アンケート結果概要:輸入木質ペレットの持続可能性確認は? 求められるFITガイドラインの強化

国際環境NGO FoE Japan、一般財団法人地球・人間環境フォーラム、バイオマス産業社会ネットワーク、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、プランテーション・ウォッチは、このたび、バイオマス発電向け輸入木質ペレットに関するアンケートの結果を公表しました。

このアンケートは、バイオマス発電向け輸入木質ペレットの調達状況と合法性・持続可能性の確認手法の課題を明らかにすることを目的に、関連する総合商社、発電事業者30社に送付し、11社から回答を得たものです。調査は2019年10月~11月にかけて実施しました。

調査の結果、多くの企業が輸入木質ペレットの合法性・持続可能性の確認方法として、「森林認証」を活用していることが分かりました。しかし、その確認方法については、一部の企業は供給元企業がCoC認証を取得していることのみを確認しているだけで、インボイスやパッキングリストで輸入材が認証材であることを確認していないことも明らかになりました。

CoC認証の取得はあくまで流通段階での分別管理等、認証材が非認証材と混合しない体制を持っていることを示しているにすぎず、それのみでは当該木質ペレットが認証材であることを確認したことにはなりません。

なお、ベトナムからのFSC認証ペレットの輸入に関しては、認証林面積から試算された生産量を大幅に上回る量が輸入されていたため、認証の詐称ではないかという指摘がなされてきました。

調査を実施した5団体は以下のように指摘しています。

1.FSCなどの森林認証は、必ずしもバイオマス発電用燃料を想定した設計にはなっておらず、認証を利用した持続可能性確認のためには、ガイドラインの強化が必要である。

2.企業が回答した「森林認証」の中には、独立した第三者機関が決められた原則、基準、指標によって”認証”している制度とは異なり、第三者認証と呼ぶにはふさわしくないものも含まれている。また、団体認定については、認定する団体により差が大きく、且つ実質的に担保されているのは合法性のみであり持続可能性を保証するものではない。

3.森林認証では、本来FITに求められるべき、ライフサイクルにわたってのGHG排出削減が達成されているかについては確認できない。

5団体は、木質バイオマス燃料の輸入にあたっての持続可能性に関するガイドラインを強化し、明確にすべきとしています。

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アンケート調査結果の概要は以下の通りです。


〇実施目的:バイオマス発電向け輸入木質ペレットの調達状況と合法性・持続可能性の確認手法の課題を明らかにすること。
〇実施主体:国際環境NGO FoE Japan、一般財団法人地球・人間環境フォーラム、バイオマス産業社会ネットワーク、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、プランテーション・ウォッチ
〇実施期間:2019年10月~11月
〇実施対象:バイオマス事業に関連している総合商社、発電事業者30社に送付。11社から回答を得た。
【結果概要】
1.バイオマス発電木質ペレットの輸入について
9社が「輸入している」と回答、2社は「輸入していない」と回答した。輸入先:カナダ、ベトナム、タイ、オーストラリア、マレーシア
2.合法性・持続可能性の確認手法
9社すべてが「森林認証」と回答。うち2社は「森林認証」に加え、それぞれ「独自の取組」と「団体認定」を挙げた。使用している認証としては、「FSC(ベトナム、タイ)」、「PEFC(カナダ、マレーシアなど)」、「GGL(カナダ)」、「AFS(オーストラリア)」と回答した。
3.今後の木質ペレットの調達予定
今後の木質ペレットの調達予定についての質問に対しては、現在の調達先に加え、米国、マレーシア、インドネシアという回答があった。持続可能性・合法性を確認する手段として、上記2.で回答のあった認証に加え、「SBP(アメリカ)」、「SVLK(インドネシア)」、「SFI(アメリカ)」という回答がみられた。また、全国木材チップ工業連合会等による団体認定を挙げた企業もあった(注)。注)SVLKはTimber Legality Assurance System(合法性保証システム)として事業者に対する義務的な取り組みとして構築された。FSCなど独立した第三者機関が決められた原則、基準、指標によって”認証”している制度とは異なる。また、団体認定についても、認定する団体により差が大きく、且つ実質的に担保されているのは合法性のみであり持続可能性を保証するものではない。
4.「FSCを活用」の場合の確認方法
FSCを活用している場合の確認方法を尋ねたところ、9社すべてが「供給元のサプライヤーがFSCのCoC認証を取得していることを確認している」と回答した。しかし、そのうち「インボイスやパッキングリストでFSC認証材であることを確認している」および「インボイスやパッキングリストでFSC管理木材であることを確認している」と回答したのは5社のみであった。さらに「生産者と面談し、認証取得や原料保管・生産方法など直接確認している」のは1社だけであった。
5.FSCのCoC認証を取得しているか
FSCのCoC認証を取得していない企業が4社(商社2社、発電事業者2社)、取得している企業が5社(商社4社、発電事業者1社)あった。
6.木質ペレットの合法性・持続可能性に関する確認における課題
「木質ペレットの合法性・持続可能性は電力業界のみのルールではなく、木材業界全体のルールでもある為、その本質の理解及び維持は容易ではない」「資源背景には注視して、商売を進めていく必要があると考えている」「輸入者自らが当該サプライヤーの原料供給会社を実際に往訪して、その合法性と持続可能性を断続的に確認し続けることが必要である」「認証材の運用管理を厳格に行う必要がある」「どの認証であれば条件を満たすかなど、基準をより明確にしていただくことで、木質ペレットの合法性・持続可能性が高まるのでは」などの意見が寄せられた。以上

【関連資料】
バイオマス発電をめぐる要請書提出ー環境負荷が大きい事業はFIT対象外に >「バイオマス発電に関する共同提言」
声明:FITバイオマス発電に温室効果ガス(GHG)排出評価を!――学識者ら276人
何が問題? H.I.S.のパーム油発電Q&A

 

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