サンロケ報告 2000年8月2日


●上流の先住民族の土地所有権
サンロケダムの上流にあたるダルピリップとアンプカオ(特にアンプカオ)の数家族に対する補償と土地所有権の問題が未解決のままである。フィリピン電力公社(NPC)と影響を受ける家族との間に土地価格に関して合意がみられず、また、調査を進めたり、コミュニティーの土地手形(land paper)を処理するだけの資金がないため、アンプカオの被影響地の支払価格問題は障害に突き当たっているのだ。 大きな問題の一つは、土地所有権である。契約人の中には、幾つかの法律のいくつかの側面で互いに対立を抱えているものもいるため、国家先住民族委員会(NCIP)は影響を受ける家族の土地手形を処理できないでいる。大統領府がすでにアグノ川上流域資源区域を宣言しているので、NCIPとNPCはこの問題を解決しなければならない時期にきている。この宣言は土地住民の権利を侵害することになるので、ベンゲット州委員会はこの宣言に抗議することにしている。
もし所有権が認められないならば、土地を売ることになるアンプカオ(イトゴンのバランガイ)の住民は、NPCの低い支払価格で解決を迫られる可能性がある。 彼らの土地売却に対する合意撤回が論点である。これらの問題を解決しようと、大統領府の役人がバギオにやって来た。彼らは10月までにこの土地の支払問題にめどをつけなければならないと語っている。 NPCは、1960年代以来ビンガダムとアンブクラオダムによって所有地を破壊されてきた補償申請者に対して、まだ全額を支払っていない。彼らは今日までに補償を受け取っていてしかるべきではないか。こんな杜撰な状況で、NPCがどうやって何百万ペソもの補償をビンガダムとアンブクラオダムの被害者に払うことができるだろうか。

●上流の堆積
また、サンロケダムの社会環境影響についての追加調査を行ったWoodward Clyde コンサルタント会社のレポートによると、ビンガダムは2013年までに、アンブクラオダムは2032年までに堆積物でいっぱいになってしまう。現在あるアグノ川沿いのダムでは過度の沈殿が進み、サンロケダムへの水や堆積物の流れに影響を及ぼすだろう。フィリピン天然資源省(DENR)とNPCはこの予期されている問題を調査するため、別の団体を創設した。これは非常事態である。Woodwardコンサルの調査結果によれば、「沈殿のレベルは近年下がってきており、実際に二つのダムの現状に資しているのは、1990年の地震直後に堆積物の産出量が急増したことである。」

●イトゴン市の17ヶ条
イトゴン・バランガイ連合(IIBA)は、サンロケ多目的ダム対策委員会の行動計画として設定された17の条件に関して、これまでの姿勢を変えていない。実際に何かに支障をきたしたことはないが、この一部は土地手形の処理や土地の支払に関して障害になる。第11回フィリピン国会でSulpicio議員が提出した下院決議は、サンロケプロジェクトによる環境への影響を調査するよう環境委員会に促したが、イトゴンの17ヶ条もこの中に含まれている。我々はこの事に関する会合を議会から通告されてもいい時期にきている。この決議は7月に公表されている。

●アグノ川流域の水銀汚染
また、パンガシナン州政府はパンガシナン住民によってあげられた問題を調査するためにサンロケ特別チームを創設した。 テレビ報道された最近の問題の一つに、イトゴンで産出される鉱山くずによるアグノ川流域の水銀汚染がある。これは特別チーム長であるMelecio教授によって報告された。彼はまた、SRPCがナラ・バランガイの土地1200ヘクタール中、総計100万立方メートルを借用するだろうと報告している。

●アグノ川流域の洪水問題
現在、パンガシナン州の多くの市で最近起こった洪水に関しても調査を進めている。Melecio教授によると、ビンガダムとアンブクラオダムから放出されている水量は、NPCの定めた許容量を超えているということだ。パンガシナン州はLuzon中心の洪水の多い地域である。ビンガダムとアンブクラオダムからの放水量がさらに増加すれば、パンガシナン州住民はなおさら洪水に苦しむことになるだろう。 フィリピンの全国紙インクワイラー紙(7月6日)などによると、ダムが放水したためにパンガシナン州で水害がひどく、その一部アンブクラオダムはスパイラル・レベル752m に対し水位が 750m、ビンガダムはスパイラルレベル575m に対し水位が573mのところまで来たのでそれぞれ水門を開いた。アンブクランダム、ビンガダムは、サンロケダムの上流部にあるダム。こうした記事を見ると、サンロケダムは洪水対策として本当に有効なのか、大きな疑問だ。

●灌漑設備
灌漑及び流水域管理計画の予算に関しては、まだフィリピン政府の一部からの明確な約束が得られていない。提案はあるが、実際の約束にまで至っていないのだ。

以上

担当者より:今後、現地の新聞報道等も定期的にホームページで紹介できるようにしたいと思っています。ご期待ください。また、ご質問、ご提案などがあればメール(finance@foejapan.org)かお電話(03-3951-1081)、ファクシミリ(03−3951−1084)でご連絡ください。