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地元住民と国際環境団体から国際協力銀行への 「独立評価調査の実施についての要望書」
2003年6月20日


フィリピン・サンロケダムに関する
独立評価調査の実施についての要望書


国際協力銀行
総裁 篠沢 恭助 殿


 貴職におかれましてはますますご活躍のこととお慶び申し上げます。

 さて、国際協力銀行が融資を継続しているフィリピンのサンロケ多目的ダム事業については、流域住民の生活状況の悪化、被影響住民(ベンゲット州イトゴン町の先住民族およびパンガシナン州サン・マニュエル町、サン・ニコラス町の住民)に対する人権侵害、土砂堆積による上流域の村への影響など、これまでに多くの問題が指摘されてきました。

 しかし、国際協力銀行が融資を決定されて以来、すでに5年近くが経ちますが、その間、問題に苦しむ現地の住民は事業への反対の声をあげ続けてきました。現在も、住民はサンロケダムの発電部門における商業運転の中止と問題の解決を事業者に求めつづけています。いまだに問題解決に向けての根本的な対策がとられていないためです。

 事業者はこの5月1日、商業運転を開始し、これまでと同じように、問題の解決を先送りにした形で事業を進めています。国際協力銀行は、移住世帯の生活再建の確保などが十分に担保されること、また、先住民族の権利の保証を前提に、98年10月および99年9月、融資の決定を行なわれたと理解しております。これ以上、住民の苦しみが続かないよう、また、事業による被害が拡大しないよう、早急に住民の指摘する問題を解決する枠組みをつくる必要があると考えます。

 そこで、「事業者の提示してきた問題解決の枠組みに対する独立評価調査の実施」について、国際協力銀行に検討していただくため、以下のとおり、要望させていただきます。

1.問題点の整理

 これまでに住民やNGOから事業者および融資者に対してあげられてきた実質的な問題として、おもに以下の2つがあげられています。

(1) 流域住民の生活状況の悪化
(2) 土砂堆積による上流域の村への影響(集水域管理計画)


 これらの問題の解決には、以下のことが満たされる必要があります。
(1) 適切な措置により、被影響住民の生活レベルが向上すること、少なくとも、以前の生活レベルが維持されること
(2) ダムの上流への土砂堆積を防ぐための実効性のある手段が提示され、それが影響を受ける住民の承認と参加を得て実施されること


 以上のことは、国際協力銀行が融資の前提としている(1)移住世帯の生活再建の確保などが十分に担保されること、(2)先住民族の権利の保証とも合致するものです。

 事業者は、これらを達成するために、おもに以下の手段を提示し、取り組んできました。

(1) (移転行動計画に基づく)生活補償
(2) 生活再建プログラム
(3) 集水域管理計画

 しかし、事業者がこれら従来の手段に取り組んでいるなか、依然として、以下のような状況が現地では見られます。

(1) 流域住民の生活状況の悪化に関連して
・ 学校に通えない子供たちが増加している。
・ 事業者であるNPC、SRPCの生活再建プログラムは、移転世帯の基本的なニーズを満たすだけの代替の収入源を提供できておらず、電気・水道料金すら支払えない世帯が出てきている。なかには、生計手段がないことから、再定住地を出ていく者もいる。
・ 生活再建プログラムの恩恵を受けることになっている対象者でさえ、そのプログラムの資金がどのように運用されているのか知らない。このように、生活再建プログラムに関する資金面での透明性がない。
・ 補償の支払いに関係して提示された条件にサインするよう書面で求められ、受け取るべき補償額の70〜80%の額しか受け取っていないとの苦情を出している補償請求者がいる。
・ サンロケダムの建設により収入源を喪失した砂金採取者らは、金銭的補償を要求し続けているが、この正当な要求は認められていない。これらの農民は、この砂金採取による収入源の喪失によって、従来は可能だった基本的なニーズを満たす、あるいは、子供の教育を続けさせるのさえ困難な厳しい経済状態に置かれている。

