サンロケ多目的ダムプロジェクト
先住民族権利法の実施細則について(10.12.2001)

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先住民族権利法(IPRA)のFPIC実施細則について

はじめに

現地のNGO CPACordillera Peoples’ Alliance)が20011012日に作成した”THE SAN ROQUE DAM PROJECT AND THE RIGHTS OF INDIGENOUS PEOPLES AS PROVIDED FOR IN REPUBLIC ACT 8371”では、IPRAIndigenous Peoples’ Rights Act)におけるFPIC Free, Prior, Informed Consent)の実施要件、およびFPICが実施されなかった場合の対処の仕方がどのように定められているか、について述べられています。

以下では、上記資料より該当部分を抜粋し、和訳します。

 

IPRAにおけるFPICの実施要件

IPRA実施規約(Implementing Rules and Regulations)のRuleIV, PartIIIには、次のFPIC要件が定められている。

1) 5条は、提案されている政策、プログラム、計画ないしは活動に関する合意形成の基本要素を定めている。

a)当該先住民族共同体の構成員全員に対して、情報を行き渡らせること

b)慣習・伝統にしたがって適切とみなされるような集会による論点の評価

c)長老による明察(discernment)および最初の決定(initial decision)

d)長老の決定に対する当該共同体構成員全員の支持(affirmation)

2) 同条は、また、提案されている政策、プログラム、プロジェクト、計画ないしは活動に関する最低限の要件を定めている。

a)招集される各会合、どの会合についても、2週間前には事前通知あるいは公告を行うこと

b)会合では、必要な情報の発表、行われる議論はすべて、当該共同体に理解されるプロセス・言語で行われるこ

c)議事録は、当該共同体の言語およびフィリピノ語/英語で書かれ、最終的なものにする前に当該会合の参加者により承認を受けること

d)共同体の合意ないし拒否の表明は、こうした表明が当該共同体の言語およびフィリピノ語/英語で書かれた文書の各頁そしてどの頁にも署名または拇印をしるすことで行われる。こうした文書は、合意/拒否のほかに、オルタナティブな提案(があれば、それ)を検討するかどうかについても述べるべき

e)どんなオルタナティブな提案も、同じ最低要件に従わせること

3) 6条は、実施側(proponents)の当該共同体に対する義務を定めている。

    a)当該共同体に対する完全な情報公開、それゆえ共同体があらゆる記録、文書、資料、施設に完全にアクセスできること

b)提案されているものが及ぼす生態的、経済的、社会的、文化的影響についてすべてを詳細に説明すること

c)あらゆる損害に対応するというコミットメント。これに関連して、実施側は現金の積み立てあるいは契約履行保証書をNCIPに提示すべき

dFPICを確保するプロセスに関連して発生する支出すべての費用負担を引き受ける

4) 8条では、提案に対し同意するかどうかを表明する文書に加え、実施側は当該共同体の言語およびフィリピノ語/英語で書かれたMOAMemorandum of Agreement)を共同体と一緒に作成する。とりわけ、MOAは以下を定めるべきである。

    a)受け入れる共同体にとっての便益

b)当該共同体の権利および価値体系を保護するための措置

c)実施側および共同体各々の責任

d)実施側に変更がある場合には、新しい実施主体もMOAに拘束される

e)MOAの条項を遵守しないこと、あるいは違反に対する処罰

MOAは、当のプログラム、プロジェクトないしは活動を提案している主体の権限を付与されている役員、NCIPに登録済みの権限を有する共同体長老あるいは伝統的リーダー、NCIPないしは権限を付与された代表が署名すべきである。

 

FPICが遵守されていない場合の規定

IPRA実施規約のRule VIIIPartIIの第9および10条によれば、NCIPは事業等を中止できる。

9条は次のように述べている。

NCIPは、ICCs/IPsIndigenous Cultural Communities/ Indigenous Peoples)の苦情を受け、ないしは自身のイニシアチブにより、コンサルテーションの過程およびFPICの要件を満たしてこなかったプロジェクトを中止あるいは停止する強制的プロセスを発動するものとする。

10条は次のように述べている。

NCIPは、…相当の調査をして操作、強制、脅迫および欺まんにより合意が得られたという証拠があがった後に、自身のイニシアチブで、あるいはICCs/IPsの要請を受け、開発プログラム、プロジェクト、政策あるいは計画の実施を中止、あるいは停止できる。

サンロケ多目的ダム事業の実施側は、事業サイト内の地域に関し、先住民族共同体に対するancestral domain title証書が発行されていないと主張している。しかし、IPRAは、影響を受けている先住民族共同体を代表してNCIPが介入する以前に、こうした証書がなければならない、と定めてはいない。

確かなことは、アグノ川流域の先住民族共同体は、こうしたtitleを確立できるということである。太古から、サンロケダムの貯水池および集水域地域における先住民族共同体の占有は、継続しており、公然であり、よく知られている。また、ベンゲット州の人々の間に広く知られている言い伝えのテーマでもある。さらに、フィリピンの歴史および民族学的文献にも記録されてきた。

 

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