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――中国内の経済格差の拡大――
私は植林して緑化することよりも、「緑化と人々の生活の関係を見たい」そして「こんな遠くまで来て行うNGO活動にどんな意義・意味があるのか」を知りたくて、このツアーに参加した。結論から言うと、前者については、「砂漠植林ボランティア協会」のやり方だと、地域住民の参加が得られ、経済的にも短期間で自立が出来る「森林農場方式」なので、持続可能開発・環境改善が出来ていると理解出来た。後者については、何故これをNGOがやらなければならないのか? 一体中国政府(中央および地方)は何をしているのか? そして日本のODAのお金は何処に行っているのか? 工業化優先、都市開発優先で、外国人が滅多に来ない僻地の、農民・牧民・林業には殆ど陽が当たってない、中国の政治のあり方に、大きな疑問を抱いて帰ってきた。
帰国途上に北京に4泊した。開発の凄まじさ、変貌の早さに、度肝を抜かれた。私はこの30年で10回以上北京に行っている。しかしその発展振りは右肩上がりと言うより、2次曲線に近い伸張で、バブルにならないかと心配するほどだ。北京だけを見ると、もう東京を追い越している、これだけの国力のある国に、もはやODAはいらない、と誰しも思うだろう。日本の国会も政府も、中国向けのODAは見直そうとしているが、当たり前だと思う。日本政府の見直し論議は、経済発展が済んだからODAはいらないと言っているのではなく、ODAの使い道に日本側の意図が取り込まれないことを問題にしているのですが。中国政府は世界銀行からお金を借りる時も、「お金を貸してくれ」とは言わず「お金を借りてやる」と言う態度です。つべこべ言うなら「お前からは借りない、貸したい国は山ほどある、そっちから借りる」と言います。中国は今、発展途上国の中で唯一、「貸したお金が確実に戻ってくる信用の高い国」だからです。
私は今年4月に雲南省に行き、ミャンマー国境に近い小数民族の村々を尋ねた。その時、知り合った日本語教師から、甘粛省通渭県義崗郷の極貧村のルポを頂いた。そして今回の内モンゴルの村を訪ね、少しずつ中国の貧困の実態が分かって来た。中国では戸籍を生まれた場所から他の市町村に移すことは原則出来ない。職業につくには戸籍証明が要り、勝手に戸籍の無い省に移動して就職することは非常に難しい。中国内陸部の村から、近くの都市への移動は出来ても、上海など急発展中の沿岸部の都市に移ることは出来ない。これが先ず、沿岸部と内陸部の大きな経済格差が解消出来ない壁だ。
もう一つは官僚主義、どうしても優秀な官僚は都市に配置され昇進のためには中央から大都市に予算が配分され、都市部の経済発展が優先される。(高級官僚は、前記の戸籍の場所の縛りがない)そして、たまたま地方に配属された役人は、自分が経済改革をしたとして実績以上の報告を中央にして、自分の昇進を図る。前記の甘粛省の村では、実態として村人1人当たりの年収が200-300元しかないのに、帳簿上は1338元となっている。(中国全体のGDP平均は6300元・1998年に対し、この村からの報告は1918元と。従って本当の1人当たりGDPは1/5の400元と言うことか。)これが政府予算の配分を歪めている第2の理由。
もう一つ、中国は体面を気にする。欧米のジャーナリストは取材では一般に奥地の農村には入れない。特にNGOなんかは公安に尾行される。前記のような数字は先ず入手不可である。情報統制が厳然と存在する。一方、我々の植林に行ったホルチン砂漠は、すでに日本人だけで26次植林隊まで350人もの人が入ったため、中国政府側も日本に実態が報道されるのを気にして、農村開発に重点的に予算を配分している。私が見た雲南省の奥地、そして聞いた甘粛省の村と比べこのホルチンの緑化重点地区は、格段に裕福に見える。勿論これは砂漠植林協会の菊池会長の10年来の努力の賜物でもある。
兎に角、中国の中の南北格差は、中国人自身もその拡大を認めている。しかしその理由は市場経済主義・グローバル化への移行には仕方のない痛みなのだと弁解する。NGOsの経済グローバル化への挑戦は、環境保護のみならず貧困救済・人権擁護との抱き合わせで、中国では必須な活動と思われる。しかし中国では、まだ政策提言型のNGOはいないようだ。グリーンピース北京に行ったが、所謂、公害防止・有害化学物質の広報・啓発・教育活動程度である。
今の中国経済の改革開放・WTO参加推進路線では、我々のホルチン砂漠での森林農園作りも、農業・牧畜業そのものがWTOの枠組み強化により、大規模化と大量生産体制を余儀なくされる過程で、大量の余剰人員が生じると、人々は行き場を失い、ますます貧困化するのではないか。今インドネシアなどで起きていることが中国でも起こるのではないかと懸念している。経済構造改革から縁のないような前記の極貧村は、村が丸ごと餓死してしまうのではないか。
経済のグローバル化を阻止して、地域内で自立・持続可能な経済に戻すか、あるいは究極の問題である人口抑制を強力に推し進めるか、国家規模での政策転換が必要と感じた次第である。話題があちこちに飛び、大きい問題と局部的問題との関連が分かり難くなってしまった事、容赦願いたい。
* もう1度、経済格差の数字に触れたい。上記のGDPの数字は貧困側は平均値の1/16 .逆算すると、金持ち側は16倍、10万元(日本円:150万円)となるが、年間収入では100万円程度で、今の都市部にはこの程度の人は沢山います。(因みに日本のGDP1人当たりは360万円、中国の40倍強となります。都市の大金持ちもまだ日本の平均値には追いついてないと言うことです。)この格差の計算は掛け算ですから、中国国内の貧富の格差は256倍と言うことになります。中国はもはやこの点では、共産主義とか社会主義では全くありません。
近い将来、この貧富の格差故に、地域紛争やテロが頻発するのでは、と恐れます。中国政府もこれを恐れて情報管制を敷いているのです。
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