国会審議:石炭火力発電の輸出支援は止めるべき ― 問題山積のインドネシアベトナム案件を議論

化石燃料

4月6日、気候危機の観点から世界で脱炭素社会への動きが広がり、石炭火力発電所からの投融資撤退(ダイベストメント)が加速するなか、石炭火力の輸出に公的支援を続ける日本政府の方針について、参議院・決算委員会で審議がなされました。気候変動の問題は元より、地域住民の生活・健康被害や贈収賄事件まで、さまざまな問題が指摘されるなか、政府は石炭火力の輸出支援を一切止めるよう強く求められました。

今回の審議で具体的に取り上げられたのは、インドネシア・チレボン石炭火力・拡張計画(2号機)とベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業です。前者は丸紅・JERA(東電と中部電力の合弁)が出資し、政府が100%株を保有する国際協力銀行(JBIC。財務省管轄)と日本貿易保険(NEXI。経済産業省管轄)が融資・付保を行なっています。後者は、三菱商事・中国電力が出資し、現在、JBICとNEXIが支援を検討中です。

2019年12月 来日したWALHIスタッフらのJBIC前抗議アクション。汚職案件への公的融資即時停止を求めた。(写真:FoE Japan)
2020年3月 1号機の隣接地で進められている2号機の建設工事。住民の生活の糧である多くの塩田が奪われた。(写真:FoE Japan)

チレボン拡張計画については、地域住民や国内外の市民社会がJBICに対し、住民の生活・健康被害違法性贈収賄事件気候変動の問題を継続して指摘してきたにもかかわらず、JBICが融資の決定や貸付けを強行している姿勢が質されました。JBIC総裁は、贈収賄に係るインドネシア当局の捜査結果が出た後、「融資契約に基づき適切に対応する」と答弁したものの、現場での建設作業が続くなか、事業者から銀行団に対する貸付支払い要請がある可能性は否めず、引き続き注視が必要です。

ブンアン2事業については、海外の出資企業や銀行団が気候変動対策を重視し、軒並み撤退を決めたなか、日本の官民が事業を推進していることへの国際的な批判は免れないことが指摘されました。「インフラシステム輸出戦略における石炭火力輸出に関する4要件」への整合性も質されましたが、財務大臣や経済産業省・政務官からは「日越首脳会談の共同声明」における協力の確認と「4要件の合致」が言及されたのみで、どのように4要件に合致しているのか具体的な説明はなされませんでした。

また、同4要件の見直し等について、「関係省庁間で議論が行なわれているところ」との財務大臣の答弁もありましたが、「進行中」の議論との理由で詳細な答えはありませんでした。

環境省はすでに「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」を開催し、同4要件の見直しに向けた議論を開始していますが、財務省、外務省、経済産業省を含む各省庁および省庁間において透明性を確保した形で、「輸出前提」ではない根本的な見直しに向けた議論が行なわれることが求められます。

以下、2020年4月6日の参議院・決算委員会での関連質疑の内容です。


参議院・決算委員会(2020年4月6日)

>インターネット審議中継の映像はこちら  [発言部分 04:44:40~]
  http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

●岩渕友議員(日本共産党):
 石炭火力発電の海外輸出を公的資金で進めている問題について質問します。
 近年、世界各地での異常気象などの激化などによって、気候危機と言われる事態になっています。石炭火力をめぐっては、パリ協定合意の前後から、2度目標の達成のためには埋蔵化石燃料の8割は燃やせないこと、1.5度目標と整合させるためには世界のどの地域も例外なく2020年を発電量のピークとして速やかに減少させる必要があり、2030年には世界全体の石炭火力発電量を2010年比で8割減、2040年にはゼロにしなくてはならないと試算されています。
 石炭火力の利用を続けることはパリ協定と整合しないということは明らかです。国連のグテーレス事務総長は、昨年のCOP25にあたって、すべての国に2030年に温室効果ガスを45~50%削減、2050年には実質ゼロと整合する計画の準備を呼びかけて、新規石炭火力は2020年に廃止することを求めました。各国で石炭火力発電所の廃止が加速し、金融機関、投資家の脱石炭の流れも加速しています。
 こうした国際的な流れの下で、日本政府が100%出資している公的金融機関、国際協力銀行JBICが融資をしているインドネシアのチレボン石炭火力発電所の拡張計画・2号機建設についてお聞きしたいと思います。
 この間、国際環境NGO FoE Japanや現地の住民の方々、環境団体の方々が来日の際に直接訴えをお聞きもしてきました。インドネシア西ジャワ州チレボン県において2007年から建設を開始した1号機は、2012年7月から商業運転を開始しています。2号機の規模、事業額、JBICの融資額はそれぞれどうなっているんでしょうか。

