NGO・市民連絡会からの提言
非自発的移住及び生計手段の喪失に関して


2001.2.26 FOEJ

 プロジェクトによる非自発的移住や生計手段の喪失は、ときに将来の世代に及ぶほどの長期にわたって、生活再建の困難や精神的苦痛を生じさせてきた1。自らの意思に反して経済的・社会的・文化的生活の基盤を失うことはもっとも深刻な基本的人権の侵害であり、あらゆる代替案と方法を検討することによって回避されなければならない。人々の生活の質を悪化させるような結果をもたらすプロジェクトをJBICが支援することは、開発協力の原則を損なう。非自発的移住及び生計手段の破壊を含む計画をJBICが支援できるのは、以下のすべての条件が満たされる場合だけに厳しく制限されるべきである。

  1. 直接影響を受ける人々の事前の自由な合意が得られていること。影響を受ける人々やコミュニティーが、将来のリスクも含めて理解できるように、提案に関する十分な情報提供と説明、協議が行われること。移住者等の権利が十分に説明・保障され、脅迫や不正確な説明が行われてはならない。
  2. 実施に係る法的なフレイムワークおよび事業者の責任遵守を監督する当該国の責任機関が明らかにされていること。また住民の苦情処理を受け解決を図るメカニズムが設立されること。
  3. 影響を最小化し、被害を十分に補償するために、コスト面で裏づけのあるResettlement & Rehabilitation Planが策定されること。
  4. 移住者等の生活の質をプロジェクト前より向上させ、少なくとも悪化させることのないよう、十分な補償及び支援が実際の移住の前に与えられなければならない。法的権利が保障されていることは補償や支援を受ける条件にはならない。
  5. 移住者等が受ける補償及び支援には、土地や金銭による完全な損失の補償、持続可能な代替生計手段を支援し、完全に自立することができるように長期的・継続的な支援が提供されること、家屋やインフラ等の提供、移住費用の支援等が含まれる。
  6. R&R Planの作成、実行、モニタリングには影響を受ける人々やコミュニティーの対等な参加のもとに行われること。移住前の社会単位および社会文化制度が維持されるような方法が、住民との協議のもとに検討、支援されること。
  7. 少数民族、女性、高齢者、貧困層などの集団がしばしば国内法の保護を受けられず、また情報へのアクセスや意見表明の機会が均等に得られない等不利益を受けやすいことに注意をはらい、これらの集団の参加の機会が保証されまた重大な不利益を被ることがないよう特別の配慮を行うこと。また先住民族の居住地が影響を受けるおそれがある場合には、土地と自然資源の利用に対する集団的権利を保証し、十分な情報提供と説明に基づく。
  8. JBICは環境・社会開発室のスタッフを含むミッションを少なくとも最初の5年間は半年に1度派遣し、政府及び事業者だけでなく住民組織からも直接意見を聴取して監督を行うこと。

1WCD最終報告書は立ち退きに伴う貧困化リスクとして、土地なし、失業、家なし、社会的・経済的・政治的周辺化、食料の不安定、増加する疾病率と死亡率、共有資源のアクセス消失、社会文化的な回復力の消失を挙げている。