FoE Japan
気候変動とエネルギープログラム
気候変動とエネルギープログラム トップ トピック 資料室
気候変動とエネルギープログラム資料室ニュースマガジン“J-Equity”>Vol.11
トピック
Vol.11(30 October 2002)
 
 
COP8始まる!
 10月23日から11月1日までインドのニューデリーで第8回国連気候変動枠組み条約会議(COP8)が開催される。今回の会合では、昨年のCOP7で採択されたマラケシュ合意の積み残しや途上国への支援などについて交渉が進められる。
 前の9月30日と10月1日には、COP8非公式会合が開催されており、この中ではデリー宣言採択のための円卓会議の進め方および協議事項に関して意見交換が行われた。この会合では途上国と先進国の間の大きな壁が見られたといえる。概して先進国は途上国の排出削減枠組みへの参加をどのように行っていくかの交渉に着手したい一方で、途上国は支援や先進国の削減責任など先進国の条約実施に重点を置いて交渉を進めたいという対立構造が浮き彫りとなった。
 COP8ホストであるインド政府は、気候変動と持続可能な開発を同時に達成するため現存の合意事項の実施を呼びかけたい意向を示している。この実現のためには、そして先進国が望む途上国の排出削減枠組みへの参加のためには、気候変動の影響を受けやすい途上国の脆弱性を下げるための適応策や技術移転のための支援を行うことが必要である。
 議定書や条約の更なる実施ルールを規定したマラケシュ合意の積み残しに関する細部の交渉は最もであるが、今回のCOP8ではこの対立がどう変化していくかにも注目が集まることだろう。
京都議定書の現状
 昨年のボン会合とマラケシュでのCOP7では、京都議定書から離脱した米国抜きで交渉が進められ、多くの合意がなされたが、1997年に採択された京都議定書実施のための細部のルール作りは依然として続いている。
 京都議定書の発効条件は55の締約国が批准し、それらの国のうち先進国の排出量が条約締約先進国の総排出量の55%に達することである。米国が離脱した今、ロシアの批准が京都議定書発効の鍵を握っていることになるが、そのロシアが来年前半に批准する意向を示しているため議定書発効は間違いないだろう。
 またカナダもヨハネスブルグサミットで批准の意向を示したが、クリーンエネルギー(天然ガス・水力としている)輸出を排出枠増加に取り入れる提案をするなどその行動は注意すべきところである。
 オーストラリアも米国同様に批准しない意向を示す一方、ポーランド、ハンガリーや、ブラジル、中国、インドは締結を完了させている。
 京都議定書は気候変動問題解決のほんの第一歩に過ぎないのにもかかわらず、米国、日本、カナダ、オーストラリアなどで構成されるアンブレラグループは一貫して議定書の効果を弱める後ろ向きな態度をとってきた。199
0年レベルからほんの5%しか削減しない議定書では気候変動をとめることはできず、すでに起こり始めている悪影響を防ぐためには2050年までに80%の削減が必要とされている。途上国もまた、温室効果がス排出を抑えるための努力が必要となる。
 中には京都議定書の第一約束期間以後の削減を見越して行動する国もあり、ドイツは最近EUに対し2020年までに30%の削減を呼びかけ、自国では40%の削減を行う意向を示している。
 しかし、先進国が排出削減を十分に行っていない今、途上国は影響に対応するための適応策への資金支援の必要性を訴えているなど、先進国と途上国の間の隔たりは大きく、COP8での交渉は難航必至である。
COP8での主な議題
●資金問題
 昨年のCOP6再開会合で、EU、カナダ、アイスランド、ニュージーランド、ノルウェー、スイスは2005年までに年間総額4億1000万米ドルを途上国に供給し、適応策、技術移転、キャパシティービルディングを支援していくことを宣言した。COP7で採択されたマラケシュ合意の中では、条約の下での特別気候変動基金、最後発開発途上国基金(LDCファンド)という2つの新しい基金、そして議定書の下での京都議定書適応基金を設置することが合意されている。
 現在、動き出しているのはLDCファンドであり、これは最後発開発途上国がNAPA(国家適応計画)を遂行するための基金である。COP8では基金へのガイダンスが策定される予定である。
 特別気候変動基金に関しては、資金供与のガイダンスがCOP(締約国会議)から条約の資金メカニズムであるGEF(地球環境ファシリティー)に対してまだ出されていないため、このガイダンス作成も行われる予定である。京都議定書適応基金に関しては、その資金源としてCDM事業収益の2%を充てるということになっているが、それ以外は政府の自主努力によるものとされている。また、4年に一度行われるGEFの見直し交渉も行われる予定であり、問題の増資や市民参加なども問われることになろう。
●妥当性の検討
 気候変動枠組み条約は、締約国が4条に定められている気候変動に対する措置の妥当性を定期的に検討することを規定しているが、1998年以降これに関する交渉は毎回棚上げとなっている。途上国は削減目標など新規の義務が決定されるのを嫌い現存の義務実施に関する項目の改訂を行いたい一方で、これまで条約実施を充分に進めていない先進国はその対応を避難されるのを嫌うからである。京都議定書の発効前に議論が進むかどうかは未知数である。
●科学と政策の整合性
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は昨年、第3次評価報告書(TAR)を発表した。この報告書の目的は気候変動の科学と、社会面・経済面での分析に関する最新の知見を提示し、交渉を行う際に充分な情報が提供されることであった。現在は、TARが交渉するのに充分なデータを提供しているとする締約国と、気候変動に関する科学の不確実性に未だ固執している締約国の間で意見が分かれている。
IPCCの提供する情報は大幅な排出削減を行う必要性を訴えており、交渉における決定事項に反映されるべきである。
●クリーン開発メカニズム(CDM)
 COP8では、締約国政府はCDM理事会の初の報告がなされることになっており、CDMでの吸収源プロジェクトについても交渉が行われることになっている。
 CDMは、先進国が途上国において排出削減プロジェクトを行い持続可能な開発を達成することを支援するためのものであり、先進国はプロジェクトを行わなかった場合の排出量(ベースライン)と削減できた分の差をクレジットとして排出削減枠に含めることができるものである。9月には25件のCDM案件が承認プロセスに入っているが、その半分が再生可能エネルギープロジェクトであるにもかかわらず、それらが占めるCDMクレジット(CER)は全体の20%にしかなっていない。これが意味していることは、再生可能エネルギーよりも、環境に悪影響となる大型ダムやプランテーションによるプロジェクトからのCERが多いということである。
●閣僚級会合
 インド政府は3つの円卓会議を行う形で閣僚級会合を行うことを提案した。それらは条約の実施状況、気候変動と持続可能な開発、まとめとして実施のための行動枠組みである。そしてこれらの協議の結果として、「デリー宣言」がまとめられる予定である。適応策への資金支援を含めた現存の合意事項を実施することは必須であり、COP8では、交渉を前進させるためにも適応策と緩和策に取り組むための新しい決定がなされなければならない。
お問い合せ:
中島 正明  現地携帯 +91-98101-50108
小野寺ゆうり 現地携帯 +91-98101-50079
         Email: energy@foejapan
J-EQUITY は地球環境基金の助成事業です。
(c) 2002 FoE Japan.  All RIghts Reserved.

サイトマップ リンク お問い合せ サポーター募集 English