タイの石炭火力発電所への支援を行わないよう、
地元住民150名が国際協力銀行に要請


7月25日、2つの石炭火力発電所建設によって悪影響を受けるタイ南部のプラチュアップ・キリカン県の住民150名が、バンコクの国際協力銀行の事務所を訪れ、国際協力銀行に対する要望書を提出しました。この2つのプロジェクトはそれぞれの開発事業主に日本企業が一部出資しており、国際協力銀行が現在プロジェクトへの融資を検討しているからです。

要望書では以下の2つの点に焦点が当てられています。

1、環境への影響
まず、住民は環境への影響について懸念を深めています。プラチュアップ・キリカン県は豊富な天然資源に恵まれており、多くの人々がその資源を生かした漁業、農業、観光業で生計を立てていますが、発電所建設によってその生計が破壊されてしまう危険性を指摘しています。また、環境政策計画局(OEPP)が不備の多い環境影響調査を承認しているため、住民はこのプロジェクトに対する疑念を抱かざるをえない状況にあります。 ヒン・クルット発電所計画(注1)の環境影響調査では、発電所前の海岸からわずか数百メートルあまりのところにある珊瑚礁を見逃していました。ボー・ノック発電所計画(注2)の調査では、発電所の北約20キロメートルの場所に位置する国立公園について、ラムサール条約によって保護されるべき世界有数の湿地帯であるとOEPP自身が認めているにもかかわらず、 悪化の一途をたどっているという見解を容認していました。また、調査では、ボー・ノック発電所が排出するSO2などによって、この湿地帯が大気汚染の集中地点になることもわかっています。

2、コミュニティーへの影響
次に住民が懸念しているのはコミュニティーへの影響です。住民間にプロジェクト支持か、反対かの対立を生み出し、その対立は家族・親戚間にも波及しているありさまです。銃器による脅しが増えるなど、暴力的なコミュニティーに変わってしまったことを嘆いています。

プロジェクトが持ち上がって以来、5年が経ちますが、住民は国際協力銀行にプロジェクト中止に向けた配慮を真剣におこなうよう望んでいます。

(注1)ヒン・クルット発電所計画
建設予定地:プラチュアップ・キリカン県バーンサパン郡トンチャイ区クルット村
開発事業主:ユニオン電力開発会社− トーメン(34%)等が出資
事業内容:1400MWの石炭火力発電所建設。民間独立発電事業体(IPP)としてタイ発 電公社と25年間の電力売買契約を締結。総事業費は12億ドル。

(注2)ボー・ノック発電所計画
建設予定地:プラチュアップ・キリカン県ムアン郡ボーノック区
開発事業主:ガルフ発電会社− 東京電力(株)(9%)等が出資
事業内容:1468MWの石炭火力発電所建設。民間独立発電事業体(IPP)としてタイ発 電公社に売電予定。総事業費は8億2千万ドル。

  ※このプロジェクトをめぐる詳しい情報は、下記のホームページをご覧下さい。
    →→メコン・ウォッチ  https://www.mekongwatch.org

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