ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
同事業に関する内閣への質問主意書(6月29日)

→→この質問主意書に対する内閣の答弁書をみる

→→保坂展人衆議院議員の再質問主意書(6月29日)をみる

2001年6月29日

ケニア共和国ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問主意書(再提出)

提出者  首藤 信彦

 現在、ケニア共和国西部キスム地方のソンドゥ川において流れ込み式の発電所、ソンドゥ・ミリウ水力発電建設事業が進んでいる。このプロジェクトは環境面の悪影響、工事の過程における人権侵害、様々な形で露見している腐敗などにより現地、および国際社会において激しい批判を受けている。

 首藤信彦は5月23日、質問主意書において本事業の問題点を指摘した。さらに、2001年6月1日、衆議院外務委員会において本事業の見直しの必要性を指摘した。これを受け田中真紀子外相は、円借款は相手国の債務負担能力を含む経済状況に配慮した上で供与を決定すべきであり、精査が必要であると述べるなど、本事業、さらに他のODA案件についても見直しが必要との認識を述べられている。

 政府は有償資金協力課長をケニアに派遣し、現地サイトの視察、地域住民、NGO及び青年海外協力隊隊員からのヒアリング、及びケニア政府関係者などとの意見交換を行ったと聞いている。今後残された検討課題について、政府としてどのように取り組んでいくのかについて明らかにされる必要があるとの視点から、以下質問する。

 

一. 日本政府、国際社会とも本件の見直しに着手する方向で合意し、再検討を始めたにもかかわらず、6月25日の参議院決算委員会で田中外相は本件の見直しには慎重な態度で臨むべきとの発言があった。田中外相が態度を急変させた理由について政府はどのような認識を持っているのか具体的に述べられたい。

 

二.新聞報道、現地駐在日本人の証言によれば、田中外相によって事業の見直しの必要性が述べられた後、在ケニア日本大使館青木大使は「一部のNGOや政治家のせいで本事業が中止になった」等、不用意な発言を繰り返し、現地を混乱に陥れた。青木大使の発言は外務省による指示・指令等を反映するものなのか。もし、そうでないとすれば、このような事態を招いた責任をどのような形で取るべきなのか。政府の見解を述べられたい。

 

三. 政府による6月16日から20日までの現地視察について

 政府は6月16日から20日まで外務省担当課長をケニアに派遣し、現地サイトの視察、地域住民、NGO及び青年海外協力隊隊員からのヒアリング、及びケニア政府関係者などとの意見交換を行ったと聞いている。

(1) 現地視察は、具体的にどの場所でどのような方法で行ったのか。詳細に示されたい。

(2) 地域住民のヒアリングはどのような人々を対象とし、どのような手法で行ったのか。また、その選定は何を基準にしたのか。具体的に示されたい。

(3)NGOとのヒアリング内容について詳細を示されたい。また、具体的にどのようなNGOが参加していたのか、リストを提出されたい。

(4)青年海外協力隊隊員からヒアリングを行ったとのことだが、どの地域のどのような職種の隊員から話を聞いたのか。

(5)ケニア政府関係者などとの意見交換内容について議事録を提出して頂きたい。

(6) 一連の視察を元に日本政府としてケニア政府にどのような働きかけをしたのか。

(7) 現地NGOによって提出された視察団への要望書に対してはどのように対応したのか。具体的な説明を頂きたい。

 

四.国際協力銀行の環境社会調査ミッションについて

(1) 2001年2月26日から3月2日までの国際協力銀行の環境社会調査ミッションの調査報告書を公開していただきたい。

(2) この調査ミッションの結果を元に、国際協力銀行として新たにどのような働きかけをしたのかについて示されたい。

 

五.技術委員会の報告書について

 当方が提出した質問主意書に対する回答の中で、技術委員会から本件計画の係る環境社会問題について報告書が提出される予定であり、我が国としては報告書の内容を精査すると共に現地の状況を注視し、ケニア側に対し適切な対応を行っていくとの回答を頂いている。

(1)2001年6月7日に技術委員会が提出した報告書を公開して頂きたい。また、現地においては一度配布された報告書は訂正のために全て即座に回収されたと聞いているが、その理由は何か。具体的な理由を述べられたい。

(2) 報告書に基づいた問題解決のための実施体制はすでに整っているのか。整っているのであればその内容について示されたい。また、その予算措置についても示されたい。

 

六.事業に伴う社会環境影響への緩和策について

2001年6月16日に国際協力銀行ナイロビ事務所において、日本政府視察団とNGOとの会合が持たれたと聞いている。その中で、NGOは事業における社会・環境配慮等における要望書を提出している。要望書の中で、NGOは当初の事業内容と実際に進行している現事業内容との矛盾について指摘している。

(1)1993年に出された環境影響調査書の問題点を開示されたい。また、それを受けてどのような対策を取ったのか。詳細な説明を頂きたい。

(2)ソンドゥ・ミリウ水力発電事業建設に伴い、取水堰から下流のソンドゥ川の水量が大幅に減少することになるが、これに伴う地域への水供給プロジェクトの進捗状況について示されたい。

(3)ソンドゥ川の水量変化に伴って、河川の状態に応じた発電所の操業抑制が検討されているとあるが、この計画について事業者と地域住民の間で河川水量維持を確保するための具体的な契約などは行われているのか。

(4)2001年6月20日付のネイション紙によると、「ケニア、エネルギー省のライラ オディンガ(Raila Odinga)大臣は『日本政府はプロジェクト完了後、さらに学校や保健施設の建設を行う予定』と話した」と報道された。これは事実なのか。確認されたい。

(5)「ソンドゥ川はこの地域(ビクトリア湖集水域)の南東部のマウ森林に水源を発し、ウィナム湾に流入する(85年JICA, F/Sより)」が、水源確保のためにどのようなマウ森林の保護対策が行なわれているのか。

 

七. 経済面についての客観的な評価及び第三者によるチェックについて

 田中外務大臣は2001年6月6日、衆議院外務委員会で「客観的な評価というものをしてまいりたい」、また「第三者によるチェックということをおっしゃいました。私もまさしくそう思っています。(中略)国だけがやるのではない、そういうことが結果的には正しいチェックにつながると思います」と発言している。

(1)ケニアの経済状況に関し客観的な評価を行う必要があると考える。ケニア政府の債務負担能力について再度客観的な評価を行うために、政府や国際協力銀行以外のNGOや学識経験者を含む第三者が参加すべきであると考えるが、債務持続性分析(debt sustainability analysis)を行う場合、どのような方法で行うのか具体案を述べられたい。

(2)これまでに債務持続性分析が行われているのであればその調査報告書を示されたい。

(3) 事業効果の実行可能性分析について第三者による調査が行われる予定はあるのか。

 

八. 第2期工事への借款について

(1) 前回の当方が提出した質問主意書の中で、「フェーズ2に対する105億5400万円の借款供与は具体的にどのように使われる予定なのか、項目ごとに支払相手及び金額を示されたい。」と質問したが、6月16日に受け取った答弁書の中にはこの質問への返答がなかった。項目ごとに支払相手及び金額を示されたい。

(2)環境への悪影響が避けられない本事業に対し、環境特別金利が適用されるには何故か。水力発電事業であるという以外の根拠を示されたい。

右質問する。

  →→このプロジェクトに関するトップページに戻る