FoE Japan
開発金融と環境プログラム
開発金融 トップ キャンペーン 資料室
開発金融と環境プログラムキャンペーン>JBIC個別プロジェクト>フィリピン:ミンダナオ石炭>プロジェクトの概要
ミンダナオ石炭火力発電
ミンダナオ・トップページ
プロジェクトの概要
これまでの動き・活動
報道記事
関連資料
1.フィリピン:ミンダナオ石炭火力発電所建設事業とは?
プロジェクトの概要

目的: 210 MW (net) の石炭火力発電(石炭積み下ろし用埠頭、4.5kmの送電線設置、Tagoloan川からの5.0kmの水供給パイプライン設置を含む)

総事業費: 約3億米ドル

事業実施者: 電力開発社 (State Power Development Corp. : SPDC) 。State Investment and Trust, Inc.(SITI)(フィリピン)とSTEAG, AG(ドイツ)の合弁企業(独立系発電事業体(IPP))でフィリピン電力公社(NPC)との間に電力購買契約(PPA)を締結。SPDCが25年後にNPCへ発電所を移譲するBOT方式。

融資・付保機関: ドイツ復興金融公庫(KfW)、国際協力銀行(JBIC)が融資。日本貿易保険(NEXI)が付保を決定。

サイト位置: フィリピン在郷軍人投資開発公社(Philippine Veterans Industrial Development Corporation:PHIVIDEC)の管理するPHIVIDEC工業団地の敷地内55ヘクタール(ミンダナオ島ミサミス・オリエンタル州Villanueva町とTagoloan町)。工業指定地域になっているが、基本的にはまだ農地。(環境影響報告書によれば、約70%は農地。)

被影響住民の数: 事業者の報告では直接影響住民の対象として、
              ・発電所建設地=Villanueva町Balacanas村とSan Martin村の87世帯
              ・送電線設置サイト=Villanueva町San Martin村の7世帯
              ・配水管設置サイト=Tagoloan町Sta. Cruz村の8世帯
             間接影響住民の対象として、
              ・発電所(煙突)の半径2km内の1411世帯(約20000人)
2.日本との関わり
国際協力銀行の役割:輸出金融での融資契約を締結。(2003年12月)

日本貿易保険の役割:付保を決定。(2003年12月)