●JBIC前田総裁:
 今委員がご指摘のチレボン石炭火力発電所拡張プロジェクト、いわゆる2号機ですが、発電容量は1,000メガワット、これ一基。この超々臨界圧の石炭火力発電所を建設、所有し、長期にわたって操業するもので、総事業費は21億7,500万米ドル、私ども国際協力銀行の融資承諾額は約7億3,100万ドルです。

●岩渕議員:
 この事業をめぐっては、1号機の建設のときから現地の住民の方々の反対運動が続けられています。2016年4月9月に現地の住民グループからJBICに懸念と要請が伝えられていますが、どのような内容だったか、ご紹介ください。

●JBIC総裁:
 2016年4月の書簡、これは第1号機に関してですが、この要点は、エビなどの漁獲量の減少、塩田における塩の汚染、灰の飛散といった問題があって、生計手段が失われたり、環境破壊や健康被害が生じているという内容でした。
 2016年9月の書簡です。これは2号機の件ですが、事業用地の取得プロセスに問題があり、土地の所有をめぐる紛争が生じていると。チレボン石炭火力発電所拡張プロジェクト、2号機は、チレボン県の空間計画に違反しているという内容です。

●岩渕議員:
 今紹介いただいたような懸念が住民の皆さんから伝えられているということなんですね。
 その後、住民の方々は、2016年12月に2号機の案件に係る環境許認可の取消しを求めて西ジャワ州の政府を提訴しました。その結果、2017年4月19日、地裁は住民の訴えを認めて、環境許認可の取消し判決を行ないました。ところが、なんと、その判決の前日に銀行団が融資契約に調印するということになったんですね。
 しかも、その直前の財政金融委員会の中で我が党の大門実紀史議員がこの問題を取り上げて、JBICのガイドラインには相手国の法令の遵守が規定されている。今回訴訟が起きているけれど、判決によって環境許認可が無効ということになれば、ガイドラインに反することになる。結果が確定しないうちに融資を決定するということがあってはならないと、このように質したのに対して、当時の近藤総裁が、訴訟の判決が出ればどう対応するかということだ。その内容をガイドラインに基づいて精査し、適切に対応していきたいと、こういう答弁を行なったんですね。こういう答弁を行なったその直後に判決も出ていないのに融資決定を行なったということなんです。
 国会の委員会における質疑、答弁に反して融資決定が行なわれた。このことをJBICはどう考えているのでしょうか。

●JBIC総裁:
 時系列の問題は、今委員からご指摘のあったとおりで、4月19日には第一審の判決が出たわけですが、その前日の18日に融資契約を締結したわけですが、そのときの答弁の内容も今委員が仰ったとおりですが、私どもの趣旨としては、判決が出るまでは融資決定はしないといった意味ではなく、訴訟の判決が出た場合には、その内容を環境ガイドラインに基づいて精査し、適切に対応していくという答弁だったと思います。
 なお、2017年4月19日のインドネシアの地方行政裁判所が、西ジャワ州政府の発行した環境許認可、これが無効になったわけですが、2017年7月17日に、西ジャワ州政府は、これに基づいた新たな環境許認可を発行したわけです。JBICとしては、環境社会ガイドラインに基づいて、この新たな環境許認可の内容を精査しました。その結果、同ガイドラインへの適用は確認できたということで、2017年11月14日に初回の融資実行を行なったということです。

