南 の 島 の 楽 園 を 救 え 。 

気候変動問題:先進国政府はもっと深刻に受け止め、補償をするべきだ

昨今、南太平洋で温暖化の影響と思われる事態が頻発しています。
多くの島々で加速度的に強度と頻度が増したサイクロンや高潮が襲来し、人々はそれに伴って発生する食糧不足などの被害に困窮しています。
取り返しのない被害がもたらされている現在、それを引き起こしている先進国は緩和策強化を進め、自分達の引き起こした気候変動による被害の補償をしっかりと行っていかなければなりません。

パプアニューギニアのブーゲンビル島近くのカーテレットという環礁島群では、これまでは島で育ってきたタロ、パンの実などの作物が土地の塩化でもはや育たなくなってしまうのに加え、度重なる高潮の被害が重なり、住民2000人の移住をせざるを得ない状況のようです。
ヴァヌアツではテグアという島に住む40人の移住は避けられない事態となっていて、政府は移住を勧めようとしますが、その土地に愛着をもつ現地の人々は頑なに反対をしているようです。彼らは先進国が無知が原因で今まで行ってきた活動によって、先祖代々受け継いできた土地を奪われるという最悪の事態に瀕しています。

キリバスでは2月から4月にかけて、高潮が幾度となく首都タラワを襲いました。居住地区にまで海水が押し寄せ多くの家が浸水の被害にあってしまいました。私も現地で訪れましたが現地で活躍するNGO「FSP」の事務所周りが浸水してしまったという報道を見て、深刻さを受け止めました。FSPの事務所はかなりの内陸にあり、そこが浸水するということはほとんどの土地が浸水していると容易に想像できるからです。
ミクロネシア連邦のチューク州にある島も高潮に見舞われ、多くの家屋が崩壊し、被災者も出ています。

そして、日本と同じような土地条件を持つフィジーやサモアでもこれまで被害が累積的に増えてきていて、サモアでは今後100年間で実質住むところがなくなるという実情を知らされました。フィジーやサモアのような大きな島を持つ国でも気候変動の被害は小さな島々と同様に発生しています。
フィジーでは97年にエルニーニョ現象の被害が大きく出ました。世界銀行の試算によると、このときに被った被害は1億6500億米ドルにものぼります。

オーストラリア西岸付近にあるグレートバリアリーフでは今年の1月から3月にかけて海水温度が平年より2℃ほど上昇し、広範囲でサンゴの白化現象が発生しているといいます。また、クック諸島、タヒチ、フィジーなど南太平洋全体においてサンゴの白化は報告されています。
実際かなり控えめに言っても今後30年くらいでサンゴは全滅するという研究結果もあるほどです。

最近ツバルの環境難民問題がクローズアップされましたが、問題はツバルだけに留まらず、南太平洋すべての国々が影響を受けることは避けることができないようです。ひいて言えば、日本を含む全世界の国々が影響を受けるのが気候変動問題です。
それは地球の中で密接につながっている全ての要素が影響を受けることで発生します。食糧不足や水不足が発生したり、水不足や環境難民受入れ問題が国際紛争に発展することも十分考えられるでしょう。各国経済へのダメージが累積し、世界的な経済危機を引き起こしてしまう可能性だって充分あるのです。

また、今はあまり知られていない不確定要素によって突発的に気候変動が猛威を振るいだす可能性も否めません。例えば、海底に眠っているメタンハイドレードや高緯度の森林にある永久凍土はCO2の20倍以上も温室効果ガスの強いメタンを大量に含んでいて、これらがある一定の気温の高さに達した時に爆発的に溶け出して、これが温暖化を促進してしまうということを主張する学者もいます。

南太平洋が温暖化で沈むとよく言われていますが、実は世界中全てが影響を受けるのが気候変動問題なのです。
今、対策を講じて、気候変動を緩和することや、その悪影響に適応していくことが急務となっていますが、国際的なフレームワークはまだ動き出したばかりで今後の温暖化会議などでの早急な対応が必要となってきます。
こうした被害が気候変動によって起こっているならば、その対策に手をこまねいている時間的余裕はないはずです。
G8環境省会合でアメリカのホイットマン環境保護局長は議定書の代案として発表した温暖化ガスの自主規制策について、環境保護団体からの疑問を晴らすために、やるべきことはもっとあったと指摘しました。やはり、環境政策が充分でないという考え方はアメリカ政府内部にもあるようです。

実際に温暖化を抑制するためには60〜80%の温室効果削減を必要となってきますが、京都議定書は取り組みの第一歩としてとても重要なものですが、実施したとしても約5%の削減にしかなりません。しかも、京都メカニズムなどでその効果は相殺されてしまってほとんどないという意見もあるくらいです。

こうした中、先進国政府や各ステークホルダーは深刻に気候変動を取り巻く現状を受け止め、緩和のための政策をもっと推し進めるべきです。
そして、気候変動は主に先進国が引き起こしているという事実を踏まえ、被害を受ける人々がこれ以上の損害を受けないような対策に対して国際的な枠組みの中で資金提供をするなど気候変動によって被害を受けている人々への補償をしていかなければならないのです。
みなさん、そう思いませんか?

中島