日本企業の関わり:日商岩井、川崎重工が参画。
3.問題点
公害による健康被害に関する懸念
・ 水銀やその他の重金属(ヒ素、クロム、鉛)の微粒子が高い濃度で廃棄物中に含まれる可能性から、フィリピン国内の既存の石炭火力発電所における公害と健康被害に関する問題について、フィリピンの上院で調査中。フィリピン国内における新たな石炭火力発電所の建設に疑問。
・ 水銀などの微粒子がより遠くへ運ばれる可能性から、環境影響評価(EIA)で間接影響住民の対象とされている範囲(発電所の煙突から半径2km内)が適切であるかという懸念。
温水の排出による海洋生態系や漁業への影響に関する懸念
・ Agutayan環礁の魚類保護区をその湾内に含むマカハラー湾に発電所の温排水が放出されることによる、サンゴ礁の白化現象やその海域の海洋生態系への影響を懸念。
・ 漁業に及びうる損害も懸念されているが、漁業の損害に関する補償計画については、漁民との間に話し合いは行なわれていない。
・ 環境影響評価(EIA)で調査の対象とされている範囲(タゴロアン川河口の沿岸約6km内)が適切であるかという懸念。
住民移転や生計手段の喪失に対する不十分な補償計画
・ 補償の手続きを進めるPHIVIDEC工業庁の移転計画は1990年代に作成されたもので、家屋の補償は査定額の約10%のみで不十分。補償に関する選択肢はなく、用意される移転地は山に近くで農地を見つけることはできない。
・ PHIVIDECの敷地内で移転の経験のある者は約束された雇用機会をこれまで得ていない者が多く、今回約束されている雇用の優先権が本当に実現されるのか疑問。
・ 地元の自治体などから「土地対土地」の補償措置を求める声があげられているが、そのような要求を議論し、反映される場は確保されていない。
・ 上記のような移転計画や社会開発計画の立案、実施、モニタリングへの影響住民の参加が不十分。
地球温暖化に関する懸念
・温室効果ガスの大きな排出源と認識されている石炭火力発電事業を行なうことに対する疑問。
代替案の可能性
・再生可能エネルギー(風力など)への転換の可能性が現地で指摘されている。
・ 既存の水力発電用ダムの集水域管理(植林等)を改善することにより、ミンダナオ島内における電力供給量の増加の可能性が指摘されている。
適切な情報公開と協議の欠如 (疑問の残る社会的合意)
・ 環境影響評価(EIA)に関する適切な協議は開かれておらず、懸念をあげ続けている現地の住民・NGOらに対する十分な説明がなされていない。
・ PHIVIDEC工業指定地域内では、銃を所持したPHIVIDEC工業庁のガードマンが見回りを続けており、そこで暮らす土地の所有権を持たない農民らの発言権は限られている。
・ 社会的合意に対する疑問から、環境天然資源省の発行した許認可「環境適合証明書(ECC)」の承認に関して、上院で調査が進められている。
独立系発電事業者(IPP)に対する電気料金の支払いに関する懸念
・ 民間のIPP・SPDCとフィリピン電力公社(NPC)との間で結ばれた電力購買契約(PPA)により、フィリピン国民に不当に高い電力料金が課せられるのではないかとの懸念。
・ 2002年、フィリピン政府内部の諮問機関が同事業のPPAに財政的な問題があることを報告。同事業に限らず、上下院で不当なPPAについての調査が継続されている。
・ 2002年、国家経済開発庁(NEDA)第10地方(ミンダナオ北部)支局が地方開発評議会(RDC)向けに出した事業評価報告のなかで財政的な問題点を指摘しているとされている。
4.経緯
1995年
1997年
1998年 6月
2001年 7月〜8月
2001年 1月31日 2002年 5月
2002年 6月

2002年 11月
2002年 12月

2003年 5月16日

2003年 5月20日

2003年 6月30日
2003年 7月24日
2003年10月14日
2003年12月 1日
SITIが ミンダナオ石炭火力発電所(MCPP)開発計画の建設、操業を行なうことに。
国家経済開発庁(NEDA)がプロジェクトを承認
電力購買契約(PPA)の締結(2001年3月に効力発生)
事業者による地元の村・町レベルでのコンサルテーション
事業者による環境影響報告書(EIS)の提出
地方自治体の要人らが事業者の招待でドイツの石炭火力発電所を視察
国家経済開発庁(NEDA)第10地方(ミンダナオ北部)支局が地方開発評議会(RDC)向けにMCPPの経済性を問う報告書を作成(未公開)
天然資源環境省(DENR)による環境適合証明書(ECC)の発行
持続可能な開発フィリピン評議会(PCSD)の市民団体メンバーが同事業の承認に関する調査をPCSDに求める決議文を可決
JBICがMCPPをカテゴリA(環境に重大な影響を及ぼしうる)に分類(https://www.jbic.go.jp/japanese/environ/joho/project.php)し、EISを公開。
NEXIがMCPPをカテゴリA(環境に重大な影響を及ぼしうる)に分類(https://nexi.go.jp/insurance/ins_kankyou/ins_kankyou_frame.html)し、EISを公開。
現地の反対グループが地元州議会にオープンレターを提出
現地の反対グループがJBICにレターを提出。慎重な融資検討を要請。
国際NGOグループがJBIC、KfW、NEXIにレターを提出。慎重な融資検討を要請。
JBIC、KfW融資契約締結。NEXI付保を内諾。
5.現在の状況
・ 国際協力銀行(JBIC)とドイツ復興金融公庫(KfW)は融資契約を締結。日本貿易保険も付保を内諾。融資契約後、2004年1月30日に着工式が行なわれたが、地元では反対の動きが強まっている。

・ 2003年6月より、事業サイトからの立ち退きが開始された。

・ 工期は約36ヶ月を予定。事業者は2006年までの発電開始を目的。
(c) 2002 FoE Japan.  All RIghts Reserved.

サイトマップ リンク お問い合せ サポーター募集 English