●岩渕議員:
 判決が出ていないから融資決定しないという趣旨の答弁ではなかったということを最初に仰られましたが、これ、答弁の受け止めの違いという問題ではありません。国会軽視であり、とんでもないことだということを厳しく指摘してきたいと思います。
 2017年3月23日2018年5月18日に安倍首相をはじめ関係大臣、団体に対して、日本政府はインドネシア西ジャワ州のチレボン及びインドラマユ石炭火力発電所への融資を含めて拒否するべきだという抗議の要望書が提出されています。この要請書は、パリ協定後の世界の流れに反する日本の方針を憂慮する、そういう中身になっているわけですが、この内容について簡潔に説明してください。

●財務省 岡村国際局長:
 ご指摘の要請書、2017年3月23日2018年5月18日に出されていますが、インドネシアの石炭火力発電事業につきまして、パリ協定に沿って世界が劇的な炭素排出削減を行なっている努力を蔑ろにするものであること、また環境許認可に法的な不備が存在すること、また地元の漁民などへの収入機会の回復が適切になされていないことなどを指摘し、この事業への融資の停止を要請するものであったと理解しています。

●岩渕議員:
 先ほど答弁でも出してもらったような1号機の案件に対する生業が奪われたことや健康被害なども含めての指摘もあって、さらに言うと、今言っていただいたように、パリ協定の実現に対して世界が行なっている努力を蔑ろにするものだと、こういう厳しい指摘が行なわれているということなんです。
 この2017年の要請書というのは、47ヶ国の280団体が名前を連ねている、そういった要請書なんです。これだけの団体が名前を連ねている、このパリ協定に反しているんじゃないかという懸念を伝えてきていると。こうした国際的な批判も聞かずに融資決定が強行されたということでもあるんです。
 さらに、この案件をめぐっては今新たな問題が起きています。今年1月7日に現地の住民グループがJBICに対して、チレボン石炭火力発電所2号機への貸付実行を早急に停止するよう要請する文書を出しています。その理由について説明してください。

●JBIC総裁:
 現地住民グループからの書簡というのは、このチレボン石炭火力発電所の2号機につきまして、借入人ではなく、EPCコントラクターである韓国の現代建設の元社員が前チレボン県知事に対して賄賂を供与したという疑惑があるということで、これを背景にして貸付停止の要請を行なっているものと理解しています。

●岩渕議員:
 今説明いただいたように、EPC契約者の一つである現代建設、ヒュンダイ建設が前チレボン県知事に対して多額の不正資金を供与したという贈収賄疑惑が持ち上がっているということなんですよね。こうした贈収賄疑惑がある案件に融資を継続するなどあってはならないと、こういう趣旨の要請です。
 JBICの融資事業に関わって、贈収賄事件がこうやって公に明らかになっているわけですが、この問題はこれまでとは状況が違うと、こういう認識をJBICは持っていますか。

●JBIC総裁:
 本件につきましては、2019年11月に、インドネシア汚職撲滅委員会から、先ほど答弁申し上げた現代建設の元社員を容疑者として認定したという、そういう発表があり、現在も捜査が継続中という認識です。
 私どもといたしましては、この問題に関して事実関係の確認を継続し、動向を引き続き注視していきたいと思います。

●岩渕議員:
 事実関係を確認しながら事態を注視して見守るということですが、贈収賄事件の疑惑ということなので、これまでの内容とは明らかに違う、そういう事態に今なっているということだと思うんですね。JBICの融資対象の企業に関わって、贈収賄に関与したことが判明した場合の取り扱い、これが今一体どうなっているでしょうか。

●JBIC総裁:
 私どもは、公的輸出信用と贈賄に関するOECD理事会というのがあり、この理事会が勧告を出しています。いわゆるブライバリー勧告と言われていますが、これを踏まえながら、事実関係に応じて、融資契約に基づいて適切に対処したいと考えています。

