ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
10月18日の質問に対する内閣からの答弁書(11月13日)

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内閣衆質一五三第三号

  平成十三年十一月十三日

内閣総理大臣 小泉 純一郎

参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員 櫻井 充君 提出

  ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 参議院議員 櫻井充君提出
      ソンドゥ・ミリウ水カ発電事業に関する質間に対する答弁書

           

一及び九について

一般に、円借款の供与は被援助国からの要請を受けて実施するものであり、ソンドゥ・ミリウ水力発電計画(以下「本件計画」という。)についても、被援助国であるケニア共和国(以下「ケニア」という。)からの円借款供与の要請を受けて、我が国としてその必要性等を検討した結果、平成91月に本件計画の第1期分への円借款供与に係る交換公文を締結したものである。また、現在、ケニア側の環境、社会面での取組及び債務償還可能性について我が国として確認することを前提として、第2期分への円借款供与に係る交換公文につき署名の準備を進めているところである。

円借款は、被援助国からの返済を前提とする援助形態であり、被援助国の債務返済可能性を含む経済状態に配慮した上で供与を決定すべきことは当然である。一般に、ある国の将来の債務返済可能性を予期するには、当該国のマクロ経済動向や輸出入の推移、その前提になる世界経済等の動向等、様々な不確定要素を総合的に勘案することとしているほか、国際通貨基金や世界銀行といった政府や国際協力銀行以外の機関等が行った当該国の経済に関する分析等をも参考としている。ケニアの債務返済可能性に関しても同様であり、第2期分への円借款供与に際して、国際機関等の判断、すなわち、経済の安定化を図るための貧困削減減免措置を実施することについて国際通貨基金がケニアと合意していること、債務削減に至らない条件での債務繰延べについて債権国側がケニアと合意していること等も踏まえて検討することとしている。このように、我が国としては、ケニアの債務返済可能性について、様々な角度から総合的に判断しており、ケニア側の主張のみに依拠しているわけではない。

二について

ケニアにおいては、電力の供給不足のため計画停電が日常的に実施されている状況にある。本件計画は、ケニア西部のソンドゥ川から取水の上、流れ込み式発電所に導水し発電することにより、このような状況の改善に資するものであり、また、安定的電力供給の確保及び水力資源活用による石油購入外貨の節約等の効果が期待され、本件計画を実施する地域の住民を含め、広くケニア国民の利益になるものと考えている。

三について

マウ森林は、ケニアの国内法の基づき、同国の天然資源省森林局によって管理されており、御指摘の「森林破壊の問題について現地調査や科学的な検討」は、ケニア側において、実施の要否を含めた検討が行われるものと考えている。

なお、ソンドゥ川には複数の源流があり、マウ森林入植計画予定地を通過するのはそのうちの一部であること等から、現時点において、マウ森林における入植や樹木の伐採により本件計画に影響が及ぶ可能性が高いとの予測は有していない。また、マウ森林をめぐる状況については、今後、入植計画の帰趨も見つつ、関係機関において、調査及び検討が行われるものと考えているが、我が国としても、関連情報の収集に努めるとともに、必要に応じ、ケニア側に適切な対応を促す考えである。

四について

本件計画についての事業実施機関であるケニア電力公社は、土木事業の実施前から、本件計画の内容に加え、ソンドゥ川の水の発電所への転流や放水路を通じての複流による流量変化、住民の移転や一部の土地の収用に伴う住民の生活への影響、ソンドゥ川の渡し船事業への影響等に関する説明を地域住民に対して行ってきており、これらの影響に対しては、補償方法や補償内容等についての関係住民との協議及び交渉を経て、その補償手続きはほぼ終了していると承知している。また、事業実施機関は、今後とも定期的に地域住民との対話を行っていく予定であり、住民の移転後の生活状況について、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、非政府組織(以下「NGO」という。)及び有識者から構成される本件計画に関する技術委員会(以下「技術委員会」という。)での議論等を踏まえ、モニタリング及び評価を実施していくものと承知しており、我が国としても事業実施機関に対して適切な対応を促していくこととしたい。

