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Vol.15(12 June 2003)
 
 
国連・温暖化対策会議始まる

  6月4日から13日まで、ドイツ・ボンで地球温暖化に関する国連の取り組みの中核となっている国連気候変動条約の定期会合(補助機関会合)が開かれています。 この会議に先立ち、条約事務局は各国の温暖化対策をまとめた報告を発表しました。 これに拠れば、先進国全体では2000年の温室効果ガスの排出は1990年の排出量から3%下がっています。 しかしこれは経済移行国の排出分が37%下がったためで、加20%、豪18%を筆頭に米14%、日11%、欧州連合3.5%と他は依然として削減を続けています。 一方、国際温暖化対策に不可欠な地球制度の基盤となる国別報告書の整備が進み、今回は途上国100ヶ国、31先進国が自国試作状況や排出量を条約に提出しました。 本報告は以下で見ることができます(英語)。

https://unfccc.int/press/prel2003/pressrel030603.pdf

  実質的な交渉が始まったのはここ数日ですが、その中から今回の焦点を幾つか紹介しましょう。

■今後の道程を示すために

  国連の下で科学者のタスクフォース、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が地球環境を温暖化の視点で包括的に分析した三回目の評価報告を出したのが二年前。 その後、この報告書の科学的知見を如何に政府間交渉の議題に継続的に反映させるかが議論されてきました。 12月の本会議で決められる内容には、この報告が示す今後百年間の地球環境の変遷と、それを抑えるための途上国も含めた対策の強化の必要性をどの様に議題に組み込んでゆくか日欧が追求し、米・途上国が反対する「道程」が盛り込まれるかが焦点となっています。

■適応、それとも排出削減?

  先に触れた報告書では、現状の対策では今世紀末までで最大5.8度、地球平均88センチの海面上昇をもたらすと警告しています。 すでに今までに排出されたガスだけでも地球温暖化はかなり進んでしまいます。 このため、排出源での排出量削減対策と併せ、今後増大すると予測される大型化する嵐や集中豪雨、干ばつなどの気象災害、疾病、水不足など途上国を中心に予想される大規模な地球環境の変化に対応するため、適応と呼ばれる対策が必要となっています。 12月の本会議では、この問題の今後の進め方を決めることになっており、これに先進国での温暖化対策がもたらす化石燃料の消費削減、とりわけ石油からの収入減の補償を求める産油国の要求が加わり、途上国の対策能力の育成、技術移転を含めた地球的な制度構築への努力が先進国に求められています。 一方、先進国が適応に加え、増大する途上国からの排出抑制策を平行して扱うよう求めるなか、米国の様に排出削減は経済成長を犠牲にするとして国内でむしろ適応対策に力を入れる方針の先進国もあります。 世界最大の排出国が排出削減を最重視しなければ、今後の地球環境はより大きな変動を迎え、その為の適応対策が更に必要となるという悪循環が懸念されています。

■必要な資金の整備

  2年前モロッコで京都議定書の運用ルール詳細が合意された折り、途上国支援のため三つの基金が新たに地球環境ファシリティの下に設置されました。 今回の交渉ではすでに運用が始まっている最後発開発途上国基金に加え、特別気候変動基金の運用の仕方を決める交渉が行われています。 増大する気象災害に晒されている途上国は適応対策支援を最優先にするべきとする一方、排出削減も同様に重視するべきとする日欧との間で議論が続けられています。 また増大する気象災害に晒されている途上国側は延び延びになっている基金の運用を12月本会議以降即時始めるよう求め、適応対策の定義、対象の絞り込みの為議論をもっと詰めるべきとする先進国と対立しています。

■途上国での排出削減事業と森林

  京都議定書の下で、持続可能な開発を支援するため途上国で排出削減事業を行うクリーン開発機構が設置されました。 事業の削減量を議定書の下で出資する先進国の京都目標達成に勘定することができる仕組みです。 これに森林等生態系が吸収する二酸化炭素などの温室効果ガスを加えたことは、二年前の運用ルール合意後常に大きな議論を呼んできました。 これら生態系の吸収能力は、温暖化の進行とともに無くなり、蓄えた分も後で大気中に放出されてしまうという永続性の問題が懸念されます。 また、先進国が大量の排出を続けるなかで、途上国の土地を使って対策の一部とすることへの倫理面の問題、先進国に売れる二酸化炭素吸収量を重視するあまり、特定種の産業用植林など環境や地域社会にかえって悪影響を与えてしまう場合などが懸念されています。 日、加、マレーシア、ボリビア、チリなどが求める内容ではこの様な植林活動も含まれてしまうこともあり、植林・再植林事業の定義や、欧州を中心に求めている環境・社会影響評価の扱いが交渉されています。

■アメリカが描く世界の陰で

  上記案件の難しい交渉の陰で、ここ数日、最も厳しい対立が続いているのが来年からの2004ー5年度の予算交渉です。 2年前、米政権が京都議定書からの撤退を決め、米議会は議定書関連の予算への支出を禁じる決定を下しました。 このため米国は条約事務局に対し議定書発効の準備に係る予算を他の条約活動と分ける異例の要求を出しています。 これに対し欧州連合は、時と場合によって国々が国連条約で自国が好む特定の活動にのみ資金を出す悪例を作ってしまうとして、条約の予算として一括採択するよう求めています。 国連は国の経済規模等により資金拠出をする原則を採用しており(日本の負担は通常約2割)、欧州は約200ある国連環境条約やその他国連機関を支える多国間主義の原則を浸食する行為と見なしています。 欧州連合内で最も強硬に反対しているのが仏、同国代表団は決定を全てパリに仰ぐよう指示されていると言われ、事務交渉では異例のことです。 皮肉なことに、この件の欧州担当は英国で、シラク仏政権を英が代弁して米国と火花を散らしています。 一方、日本は困難な立場で、要求を拒絶して米を条約から遠ざけてしまうことを懸念する一方、米国抜きの交渉分科会議長案では準備費用の7割弱を日本一国で負担するよう提案されています。 額は170万ドル程ですが、発効後の議定書を事実上日本一国が支えることにもなりかねない提案です。 日本は議定書発効を見越した事務局予算案の増額を抑える、透明化を徹底する等を求めていますが、環境条約の活動を抑圧する面は否めず、ここでも、過去半世紀を支えた国連の多国間協調体制の行方が問われることとなっています。

お問い合せ:気候変動プログラム・小野寺ゆうり
Email:energy@foejapan.org
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