日本政府にトルコの原発への支援中止を要請


プレスリリース
2000年3月16日

 2000年3月16日(水)、国会議員、NGOは日本政府が、トルコのアックユ原発への「通産省の貿易保険」および「国際協力銀行の出融資」を行わないよう要請しました。

 現在トルコで計画中のアックユ原子力発電所建設に関しての日本政府支援に関して懸念を抱くものとして、ご連絡させていただきました。

 ご承知のように、東海村での原子力発電関連施設による安全管理の問題は、改めて原子力発電の安全管理の難しさを世界に示したものといえます。ところが、このアックユ原子力発電所には3つの国際企業グループが入札を希望しており、日本からも日立と三菱が入札に参加しています。今週末の3月10日には国際入札の結果が発表される予定になっておりますが、日本政府から貿易保険、輸出信用といった支援が通産省貿易保険や国際協力銀行から出されることが考えられます。私たちは、日本と同じく地震大国であるトルコにおける安全性の問題や核兵器拡散の問題、深刻な人権侵害が問題となり政治的に非常に強圧的なトルコにおいて、原子力発電所建設が進められることに非常に大きな懸念を抱いております。こうした問題を鑑みてドイツ政府は今年の1月、ドイツの輸出信用機関であるヘルメス信用保険会社(Hermes)がアックユ原子力発電所に関するシーメンスへの輸出信用を認めないとの発表を行なっています。また、国際入札に参加しているアメリカ、カナダ、フランスでもアックユ原子力発電所に政府としての支援を行わないよう市民・NGOによる働きかけが行われており、国際的に大きな非難を浴びているプロジェクトなのです。

以上

添付資料:トルコ、アックユ原子力発電所建設計画に関する申し入れ

この件に関するお問い合わせは:
地球の友ジャパン、国際金融と環境プロジェクト

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E-mail: finance@foejapan.org
https://www.foejapan.org


2000年3月16日

内閣総理大臣 小渕 恵三 殿
大蔵大臣 宮澤 喜一 殿
通商産業大臣 深谷 隆司 殿
国際協力銀行 総裁 保田 博 殿

トルコ、アックユ原子力発電所建設計画に関する申し入れ

 貴職におかれましては益々ご活躍のこととお喜び申し上げ、敬意を表します。さて、このたび私たちは、トルコのアックユ原子力発電所建設に懸念を抱くものとして、内閣総理大臣他皆様の御見解を賜りたく、申し入れをさせていただく次第です。ご承知のように、東海村での原子力発電関連施設による安全管理の問題は、改めて原子力発電の安全管理の難しさを世界に示したものといえます。我が国では、3月10日に発表される予定のトルコ、アックユ原子力発電所建設へ国際入札に関して政府としての支援を行うべきではないと考えます。このアックユ原子力発電所には以下のような懸念があげられております。

1.地震による安全性

 トルコは日本と同じく非常に地震の多い国で、多くの活断層が走っています。しかし、原子力産業とトルコ政府はアックユでの地震による本当のリスクを知らせることを拒んでいます。政府はアックユは地震地帯ではないと主張していましたが、1987年から1990年にかけての新しい調査では、アックユは地中海へ向かってキプロスへと延びている活発な活断層から、わずか20キロメートルしか離れていないということがわかっています。地震による原子力発電所の事故の可能性について考えると、周辺住民にとっても再生可能エネルギーへの支援が優先されるべきです。

2.原発の安全管理体制と経済性

 原子力発電は、破滅的な事故やいまだに解決されていない放射性汚染物質管理の問題といったリスクを含む、深刻な安全性や環境問題を抱え非常に大きな危険を伴う技術です。本当に持続的なエネルギー問題を解決できるのはエネルギー効率の向上や再生可能エネルギーという選択です。トルコでは天然ガスパイプラインの使用が可能で、日本とは液化と輸送にかかるコストの条件が異なり、経済的にも新しいコンバインドサイクルのガス火力発電所のほうがコストが安くつきます。

3. 核兵器の拡散

 "平和的"といわれる原子力発電所は、プルトニウムの生産や機密情報・技術・物質の移転などを通じて核兵器の拡散に貢献する可能性があります。1991年、アメリカ政府はトルコにアルゼンチンから原子炉を購入しないようにプレッシャーを与えました。というのは、プルトニウムを使った核爆弾を製造する危険性があると感じたからです。トルコは核兵器の開発ができない核不拡散条約の署名に合意していません。

4. トルコでの人権侵害

 本来、深刻な人権侵害のある国との貿易は制限されるべきです。トルコは組織的な政治犯の拷問や殺人、軍隊による弾圧、特殊部隊による殺人や誘拐、言動の自由の制限、法的な手続きなしで外部との連絡を断たれる拘留など、人権侵害の長い歴史があります。200万人もの人々が強制的に移住させられたクルドの南東地方では、いまだに政府の軍事的な法が優勢を保っており、クルド語の使用は法的に制限されています。人権侵害はトルコ政府がEUに加盟するためのもっとも大きな問題となっています。

5.ドイツ政府は支援を不許可

 ドイツ政府は今年の1月、ドイツの輸出信用機関であるヘルメス信用保険会社(Hermes)がアックユ原子力発電所に関するシーメンスへの輸出信用を認めないとの発表を行なっています。また、国際入札に参加しているアメリカ、カナダ、フランスでもアックユ原子力発電所に政府としての支援を行わないよう市民・NGOによる働きかけが行われており、国際的に大きな非難を浴びているプロジェクトなのです。

 今ならまだ間に合います。手後れにならない前に、上記の点を十分に御考慮いただき、トルコのアックユ原子力発電所への日本政府からの支援を行わないよう宜しくご検討ください。東海村の悲劇を二度と引き起こさないためにも、ぜひ宜しくお願い申し上げます。