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 「中国の地震はダムが誘発した災害か?」


原文:https://www.internationalrivers.org/en/node/3827/
(国際NGO International Rivers政策担当Peter Bosshard氏の環境政策に関するブログより)

2009年2月4日

中国の地震はダムが誘発した災害か?

昨年、少なくとも69,000人の命を奪った壊滅的な四川大地震は、巨大な紫坪鋪ダムにより引き起こされた可能性がある。新たに提示された科学的証拠は、紫坪鋪ダムへの貯水とダムサイト近くの断層線の活性化との関連を示している。地震多発地域においてダムがさらに建設される前に、徹底した科学的な評価が必要である。

大規模ダムが、いわゆる貯水池誘発地震により地震を誘発することは、はっきりと認められている。70以上のダムにおいて、微震と貯水池の(水位の)上昇、下降との関連性を示す証拠がある。貯水池は、既に活発な地震活動のある地域で地震の頻度を増大させるとともに、以前は地震活動のない場所と思われていた場所でも地震を発生させ得る。

紫坪鋪ダムは156メートルの高さで、揚子江の支流の岷江にある。このダム計画は33,000人を移転させたが、日本の資金を得て2006年に完成した。四川地質鉱物局主任技師のFan Xiao氏は、ダムが完成する以前から紫坪鋪ダムによる地震の危険性を警告していた。大災害の後、彼は、「紫坪鋪ダムは、貯水池誘発地震を引き起こすあらゆる条件を兼ね備えていた。」と述べ、そして、「震源地がダムと非常に近いという理由からも、紫坪鋪ダム建設が地震を誘発した可能性を否定できない」と語った。(South Urban Daily紙によるFan氏へのインタビューは、本件に関する他の有用な記録と同様、Three Gorges Probeにより翻訳された。)

コロンビア大学Lamont-Doherty地球観測所の地球物理学上の災害を専門とする研究者Christian Klose氏は、四川地震を引き起こした断層線が数百万年の間、活動していなかったことを探り出した。Klose氏は12月、サンフランシスコでのアメリカ地球物理連合の会議で研究結果を発表した。彼によれば、「地球物理学的観測を総合すると、マグニチュード7.9のブンセン地震を引き起こした根本原因は、地表での局所的かつ急速な質量変化から派生した可能性があることを示唆している。」ということだ。1月16日発行のScienceに掲載された、Klose氏の調査結果に関するニュース記事で詳しく述べられているように、「(紫坪鋪ダムの貯水池の)付加荷重は、断層にかかる締め付けを緩くし、弱めることになっただけでなく、断層を破裂させることになる圧力を増大させることにもなった。その力は、年間を通じて地殻運動によって及ぼされる自然発生的な圧力の25倍に相当する力であった。(中略)断層が最終的に破裂を起こしたとき、まさに貯水池の荷重がそれを促進させるように働いた。」

中国のGeology and seismology(『地質と地震学』)という専門誌の最近の研究論文で、北京の中国地震局の地球物理学者Lei Xinglin氏と4人の同僚は、紫坪鋪ダムの地震影響について、更なる証拠を示した。論文によれば、「その地域の地震活動と圧力変化との間でいくつかの明瞭な相関関係が立証された。したがって、紫坪鋪ダムの貯水が明らかにその特定地域の地震に影響を及ぼした、と我々は結論づけた。また、その力が、ブンセン地震を引き起こす際にある役割を果たしたかどうかについて、更に調査する価値がある」と記されている。

ブンセン地震の原因についての更なる研究が必要である。明確なことは、震動はほぼ、紫坪鋪と他のダムを壊したも同然ということである。地震の間に、断層線は7メートル上方に滑り上がった。New Scientistの記事のなかで、Fred Pearce氏は、「狭い谷間の両側が激しく揺れたため、(紫坪鋪ダムの)構造が締めつけられ、ついには下流方向に18cmずれ、そして高さも70cm低くなった。コンクリートはばらばらに裂かれたが、ダムの芯部は残った」と述べている。中国水資源省によれば、地震後、四川省だけで69のダムが今にも崩壊の危機にあり、310のダムは高い危険性、1,424のダムは中程度の危険性となったそうだ。

地震発生時、紫坪鋪ダムの貯水池の半分は空の状態だった。もし地震が2ヶ月後の雨季の時期に起きていたら、「紫坪鋪ダムと他のダムはおそらく決壊して、人口60万人の都市、都江堰と他の下流の地域は氾濫していたであろう」とPearce氏は推測する。貯水池は今現在は空であり、修復を待っているところだ。

四川省と雲南省の山間部は地理的に不安定である。それにもかかわらず、それらの地域は現在の中国ダム建設の中心地でもある。ブンセン地震の後、地質、水管理、また、環境保護の専門家62人が、中国当局に対し、「中国南西部の地理的に不安定な地域における大規模水力発電ダムの承認を一時的に中断するよう」訴えた。彼らは、地質的に不安定な地域における貯水池誘発地震の危険性を評価する調査、また、地震多発地域において立ち並ぶダムが引き起こす下流地域への安全性のリスクを評価する調査を含む、5つの対策をとるよう、政府に求めた。

これまでのところ、中国当局は紫坪鋪ダムとブンセン地震を関連付ける証拠をないがしろにしており、この件に関する研究を更に進めることを可能にする地震データの開示を拒否してきた。同時に中国は、いわば明日なきダムを作り続けている。

アメリカ合衆国では、オバマ大統領が「科学を正当な場所に復帰させる」と約束した。中国では、科学的発展の概念は 胡錦濤 国家主席の指導原理となってきた。中国の巨大なダム建設計画による地震リスクを評価するため、自由な科学研究と議論が、今、必要とされている。

(翻訳:FoE Japan翻訳ボランティアの方々)


>関連記事(翻訳)ニューヨーク・タイムス紙 「四川大地震、ダムと関連の可能性」(2009年2月5日)

 

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