●岩渕議員:
 もうちょっと中身を詳しく説明いただければ良かったのですが、支援対象となる契約に関して、贈賄の事実が支援承認前に明らかになった場合には当該支援を行なわないことや、支援承認の後に明らかになった場合は貸出の停止や融資未実行残高の取消し又は借入人の期限の利益を喪失させるなどの適切な措置をとると、こういうことが書かれているわけなんですよね。
 それで、先ほども紹介いただいたように、汚職撲滅委員会は、2019年10月には前チレボン県知事を容疑者認定していると。そして、11月には現代建設の幹部を容疑者認定しているんですね。こういう状況のなかで、今後の貸付実行は当然あってはならないし、これは融資を引き揚げるべきではありませんか。

●JBIC総裁:
 私どもの対応については、今委員ご指摘のOECDにおけるブライバリー勧告に基づいてと申し上げましたが、その内容については、今委員がお示しいただいたものと理解していますが、いずれにいたしましても、この融資契約があるので、これに基づいて適切に対応するということで、個別案件、これ具体的に本件に適用するかどうかということは、実際の決定が出た後に対応したいということで、この段階ではちょっとお答えすることは控えさせていただきたいと思います。

●岩渕議員:
 個別の案件については答えられないということなんですが、先ほども言ったように、実際にその前チレボン県知事も、そして現代建設の幹部も容疑者認定されていると、こういう状況になっているんですよね。個別の案件だから答えられないということでは済まされない問題、そういう状況になっていると思います。
 大臣にお聞きするんですが、この石炭火力発電に対しては、世界から非常に厳しい目が向けられている、そのことに加えて、今やりとりがあったように、贈収賄疑惑のある案件に融資を継続するということになれば、日本政府そのものが海外からの信頼を失うことになりかねないと思うんですよ。これ、融資を止めさせるべきではないでしょうか。

●麻生 財務大臣:
 私どもとしては、これはJBICが融資契約に基づいて適切に対応しているんだと、今、前田総裁のほうから答弁があったとおりですが、財務省としても、引き続き注視はしていきたいと考えています。

●岩渕議員:
 JBICは100%政府が出資をしているということなんですよね。だからこそ、石炭火力のことも含めて、今世界の厳しい目が向けられている状況だということです。
 この銀行団に加わっていたフランスの大手銀行のクレディアグリコルは、自分のその銀行の気候変動に対する方針転換を理由にして、融資契約が締結をされる前に撤退を決定するということが行なわれているんですね。これが今は世界の流れ、国際的な流れになっています。融資はきっぱりと止めるべきだということを強く申し上げたいと思います。
 石炭火力発電への融資から撤退する国際的な流れがある一方で、日本はどうなっているのかということで、資料の1をご覧いただきたい。これはパリ協定以降の石炭火力輸出に対する公的支援案件と今後も支援が見込まれるものの表なんですが、建設中のものは8件、計画中のものが2件あるんですが、そのほとんどにJBICが関わっているんですよね。今こういう状況だということです。
 そして、資料の2もご覧いただきたいと思います。これは、JBICが融資、保証を行なった石炭火力発電の案件ということで、2003年から2019年度までの融資・保証金額、件数、そしてプロジェクトの所在国についてまとめたものになっています。
 そして、資料の3をご覧いただきたいのですが、これはG20各国の海外石炭火力発電および再生可能エネルギー事業への公的金融機関の支援額ということで表にしたものなんですが、海外の石炭火力発電所への支援額は中国に次いで日本が2番目に多くなっているんですね。その大きな部分をJBICが占めているということなんです。
 COP25のなかでは、国連のグテーレス事務総長から石炭中毒と日本が名指しされるなど、国際的な批判を浴びています。小泉環境大臣は、日本の官民が投融資をする形で建設を進めているベトナムのブンアン2石炭火力発電事業について、インフラシステム輸出戦略における石炭火力輸出に関する4要件から見て問題があると、こういうふうに発言をしています。
 そこで、4要件について確認を致します。

