、米国のNGOから批判が寄せられたということがございましたが、今申しました九九年から二〇〇〇年に掛けまして第三者コンサルタントによる調査が行われたというのも、今御指摘の独立専門家の批判を踏まえたものでございます。したがって、砂の堆積についての独立専門家の御批判はやや当を得ていない部分があるという結論になったのではないかというふうに私ども承知をしているわけでございます。

     それから、フィリピン政府は、この調査結果を踏まえて、地元住民にはこのコンサルテーションを通じて十分理解を得たという姿勢を取っておるわけでございます。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  確かに、その土砂堆積が起こるか起こらないかというのはなかなか難しい問題なんですね。でも、絶対起こらないというふうに言えないんですよ。川は生き物なんですよ。ですから、急流ですごい急激に行ってすごい流されて、また緩やかになったとき、そこにたまってしまうんですけれども、ここのフィリピンにはしょっちゅうまた洪水も起きているわけですね。ああいう状況が起きたときに複雑な要因で土砂堆積が起こる。現に、今日、国土交通省の河川課にも伺いましたけれども、全く起こらないというふうに言えないというふうに私はお伺いしたんですけれども、起こる心配があるんですよ。

     そして、申し上げますけれども、今年の六月に、下流のサンマニュエル町とサンニコラス町の住民五百六十名が建設の継続と稼働に反対を表明して、国際協力銀行に対しても、住民や環境に対する悪影響を考慮してサンロケ・ダムへ融資を中止すべきだというふうに訴えまして、住民たちが納得していないということを財務省は問題であるというふうに考えないか、ちょっとお伺いしたいと思いますのと、もう一つのその上流のアンブクラオ・ダムとビンガ・ダムの場合には、建設から四、五十年たっても、今も先住民族に対する補償の支払が済んでいない。このことが現在先住民族の事業者に持っている不信感につながっていることも踏まえて、吉田政務官にお尋ねしたいと思います。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  委員の御質問にお答えします。

     この意見、意見というか、こちらが財務省として承知しているのは、先ほど来申し上げているように合意が得れているんだと、フィリピン政府に伺うとそのような回答が返ってくるわけであります。

     その反面、住民の合意が得れていないというようなことで、それに対して関係方面にその事実関係をしっかり対応するようにということで財務省としては申入れをさせていただいているところであります。その行為に対して、より努めて財務省としても指導していくべきであると、このようなことは考えるわけでありますが、今、委員のお話の中に堆積が全く起こらないかと、恐らくそのレポートに関しては起こらないというふうに出ていたと思うんです。ただ、全くかと言われると、世の中いろんなことも発生するというようなこともあるわけでありまして、その辺のあんばいというか、それをやはり考慮していくべきであると、より詳しく調べる必要はあると思います。ただ、一定の報告としてはないと。

     もう一つ、四十年補償がされていないと、このような御発言があったわけでありますが、その辺に関しては私は現時点では承知していませんので、それはまた私自身も調べてみたいというふうに思っております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  吉田政務官には、是非、これはあんばい程度の問題じゃないという、つまり移住世帯の生活再建が四年を経て順調に進んできていないんですね。もう解決に近づいているどころか、ここは唯一の本当に現金収入が砂金採取なんですが、禁止をされました二〇〇一年七月ごろから現地で不満の声が大きくなってきました。そして、移住世帯の住民は、この生活再建計画はいずれも失敗に終わっていると、農業や砂金採取に代わる生活手段となり得ていないというふうに証言しているんですね。この事業者の進める補償計画、生活再建計画、不備だと。ここをはっきり押さえておいてください。この事業には元々無理があるというところから出発しているわけなんですけれども、生活再建計画が始まって四年経過しているにもかかわらず、十分な生活再建の手段が見いだせない、こういうような計画でございますので、これはもう継続していくというのは大問題だというふうに思っております。