五について

国際協力銀行は、平成86月に本件計画の審査を行った際、本件計画が移転住民の移転後の生活や生活手段喪失者の生活にも配慮したものであることを確認したと承知している。そして、事業実施機関は、住民の移転や一部の土地の収用に伴う住民の生活への影響及びソンドゥ川の渡し船事業への影響に対し、補償方法や補償内容等についての関係住民との協議及び交渉を経て、補償手続きをほぼ終えており、国際協力銀行としてもその過程を注視してきたものと承知している。

今後とも、国際協力銀行は、御指摘の「円借款における環境配慮のためのJBICガイドライン」の趣旨を踏まえ、事業の推移を注視しつつケニア側に対して適切な対応を促していくものと承知している。

六について

発電に必要な流量を確保できるのが「雨季の6ヵ月だけである」とする御指摘がいかなる根拠に基づくものか明らかではないが、本件計画は、発電のための転流によってソンドゥ川の河川維持が害されることのないよう必要な河川維持水量を確保しつつ、流量が少なくなる乾季も通じてソンドゥ川の季節的な流量変動に応じた発電を行うものである。

御指摘の「発電容量の見直し」とは、今後事業実施機関により河川維持水量の見直しが行われることに伴い、発電量にも影響が及ぶことを指すものと思われるが、仮に現在の計画上の河川維持水量が変更されたとしても、過去の季節的な流量変動等にかんがみれば、その程度が大幅なものになることは想定されず、発電量に与える影響は限定的であると見込まれるので、本件計画の経済性は確保し得るものと考えている。

七について

本件計画の完成後に発電される電力は、ケニアの全国送配電網を通じてケニア全国の作業及び生活用の電力として供給されることとなっており、特定の産業や生活用への電力配分量があらかじめ決められているわけではないと承知している。河川流量の変動に伴う発電量の変動がケニア全国の電力需給バランスに与える影響については、他の発電所の発電量を変化させること等により調整されるものと承知している。

八について

本件計画においては、過去約40年間の日ごとの実測流量を基に年間発電可能量が算出されているが、月ごとの発電計画は策定されていないと承知している。

また、本件計画の第1期分に供与された円借款については、半年賦、金利23パーセント、償還期間30年(10年の据置期間を含む。)での返済が予定されている。

十について

技術委員会は、平成131月に現地の事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者が参加した対話集会における決議を受けて設立され、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成されていると承知している。技術委員会の現委員長は、事業実施機関から選出されているが、これは、事業実施機関が本件計画実施に係る責任主体であること等にかんがみ、最初の技術委員会において出席者の協議を経て決定されたものと承知している。また、その後も技術委員会において出席者の構成について検討が行われ、必要な構成員が追加されたと承知している。

我が国としても、技術委員会が本件計画の円滑な実施のための重要な討議の場であると認識しており、既にケニア側に対し、技術委員会の組織及び運営について、地域住民及びNGOの意見を十分に吸収するとともに本件計画の実施上の問題点に対応するとの観点から最も適切な形態のものとなるよう要請を行っており、また、第2期分への円借款供与に係る交換公文につき署名の準備を進めるに際しても、今後とも技術委員会の有効性及び公平性が確保されるよう要請を行ったところである。

十一について

御指摘の「より詳しい会計資料」が具体的にいかなるものを指すのか明らかではないが、円借款により実施される本件計画においては、契約企業が行う仕事の出来高等についての対価の支払請求に関し、契約発注元である事業実施機関が当該支払請求の内容を精査し、国際協力銀行がその結果を確認するところ、その過程における支払請求書類等においては、支払日や支払金額といった契約企業の事実上の信用に係る情報、工事や調達の単価など契約企業の競争力に係る情報等が含まれており、このような情報を公ににすることは当該企業の正当な利益を害するおそれがあることから答弁を差し控えたい。

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