●経済産業省 岡田 審議官(貿易経済協力局担当):
 令和元年6月6日に改訂された現行のインフラシステム輸出戦略は、石炭火力発電の輸出方針について次のように定めています。読み上げます。
 パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素等も含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、低炭素型インフラ輸出を積極的に推進。そのなかで、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、相手国から我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動政策と整合的な形で、原則、世界最新鋭である超々臨界圧、USC以上の発電設備について導入を支援すると、このように記載されています。

●岩渕議員:
 今読み上げていただいたように、4要件というのは後半の部分に当たるわけです。石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限ると。相手国から要請があった場合で、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、世界最新鋭である超々臨界圧以上の発電設備について導入支援するんだというんですね。けれども、国内からだって当然懸念の声が出ているという事態です。
 このブンアン2の案件ですが、今言っていただいた4要件に合致していると、こういう認識でしょうか。

●経済産業省 宮本 大臣政務官:
 今ほど、いわゆる石炭火力輸出の4要件に関してのご指摘がございましたが、このベトナムのブンアン2石炭火力発電案件に関しては、関係省庁のほうでしっかりと協議をした結果、また、我が国とベトナムとの間においても、日越首脳会談共同声明で協力を確認している、こういったことも踏まえて、この4要件に関しては合致しているものと判断しています。

●岩渕議員:
 実際、プラントはアメリカのGEというところで、据付けは中国が行なうわけなんですよね。事前に聞いたら、オペレーションは日本だと、だからこれはまったく問題ないんだという話があったり、実際、先ほどパリ協定のお話もありましたが、パリ協定の整合性という観点から考えても、やっぱりこの石炭火力を進めるということは、とても整合性がとれているとは言えないと、そういう状況になっているんだと思うんです。
 ブンアン2については、JBICは、その環境アセスメントをウェブ上でもうすでに公開してるんです。つまり、これが何を意味しているかというと、支援の検討を始めているということなんですね。このブンアン2のこの間の国内のいろんな議論を見て、実際には合致しているという認識だということを受けて、支援の検討をもう既に始めているということなんです。けれども、この案件に関わっている三菱商事と合弁を組んでいた香港の企業は、脱石炭方針を発表して、この事業から撤退をしているんですね。融資団に参加をしていたイギリス、シンガポールの銀行も相次いで撤退をするということになっていて、今この融資を検討しているのは、現状では日本の公的及び民間銀行だけになっていると見られるんだということを環境NGOの団体も指摘するというような状況になっているんです。こういう状況のなかで、本当に融資を続けていいのかどうかということが当然国際的にも問われる状況に今なっているんだと思うんです。
 それで、JBICにお聞きしますが、このブンアン2への融資は止めるべきではないでしょうか。

●JBIC総裁:
 先ほど経産政務官の方からもお話がありましたように、本件については、政府方針として先ほどの4要件に合致しているという判断がなされたということ、それから、相手国のエネルギー政策との整合性というのがございますが、ベトナムは、その4要件にも書いてあるように、他に取り得る手段がない場合とか、非常に限定して対応していくということで、このブンアンについては、最新鋭のUSC、超々臨界圧以上であるということをもちまして、政策金融機関としては、その後のパリ協定に関する様々な動きも当然にらみつつですが、適切な対応を行なっていきたいと考えています。

●岩渕議員:
 引き続きこの案件を検討していくということが今の答弁だったわけですが、これはJBICだけでは当然決められないことでもあるんですよ。
 それで、大臣にお聞きするんですが、このブンアン2へのJBICの融資ですが、止めさせるべきではないでしょうか。

●麻生 財務大臣:
 ご存じなんだと思いますが、関係省庁の議論の結果、このブンアンの石炭火力発電所については、首脳会談していますよね、確か。その共同声明で協力を確認しているんだと、私どもの理解ではそうなっているので、公的支援を実施する方針となったという背景は、この日ベトナムの首脳会談による共同声明なんだと思っています。
 石炭火力発電の輸出支援に係る政府の方針というのは、これはもうご存じのように、エネルギー基本計画で定められているいわゆる4要件ですが、現在、4要件の見直し等々について関係省庁間で議論が行なわれているところなんだと理解しています。

