ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
最新情報(2001.6.12)

イースト・アフリカン・スタンダード

East African Standard

大統領、ダム支持議員を大臣職に任命

【ケニア】 ナイロビ   2001612

モイ大統領は昨日、論議を呼んでいるソンドゥ・ミリウ水力発電ダム事業について、建設地ニャンザのルオ地区選出の国会議員に対し、事業に協力的な4人に報奨として大臣職を割り当てたと発表した。

野党党首のライラ・オディンガ議員はエネルギー担当大臣に、ダム建設が進むニャカチ地区選出のピーター・オドヨ議員は外務大臣に、水質が汚染されるミリウ川下流の地区のアドフ・アウィティ議員は開発計画大臣に、それぞれ任命された。このようにケニアでの内閣組織は、いわば政府の政策の宣伝材料として使われることが少なくない。

与党のケニア・アフリカ人国民同盟(KANU)の組閣に野党党首が加わるのは、1963年のイギリスからの独立以来初めてのことであり、国内では大きな驚きの声が上がっている。

こうした一連の動きは、日本政府側から様々な条件が出されて現在見直し対象となっているソンドゥ・ミリウ事業への追加融資を、続行させるための流れと見られている。新しく任命されたライラ、オドヨ、アウィティの3大臣は、1997年の総選挙で選出された政府および地域の代表として、近々来日し融資続行を求める構えだ。このことにより、日本政府はケニアの一部の市民団体と住民が引き起こした無意味なさざ波との対応に、終止符を打たざるを得ない厳しい立場に追い込まれることとなる。

ソンドゥ・ミリウ事業の第U期融資中止に向けた動きは、2002年に予定されている総選挙および大統領選に関連したものだとの見方もある。ケニア・アフリカ人国民同盟はキティとソンドゥ・ミリウ水力発電事業のPRのためにすでに裏金を通して得た政治資金の多くを使い果たしており、彼らの生き残る道は日本からの追加融資以外にはない。1997年に国民同盟はケニア電力と照明設備会社から90億ケニア・シリング(約225億円)にも上る不正な政治献金を受け取っている。それが原因で当の照明設備会社は、ケニア電源開発公社からの融資を返還できなかった。このことで、国民同盟は世銀からの資金に支えられている国内のエネルギー業界から手を引くことになった。1992年、国民同盟は新しくできたトーマス・デラルー造幣所のPRのために大量に紙幣を発行、その後の長引く不況を引き起こした。

今回ライラ議員が政府に加わったことにより、ライラ氏率いる野党は与党と同様の政治資金基盤に頼ることになる。つまり彼らにとっても、ソンドゥ・ミリウ事業を成功させることが唯一の希望だ。現在事業は第2期工事に入っているが、日本からすでに融資を受けた第1期での立ち退き住民への補償事業はまだ済んでおらず、ケニア電源開発公社の事業遂行能力に対し疑問の声も上がっている。

いっぽうで駐ケニア日本大使館の青木大使は、財政面・環境面での追加調査が為されるまでの間、事業への追加融資を一時中断すべきだとする市民団体との対立を深め、泥仕合の様相を示している。

昨日の新聞記事の中で、大使は次のように語っている。

 

「私は謝罪しない」日本大使、市民団体に宣言

オチエン・オゴド

駐ケニア日本大使の青木盛久氏は、昨日ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に異議を唱える市民団体に対し、一切謝罪しない方針を明らかにした。氏は市民団体側から仕掛けられた“戦争”により、事業が大きな混乱をきたしている、と指摘している。いっぽう市民団体側も、事業に関する誤った認識を与えたとして、青木大使を非難している。

ニャカチ地区の元国会議員であるデニス・アクム氏率いる市民団体側は、不必要な警告を発してパニックを国内に招いたとして、青木大使に謝罪を要求している。

こうした市民団体側からの圧力により事業が政治課題化し、その結果田中真紀子外相による経済協力の面からの事業の見直し発言につながった、と大使は説明する。彼は、市民団体側の運動により、汚職と環境破壊の両面からケニア国民の多くがこの事業に反対している、との誤った印象が造られたと述べている。また日本政府はケニア政府の債務支払い能力に疑問を持っており、それが第2期事業融資の見直し案につながっている、とも語った。

 

 

 
 

 

  →→このプロジェクトに関するトップページに戻る