(2) 土砂堆積による上流域の村への影響に関連して
・ ダムの上流のベンゲット州イトゴン町が事業への支持を撤回している。
・ 土砂堆積を防ぐために建設された砂防ダムが、田畑への洪水を引き起こしている。
・ 影響を受けるイバロイ先住民族に対する補償に関連して、汚職の証言が出ている。

2.必要とされる取り組み

 これまで、事業者および融資者は、事業者の示してきた既存の問題解決の手段について、問題解決のために十分機能しうるという見方を示してきました。しかし、住民およびNGOは、従来の手段が十分に機能していないために問題の解決が図られてこなかったと考えています。この両者間の大きな認識の違いは、これまで埋められることもなく、両者間の交渉も事実上行き詰まりを見せていました。しかし、本来、受益者であるべき被影響住民のあげる問題が解決されなければ、今後、彼らの被害が拡大する恐れがあります。いま、両者間の認識の違いを埋め、問題の解決に向けた新たな動きを作り出していかなければなりません。

 そこで、以下のような措置が必要であると考えます。

(1)独立評価
 事業者が取り組んでいる問題解決の手段を独立評価することは、これらの問題を解決していくための第一歩となるに違いありません。独立評価によって、移転行動計画(RAP)や集水域管理計画(IIWMP)などの既存の手段の妥当性を調査するだけでなく、住民の生活水準を回復するための追加措置を提示する必要があると考えます。

(2)残りの融資拠出の停止
 国際協力銀から事業者に対する残り10%の融資は、独立評価によって、事業者/融資者および地元住民/NGO間での理解の違いが解消されるまで停止されるべきです。

3.独立評価の実施方法

 独立評価の実施に関して、下記のとおり提案させていただきます。

(1)目的
・ 補償、生活再建計画および集水域管理計画を含む、事業者の従来の問題解決の手段について、その実効性や実施状況などを調査すること
・ 追加的な補償措置が必要とされていないか判断すること
・ よりよい土砂堆積の防止策が必要ではないかを判断すること
・ 既存の問題解決の手段をよりよいものにするため、また、必要とされる追加的な措置について、勧告を行なうこと

(2)確保されるべき事項
 事業者の問題解決の取り組みに関して、独立した評価を効果的かつ適切に実施するにあたっては、
・ 調査チームの独立性
・ プロセスの透明性
・ ステークホルダーの参加
・ 問題解決に向けたフォローアップ

が確保されなくてはなりません。

(3)独立評価の実施にあたっての条件 (詳細は添付資料を参照。)
 (2)で示した4つの事項を確保するために、特に、以下の4項目に関する詳細な手続き等について、今後、話し合われる必要があると考えます。
  T.業務指示書(TOR)の策定について
  U.独立調査チームの構成員について
  V.情報へのアクセスについて
  W.独立調査チームの評価報告書について


 国際協力銀行は、近年、先進的な、透明性の高いプロセスのなかで、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を制定されました。この策定プロセスは、その内容とともに国内外からも高い評価を得ており、国際協力銀行の業務においても今後、適切な環境・社会配慮がなされるものと大きな期待が寄せられております。

 サンロケ多目的ダム事業については、新しいガイドラインは適用されませんが、国内外の関心も高く、この事業の問題に対し、国際協力銀行が適切な環境・社会配慮を行なっていくことは、国際協力銀行の新しい取り組みを国内外に示す又とない機会となるはずです。また、同事業に対する残り10%の融資拠出は、それが環境社会に配慮した融資であることを示す最後の機会でもあります。

 これまで、国際協力銀行は年に2回の環境ミッションを行なうなど、問題の解決のため努力されてきました。今回、独立評価の実施に関して、国際協力銀行が問題の解決に向け、新たな一歩を踏み出されることを期待しております。篠沢総裁の良識あるご判断をお願いいたします。

以上

コルディリェラ民族連合(CPA)
アグノ川の自由な流れを取り戻す農民運動(TIMMAWA)
国際河川ネットワーク(IRN)
国際環境NGO FoE Japan  
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