●岩渕議員:
 先ほどから何度も首脳会談で合意されていると言っているんですが、やっぱり石炭火力発電自身が非常に国際的な批判を浴びていると、そういう状況のなかで本当に見直ししなくていいのかということが問われているんだと思うんです。そして、今大臣新が、エネ基の見直しが行なわれようとしていると、今後、という話がありましたが、今後、エネ基の見直し、もちろんなんですが、その前にこのインフラシステム輸出戦略の見直しが行なわれるということで、今言っていただいた関係省庁のなかには当然財務省も含まれているのですが、この4要件について見直しを行なう関係者の会議、なされると聞いています。
 この石炭火力発電の輸出をそもそも止めるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

●麻生 財務大臣:
 今の段階で、まだ話は進行中の話なので、細目詳しいわけではないので、答弁は控えさせていただきます。

●岩渕議員:
 ブンアン2の案件への融資も止めるべきですし、今後見直しをしていく中で石炭火力発電への融資もきっぱり止めるべきだということを言っておきたいと思います。
 途上国には石炭火力を選ばざるを得ない国もあるんだと言いますが、再生可能エネルギーの急激なコストの低下や途上国を含めた今後の気候変動対策の強化の潮流、流れを踏まえれば、石炭火力の経済的な優位性というのは多くの国で今失われつつあります。
 そして、実際、ベトナムにおいても、先ほど、まあこれしかないというような話もあったんですが、2020年代の前半には太陽光発電であるとか風力、陸上風力の発電の建設コストが石炭火力発電のコストを下回ると、こういう予測もされているんですね。それはチレボンのあるインドネシアでも同じで、太陽光は2020年代の前半、風力発電は後半にはそれぞれ石炭火力発電の建設コストを下回ると、こういう予測をされています。
 インドネシアのジャワ・バリ電力系統、これはチレボンに関わるところですが、日本の支援がこの地域の電力供給過剰を深刻化させているという状況なんですね。
 石炭火力発電所は、一回建設すれば30年といった長期間の運転が想定されます。大量のCO2排出が長期間にわたって固定化されるということにもなるので、途上国にとって将来の気候変動対策の選択肢を大きく狭めてしまうということにもなるんです。この気候変動対策の観点のみならず、途上国経済の観点からも脱石炭支援を行なうことが妥当だと言えると。石炭火力発電の輸出支援を止めるということを重ねて強く求めて、質問を終わります。

(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。
2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団(三菱UFJ、三井住友、みずほ、ING)が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では、アクセス道路の整備や土地造成作業などが終わり、本格的な工事が始まっている。2022年に運転開始見込み。

(※)ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業
目的:1,200MW(600MW×2基)規模(超々臨界圧)
事業者:Vung Ang 2 Thermal Power Company(VAPCO)=OneEnergy Ltd.100%出資の特別目的事業体(SPV)
OneEnergy Ltd.(本社:英領ケイマン)は、三菱商事の香港100%子会社であるDiamond Generating Asia – DGAが40%、CLP ホールディングス(本社:香港)が40%、日本の電力会社である中国電力が20%を出資する合弁会社。ただし、CLPホールディングスは2019年12月17日に新規の石炭火力発電事業からの撤退方針 を発表し、ブンアン2同様、ベトナムで計画が進められているビンタン3からも撤退するとした。2020年1月現在、CLPの持ち株分について三菱商事からの提案により韓国電力公社(KEPCO)が取得を検討中。
総工費:約22億米ドル
公的融資: 国際協力銀行(JBIC)(検討中)
民間融資:三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行(当初銀行団に名前が挙がっていた、DBS銀行(シンガポール)、オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)(シンガポール)、スタンダードチャータード銀行(英)は脱石炭方針により撤退)
付保:日本貿易保険(検討中)
稼働開始予定:2024年

 

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