国際協力銀行のフィリピン・サンロケダム融資
「続く地元での反対運動にもかかわらず融資一部実行」



プレスリリース
1999年12月14日

 9月22日の役員会で融資再開、新規融資承認が決定された日本輸出入銀行(当時)のフィリピン、サンロケダム融資の一部が実行されていることが明らかになった。12月9日付マニラ・ブレティン紙によると、国際協力銀行はさらにフィリピン電力公社向け追加融資4億ドルのうち2.1億ドルを今月にも実行予定。フィリピン電力公社社長のフェデリコ・E・プノ氏は、先月すでに国際協力銀行から融資実行についての知らせがあり来週にもその金額が確定しそうだと話している。国際協力銀行は11月中旬に現地へのミッションを派遣しており、ここで融資実行に向けての何らかの確認が行われた可能性もあるが、その報告は明らかになってはいない。

 しかし、こうした動きと裏腹に地元でのサンロケダム計画の見直しを求める動きは益々活発化している。というのも、プロジェクト推進側(サンロケパワー社、フィリピン電力公社)と地元住民の間でいまだにダム建設による地元への社会的・文化的・環境的影響についての認識が大きく乖離しており、その溝が埋まらないままにダム建設工事は30%まで進んでしまっているからである。

 こうした地元での活動の盛り上がりを受けて、11月16日、バギオ(サンロケダムの上流部ベンゲット州の中心街)でサンロケダムについての円卓会議の場が持たれた。会議には、イトゴン市副市長のカトウ氏、フィリピン環境天然資源省、サンタナイ・シャルピリップ先住民族運動代表、地元ジャーナリスト、ベンゲット州議会議員、コルディリエラ民族同盟の事務局長らが参加し、サンロケダムに関わる主要なメンバーが顔を合わせて意見交換を行う機会となった。サンロケパワー社副社長カニングハム氏も参加予定だったが、当日国際協力銀行ミッションとの会合があり参加できなかった 。

 イトゴン市副市長のカトウ氏はこの円卓会議の後の記者会見で、堆積や流水域管理計画、先住民族の土地の権利などについての問題が解決されていないとして、11月に入って訪れた国際協力銀行のミッションに対して、これらの問題が解決されるまで融資実行を行わないよう要請していると発表した。さらにカトウ氏は「融資が実行される条件は整っていない」とし、「フィリピン政府が問題解決のために適切な行動計画を提示できないようであれば、サンロケダムは受け入れられない」と話したが、国際協力銀行報道課速川氏によると、カトウ氏は国際協力銀行にそのような話はしていないとのこと。現在、国際協力銀行が再度カトウ氏に事実確認を行っている。地元政府の動きとしては、イトゴン市のあるベンゲット州もダムプロジェクトに反対する地元住民を支持するとの声明を今年4月に発表している。

 さらに、サンロケダムへの国際協力銀行への融資は、10月5日付で出されたフィリピン環境天然資源省によるダム建設工事の停止命令でも、実行を見直さざるを得ない状況に追い込まれた。停止命令の出されたダム下流部のパンガシナン州で行われているダム建設資材のための採石作業は、輸銀の融資再開前から地元政府関係者等によって洪水被害の拡大や予定外の土地での採石作業による環境破壊、先住民族の土地の権利などの問題が指摘され、問題が解決される前に融資を承認するべきではないとの意見が出されていた。この停止命令は現在解除されているという国際協力銀行側の説明だが、地元紙によるとパンガシナン州の採石事業によって影響を受けた地元の先住民族に正当な補償が支払われておらず、地元住民とフィリピン電力公社の間で緊迫した雰囲気が続いているという。地元グループでは、こうした地域への利益を十分に考慮しないまま進められる、海外の民間企業主導型大規模プロジェクトの合法性を問う裁判の準備も進められている。

 サンロケダム建設において、プロジェクト推進側が影響を受けると認識していない人々はプロジェクトに関する十分な説明や協議、補償の対象となっておらず、一方的に工事が進められてしまっている。大型ダムプロジェクトによる地元住民とプロジェクト推進側の対立は、何十年にもわたって繰り返されてきた問題である。国際協力銀行はこうした問題を先送りして融資を実行するのではなく、認識の乖離を早めに埋めてとり返しのつかない事態が起こる前に問題解決の道を探ることが求められている。

 このフィリピン、ルソン島北西部のアグノ川上流で建設中のサンロケダム(345MW)は、発電、灌漑、水質改善、洪水制御を目的とした多目的ダムで2004年に完成予定。丸紅や関西電力が出資するサンロケパワー社が、25年のBOT方式で発電部門を担うことになっており、これまでに国際協力銀行が5億ドルの融資を承認している。

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