誰が、その代償を払うのか?
サモアの温暖化対策担当者が悲痛に訴える。
「今実際にプロジェクトを進める資金が必要なんだ!もうこれ以上温暖化の被害を受けることは耐えられない!」
各先進国の温暖化政策担当者に聞かせてあげたい言葉です。
南太平洋の島々では温暖化の被害がもうすでに出ています。サモアやフィジーなどの大きな島からなる島嶼国でも15mほどの海岸の侵食が最近、急激に進んでいます。すでに内陸に移住した人たちもいます。
フィジーではこれまでなかったようなサイクロンが高潮を発生させ、社会インフラの集中するビチレブ島の西岸と東岸では多くの経済的損失が出ています。97年と98年に発生した史上最大のエルニーニョは、フィジーに1億6500万ドルの被害を及ぼしました。2050年頃には最大で年平均5200万ドルの経済的損失が及ぶと予測されています。
サモアでは沿岸地域に人口の約90%が住んでいます。最近行われた研究の結果によれば、現在人々が住んでいる土地は今後100年間で消えてしまうそうです。
平均海抜が2〜3mのマーシャル諸島やキリバスなどの環礁国は、気候変動によってより深刻な影響がもたらされるという地形的特徴をもっています。キリバスに至っては、2050年頃にはGDPの30%以上に当たる1600万ドルの損失が出る
といいます。
こうした国々では気候変動の影響に適応するための対策が早急に進められなければなりませんが、地形的特徴や資金の不足などによって対策をとることが困難となっています。このため、気候変動の被害が最も早く、かつ深刻に起きて
しまいます。
この代償は一体誰が払うのでしょう?
当然、今まで大気という地球の共有財産をほぼ占有し、汚染しつづけた先進国なのではないでしょうか?
アメリカは今年の2月14日に独自の温暖化対策案を発表しましたが、内容は単に現行の増加基調(過去10年で約13%排出増)を維持するという大変お粗末な内容でした。ちなみにアメリカがこの独自案の“削減目標”を守れたとしても、90年の排出量を基準に考えると、7%削減するという京都議定書の目標と比較して、約37%も温室効果ガス排出量が増えることになってしまいます。
日本も京都議定書の批准は行うと決定したものの、議定書削減目標達成のための国内対策に多くの欠点があります。しかし、まず最初の第一歩として、京都議定書に則って温室効果ガス排出を削減すること、そして、気候変動枠組み条約に明確な記述のある途上国への支援義務を遂行し、気候変動の影響に適応するための対策がなされるよう、先進国は技術的、経済的支援をしていかなければなりません。
先進国の温暖化政策決定者に訴えたい。「どうか、南太平洋の人たちの境遇を深刻に受け止めてください」と。
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