     時間も大変短くなってきましたので、もう一度吉田政務官にお伺いしてみたいと思いますが、移転住民の、四年間うまくいっていないんだと。さっきの、あんばいを見ていくという状況じゃないですか、そこのところはやっぱり将来の補償というのをきちんとしていただくと、ここを財務省には認識をしていただきたいと思います。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  これは何度も同じようなお答えになるわけですが、財務省としてはフィリピンの方からそのような報告というのは伺っていないわけであります。

     ただ、今、委員が御指摘のあったということも事実であるというふうに思うわけでありまして、その点に対しては鋭意努力を進めていく、このように回答させていただきたいと思います。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  問題を認識しても融資をやめられない国際協力銀行の仕組みには深刻な問題があると思いますが、これは国際協力銀行の問題にとどまるものではありません。誤りに気付いた場合には凍結あるいはやり直しができる仕組み、この必要性について政務官のお考えをお尋ねしたいと思います。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  今、委員は誤りに気付いたときというふうに申されました。現時点においては、私どもはこの誤りを明確に気付いた状況にはないわけでありまして、その点については御理解をいただいて、我々はフィリピンに対し、フィリピン国に対して強く要請を行っていくと、継続して強く要請をしていくということで御理解をいただきたいというふうに思います。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  世界ダム委員会の勧告というのをもう一回読まなきゃいけないんですけれども、公正で、持続可能で、効率で、参加、アカウンタビリティー、説明責任を置くということについてこう勧告されておりますけれども、是非、やはり日本としてはODAの在り方、公共事業改革という面でも政府としてこの世界ダム委員会の勧告というものをしっかり受け入れて、そしてしっかりやっていただきたいなというふうに思うんですね。

     もう本当に時間が少なくなってきましたけれども、もう一度吉田政務官、世界ダム委員会の問題について短く、こういう勧告を受け入れてやるということについてお答えいただきたいと思います。

     

  • 吉田幸弘大臣政務官
  •  二〇〇〇年の十一月に発表された世界ダム委員会の報告書についてであると思います。

     このダム建設にかかわる意思決定に関して様々な提議がされておると。この勧告に対して委員はしっかりとその内容等を受け止めて進めていくようにということでございまして、その点については私どもも十分理解しているところであります。また、この件に関してしっかりと今の御指摘を私自身も承知しながら対応させていただきたいというふうに思うわけであります。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  吉田政務官、よろしくお願いします。

     とにかく共通しておりますのは、影響を受ける住民のリスクとか権利を過小に扱っている点だというふうに思っておりますので、是非よろしくお願いします。

     最後に、総裁、地元新聞に現地関係者が貯水は八月十四日になるというふうに語ったと報道されているんですね。そのような決定はないというふうに理解してよろしいでしょうか。

     それからもう一つ、貯水開始までにクリアされるべき条件がありましたら、それについてお聞きして終わりたいと思います。

     

  • 篠沢恭助国際協力銀行総裁
  •  貯水の開始時期につきましては、この補償手続の進捗状況を踏まえて水没予定地域住民に十分な、更に十分な配慮を行いつつ、フィリピン政府及び実施主体の側で慎重に判断を行うという問題であると思っております。

     しかし、本行といたしましても、フィリピン政府や実施主体に対してこの貯水に関して諸般の事情を十分勘案して慎重に判断するよう伝えているところでございます。

     先週、公共事業チェック議員の会の諸先生がお越しいただきましていろいろ御注意を受けました。岡崎先生にもお越しをいただいたわけでございますが、その後、私どもとしては万全を期すべく、先週末に担当理事ほかをフィリピンに出張させまして、改めてフィリピン側当局に配慮の徹底というものを今申し入れているところでございまして、フィリピン側も真摯に対応するという返事をしているところでございます。

     そのように十分な配慮を尽くしながら進めてまいる案件であるというふうに考えております。

     

  • 岡崎トミ子議員
  •  よろしくお願いします。

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