【メッセージ/資料を公開しました】国際シンポジウム 3・11から9年 どう伝える? 原発事故のこと 

原発

新型コロナウィルスの影響で、3月11日(東京)、14〜15日(福島)の国際シンポは中止とさせていただきました。
当日展示予定だった作品をご紹介します。

声明:福島第一原発事故から9年 「オリンピック」で覆い隠してはならない被害の実態
福島の今とエネルギーの未来2020


【当日展示予定だった作品と作者からのメッセージ】

鈴木邦弘さん



作品へのメッセージ

この作品を描こうと思ったきっかけは、富岡の桜まつりに行ったことだった。ニュースではバリケードや周辺の廃墟を映さないように報じ、来ている人々もそこから目を逸らし笑顔で花見を楽しんでいる。そんな中でも、眉間にしわを寄せ、バリケードの向こうに目をやる人もいる。そんなカオスな空間に触れ、僕は空を真っ赤に染めてしまえと思った。“復興五輪”と名付けられた虚飾の2020年、偽りの復興にかき消されそうな福島の小さな声。満9年を迎え、今は新型コロナウイルスによってさらに遠い記憶へ追いやられようとしている。しかし核災害はまだ終わることはない。僕はこれからもずっと、現地に足を運びながら描いて伝え続けていきたいと思う。

鈴木邦弘プロフィール

イラストレーター、絵本作家、介護福祉士。長岡造形大学卒業、パレットクラブ6期生。第4、6回MOEイラスト絵本大賞入選。個展、グループ展等多数出展。19年「もやい展@金沢21世紀美術館」出展、21年「もやい展@横浜赤レンガ倉庫」出展予定。東電福島第一原発事故後の双葉郡を舞台に描いた絵本『楽園』発売中。15年より福島県を取材し、イラストレーションや絵本の制作を行う。コミカルなキャラクターを描きつつシニカルなメッセージを作品に込め、半径5mから、より多くの人たちに伝えていきたいと考えている。

詩集『紅・くれない』32ページ版

千宙さん


作品へのメッセージ

Future ―ベラルーシの子どもたちによせて―

私がベラルーシの子どもたちに出会ったのは、チェルノブイリ原発事故から29年が経とうとしていた春だった。福島原発事故を受けてから不安の波に何度も飲み込まれ、この時もまた、放射能や故郷のことを考えるのが辛い時期だった。ベラルーシに行かないかと誘われた時に、これまでの活動に区切りを付けようとも思っていた。
ベラルーシの人々、特に子どもたちを描きたいと相談したところ、糖尿病の子どもたちのリハビリプログラムに同行させてもらえるよう話をつけてもらった。そのためスケジュールより一週間早く単身で現地入りした。

15人の子どもたちと先生、ボランティアスタッフは私を暖かく迎えてくれた。子どもたちは見慣れない日本人に興味津々で、自己紹介をしている間にも「日本語を聞かせて!」と目を輝かせていた。
同じスケジュールを過ごしたり会話を楽しんだりしたが、子どもたちの病気に対する気持ちを言葉で知ることは殆ど出来なかった。私が話せる外国語は英語だけで、英語で会話することが出来る子どもは殆どいなかった。また、「取材としての質問が思春期の子どもたちの心を傷つけてしまうのではないか」「英語の弁解もベラルーシの人々が受け取るニュアンスも全く解らない」現地に飛び込んでみなければわからなかった力不足ゆえの壁が、私は同行した数日間で乗り越えることはできなかった。代わりに、彼らの表情、行動、何気ない日常の会話から子どもたちの気持ちを知ろうと、より一層向き合った。スケッチにしっかり描き込め日本に持って帰ろうと思った。

子どもたちの想いは、純粋で偽りのない姿を通して私の中に直接に語りかけてきてくれた。「どんなことがあっても乗り越えていこう」と希望の光に満ちた表情が、理不尽な運命の中でも輝かしく生きようとしていることを教えてくれている気がした。
そして、この子どもたちの希望への道を切り開いているのは、子どもたちを守るためにどんな困難な状況も、あきらめず掻い潜ってきた大人たちの不断の努力の結晶ではないかと思った。政治の独裁体制やチェルノブイリ原発事故に関する活動への圧力など、この地の苦難は放射能だけではない。だが未来を守るためにあきらめず向き合い続ければ、どんな運命にさらされた子どもでも希望の光は失わない。

福島原発事故から5年が経とうとしている。事故の影響は着々と姿を見せているのに、相反するように人々の関心は薄れている。私たちの未来に待ち受けているのは彼らと同じ運命かもしれない。しかし私たちがあきらめなければ希望の光は途絶えない。

滞在中は奇跡のような美しい自然の景色を何度も見た。私が感じた希望はニガヨモギを纏った母なる地球が子どもたちの姿を借りて私に教えてくれたのではないか、とふと思う。
日本の未来の一つのかたちであるベラルーシが教えてくれた希望をたくさんの人に伝えたい。

千宙プロフィール

1993年、福島県出身。日本人の父と日系ブラジル人の母のもとに生まれる。対極にある2つの文化や習慣が混在する家庭環境は、自身の個性や発想に大きな影響を与えた。
3.11と原発事故をきっかけに、甚大な災害に苦しむ故郷の東北を思い、進学していた京都の大学を退学し、被災地のボランティアに参加。その後、メディアに取り上げられない被災地の現状を発信する講演活動を行い、これまでに日本各地や韓国で約50回の講演会にスピーカーとして登壇した。これらの経験の中で、アートに心を癒す力があることを再認識し、2014年に東北芸術工科大学に入学し、卒業。広大な宇宙の中で紡がれる小さな生命の循環をテーマに、今日まで作品制作を続けている。
開催趣旨/予定していたプログラム

2020年3月11日 in 東京][2020年3月14日 in 福島][2020年3月15日 in 福島

東電・福島第一原発事故「見える化」プロジェクト ご寄付募集 着々と福島原発事故の「見えない化」が進んでいます。避難者の数や実態、健康被害をはじめ、被害の実態や除染土など、原発事故の痕跡そのものが覆い隠されようとしているのです。FoE Japan では、東京オリンピックの年である来年 2020 年にあわせ、東電福島第一原発事故を「見える化」し、国際的に情報を発信していくプロジェクトを立ち上げます。このプロジェクトを実現するために、みなさまのご寄付を呼び掛けています。ぜひご協力ください!くわしくはこちらから。https://www.foejapan.org/energy/fukushima/190505.html

 

関連するトピック

関連するプロジェクト