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経済的強者と社会的弱者の戦い―勝敗は自明 「地球環境サミット」とは名ばかりか?

ヨハネスブルク・サミット第4回準備会議報告

バリ島での2週間は、リオサミットでできた「アジェンダ21」の実施を促進する取り組みについての「世界実施文書」の検討に明け暮れた。ただし、焦点となったのは「アジェンダ21」の内容からは大きく外れて、ドーハでのWTO・閣僚宣言(2001年11月)や、モントレーでの開発と金融に関する閣僚宣言(2002年1月)をどう取り込むかだった。
 社会・環境関連の、ポルトアレグレでの世界社会フォーラム(2002年2月)や、ハーグでの生物多様性条約会合(2002年4月)からのメッセージも取上げられたものの、ほとんど前進は見られなかった。

◇ブレトンウッズ体制か、国連か

 「開発か、環境か」の議論は「ブレトンウッズ体制か、国連か」にエスカレートし、先進国、特に米国は「国際連合」に距離を置きつつある。国連での議決は、米国のような大国も、アフリカの小国も同じ1票でしかない。一方、国連の外に先進国が中心となって作った、経済・金融を扱う国際機関(IMF・世界銀行・WTOなど)は出資金に応じた発言権が認められたり、グリーンルームと称する大国グループが取り仕切る枠組みができている。これを「ブレトンウッズ体制」というが、米国は明らかに国連を、単なるブレトンウッズ体制の強化の道具にしようとしている。企業競争力強化のために、京都議定書を踏みにじっているのが、これを端的に物語っている。京都議定書の批准を促す「世界実施文書34項」は保留となった。

◇ODA

 先進国政府と途上国NGOはODAの「質的転換」を、途上国政府は「量的拡大」を主張、日本のNGOはサイドイベントで「ODAのもたらす環境破壊・人権侵害」を問題にしたが、本会合では、ODAの金額そのものを先進国GNPの0.7%に縛ろうとして攻防があった。先進国は、途上国側のガバナンス(統治能力)を問題としたが、途上国は内政干渉を避けたいとの意図があり、モントレーの会議からの進展はなかった。
 一方、インドネシアも返し切れないほど多額の債務を抱えており、「債務帳消し」対象国をアフリカからアジアに広げる折衝も大きな焦点であったが、進展はなかった。特に日本の債権は大きく、不良債権として日本に帰って来ることを日本政府は恐れており、米国と共に債務帳消し拡大には反対した。

◇多国籍企業の責任

 多国籍大企業の売上は、アフリカの大部分の国のGNPを遥かに凌駕している。
今回のFoEインターナショナルのキャンペーンテーマは「Don't Let Big Business Rule the World」(大企業に世界を支配させるな)でした。「Corporate Accountability」(企業責任)を透明化・明確化させよう、そして企業行動をある程度制限する「枠組み」を作ろうという条項が入ったのですが、米国・日本の強い反対で、表現は極めて緩やかなものになりました。
 WTOは貿易自由化を旗印に、途上国の市場支配・金融支配を進めるため、途上国の国内法・規制よりもWTOルールが優先する方向の取決めを目指しています。多国籍企業の途上国での活動を治外法権化して、途上国をあたかも植民地のように支配しようとしています。これが途上国の自然資源や労働資源の略奪となり、貧困層の増大、環境劣化につながっているのです。「Corporate Accountability」は適当な日本語訳がまだありません。FoEインターナショナルだけでなくグリーンピースなど国際NGOが、シアトルのWTO閣僚会議以降、多国籍大企業の短期的・経済利益の追求行動が、環境破壊や貧富の格差拡大の最も大きな原因であるとして、NGO活動の中心にこれを置いています。日本のNGOはまだこれを大きく取上げていません。日米の政府は、大企業がバックにいるために、この問題には目をつむろうとしています。

◇横に広がる課題

 ヨハネスブルグ・サミットに向けて、まだ前進の余地は残されているか?
昨年11月のプノンペンでのアジア準備会合以降、「世界実施文章」の項目は40から158にまで膨れ上がると共に、課題がどんどん横に広がり、誰も全体を把握出来なくなっている。日本政府の対応も焦点が定まらず、濃淡も様々。日本のNGOも、多数参加したものの、交渉の流れを十分に追いきれておらず、統一的な行動はほとんどできなかった。メディアはサッカーに眼を奪われ、ほとんど報道はなかった。準備会合の成果に大きな疑問符が付く中で、我々はヨハネスに向かって、どう行動すべきか真剣に問い直す必要がある。

(岡崎時春

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