日本の経済協力が
新たなダム問題を生まないために・・・
世界ダム委員会最終報告書


◆ ◆ プレスリリース◆ ◆

2000年11月16日

  11月16日午前10時(日本時間午後7時)からロンドンにおいて世界ダム委員会(WCD)の最終報告書が公表されます。WCDは世界中のダムをレビューして問題点を分析し、今後に向けたガイドラインや勧告をすることを目的としています。世界銀行と国際自然保護連合(IUCN)が中心となって設立を働きかけ、最終的には政府・企業・市民社会が共同で運営する独立した機関として1997年に発足しました。12人の委員と様々なセクターが参加したフォーラム、世界4か所でのコンサルテーションなどをへて最終報告書をまとめました。本日ネルソン・マンデラ氏によって公表されるWCD最終報告書は、大規模ダムが建設推進者側の主張ほど発電、水供給、洪水抑制などを実行できていないことを充分な調査報告をもとに明らかにし、こうした大規模プロジェクトは頻繁にコスト超過や事業の遅れを伴っていると指摘しています。

  • 大規模ダムは4000万〜8000万人に移住を強いた。その結果経済的な困難、地域社会の崩壊、精神的/肉体的健康問題を引き起こした。特に先住民・部族民・小作農の社会を襲った。ダムの下流住民は疫病や生活の糧だった自然資源を失った。
  • 大規模ダムは多くの魚や水生生物の消滅という環境破壊や、広大な森林・湿地・農地の消失を引き起こす一方、大部分の利益はすでに生活にゆとりのある人たちに行き、貧困層がそのコストを負っている。

世界ダム委員会はこうした分析に基づき以下の提言をしています。

  • 被影響住民の合意なくダムを建設すべきではない
  • 新たなプロジェクトを進める前にニーズについての包括的で参加型の評価とそうしたニーズを満たす選択肢を掘り起こすべきである。
  • 新たなプロジェクトを建設する前に既存の水/エネルギーシステムの効率性を最大化することに優先順位を置くべきである。
  • 既存のダムについて安全性や撤去の可能性などについて評価するため定期的な参加型のレビューを実施すべきである。
  • ダムの影響を受けた人々に社会的な補償を行ない破壊されたエコシステムを回復するためのメカニズムを作るべきである。

  日本国内のダム問題や日本の経済協力によって引き起こされたダム問題をモニターしてきた日本のNGOや市民グループは、世界中の友人たちと共に世界銀行、地域開発銀行、輸出信用機関および二国間援助機関を含むすべての公的金融機関に対して世界ダム委員会の勧告を包括的に受け入れ、計画中・建設中のダムの見直し、既存のダムによる影響への補償、更にそうした措置が行なわれるまでの新規ダムへの支援中止を求めます(要望書を参照)。また日本政府の経済協力によるダム開発で社会環境面に大きな問題が起きているメコン河流域国フィリピンのサンロケダムについて以下で実例として紹介致します。

  なおマンデラ氏による最終報告書の公表に先立って援助国と被援助国のNGOやダム影響住民の代表が以下の日程で記者会見を行います。
    場所:Queens and Holyrood Rooms, International Hotel,
        163 Marsh Wall, Canary Wharf,
    日時:11月16日午前9時〜10時
    連絡先:Mr. Patrick McCully
        (IRN, USA) +44 774 892 1420 (mobile in UK-from Nov 13)

プレスリリース作成及び本件の問い合わせ先
★メコンウォッチ Tel+81-3-3832-5034、info@mekongwatch.org
      (担当:松本悟 090-8115-5230)
★地球の友ジャパン Tel+81-3-3951-1081、finance@foejapan.org

★メコンのダムに関するバンコクでの連絡先は、+66-2-692-5329
       (土井、木口)

→→最終報告書の要点を見る
→→公的金融機関へのNGOの要望書を見る
→→メコン河流域国の実例を見る
→→フィリピン、サンロケダムの実例を見る
→→公共事業チェック議員の会の談話を見る