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トピック
Vol.06(31 August 2002)
 
 
閣僚級プロセス始まる
 国際交渉でも、公平性の問題は、透明性と並び交渉の結果に大きな結果をもたらすものである。本格的な閣僚級の交渉が30日から始まり、昼過ぎまでに、大臣達は今後のハイレベル会合の進め方について、これまで事務レベルで行われてきたウィーンプロセスを平行して続けることに合意した様である。問題は、ヨハネスプロセスと呼ぶ閣僚級で、ウィーンプロセスに影響を与えうるどれほど実質な議論ができるかにある。ウィーンプロセスでは、希望する全ての国が議論を傍聴でき、透明性を確保できるが、ブロック間の公平性を保つため、発言は公式に認定されたブロック代表のみとなる。つまり、EUやG77(途上国)からの発言はそれぞれ一ヶ国のみだが、非公式グループ扱いのJUSCANZ(日米豪加)など他の国は自由に発言できる。例えば、ブラジルが持続可能な自然エネルギーの提案をしようとしても、産油国によりG77ブロック内の議論で封じられてしまい、提案を交渉のテーブルに載せることはできない。米と産油国は従って、ウィーンプロセスでの議論継続を支持した。一方、ヨハネスプロセスでは、発言の制約はなく、他の途上国からもブラジル提案を支持する発言ができる。またEU15ヶ国全てが発言することができ、JUSCANZとEUとの数の優劣も逆転するのである。すでに多くの項目で、事務レベルの交渉での議論が出尽くしている今、ヨハネスプロセスでの閣僚による大胆な政治決断が望まれる。
 事務レベルにおける、第九章実施手段での貿易と資金の交渉が決着を付けつつある中、気候変動、エネルギー、衛生(淡水)、リオ原則が閣僚級で今日のホットな議論となっている。午後の閣僚級で、G77とEUがリオ原則と先の3分野での目標を載せることに合意、再生可能エネルギー目標に反対する日米は、それを黙認したと言われる。また途上国の地域別目標提案に加え、ウィーンプロセスの束縛から離れたブラジルが、ついに2010年に地球全体で再生可能な自然エネルギーの供給を10%とする提案を載せた。途上国ブロック全体での調整後、翌日の閣僚級で再度取り上げられることになった模様だ。また日本は、事務レベル非公式で、京都議定書の言及で新しい文章を提案、米豪のみの反対で再度持ち帰りとなった。一旦は、一連のパッケージとして合意が成立したようにみえたEUとG77だが、夜に入り再開された閣僚級でEUが、共通だが差異ある責任原則に追加の条件を付け、これもまたG77が持ち帰り内部で協議することとなった。明日31日の朝のG77の内部会議でこれらの宿題が協議された結果と、日本の議定書に関する次の文面の提案が次の閣僚級協議の最初の山場となろう。
 閣僚級をどう進めるかのプロセスの話は、政治宣言草案づくりともからむの日の話題だった。南アフリカ政府は、独自色ある宣言内容を目指し各国と非公式な協議を続ける一方、米国は現在交渉中の世界実施文書で合意された内容を越えるものには難色を示しており、30日午後に南アが用意していた草案の公式提案も米によりブロックされた模様である。首脳陣の到着を前に、残る課題の中から実施文書にどれほど実効のある行動計画を盛り込むことができるか、このサミットの行方は依然不透明なままである。
分野別交渉アップデート
貿易
 多国間環境協定(MEA)に関しては、パラグラフ20にWTOルールがMEAより扱いが上であるという文言が入れられた。EUはMEAに関する交渉はWTOのプロセスで行われるこを主張した。多くのNGOは現状の方向転換を求め、貿易規定が環境協定を支配することのないよう呼びかけている。
 持続可能性影響評価とリオ原則を貿易協定に盛り込むことに関しては、G77はこれ以上の進展に反対した。市場アクセスの交渉は依然として難航している。現在の文書では、すべての貿易補助金を外し、対象分野として、地域経済の発展、持続可能性、環境保護に関する研究の促進を含んでいる。
 29日の夜、EUは、リオ原則、淡水、衛生、エネルギー、消費・製造パターンに関する10年計画、貿易と資金に関して、閣僚級で協議を行うことを提案し、交渉をストップさせた。
 持続可能な開発について話し合うはずのサミットは、急速にWTO交渉の場と化している。現在の文書にはWTOに関する200ほどの言及があり、グローバル化に関する文言はドーハテキストから外されている。
 現在ヨハネスブルグサミットに出席している国々の中で、18国がWTO加盟国ではない。昨日29日には、トリニダード・トバゴの政府関係者が述べたところでは、同国はWTO加盟国ではないので、ドーハ宣言に含まれることであろうがなかろうが交渉したいことはあるということである。そうできず、WTO規約に関するパラグラフに翻弄されているということは、すでにWTOの中に取り込まれたも同然だ。ヨハネスブルグサミットはWTOルールを話し合う場なのであろうか?
資金
 30年前に合意されたODA0.7%の目標に対する約束はなされていない。輸出信用機関に対する環境・社会的基準に関して実のある文書は依然としてない。
気候変動
 米国が出す予定であった京都議定書への言及を文書から外す代替案が待たれたが、表には依然出てこなかった。おそらく、米国は京都議定書の効力を弱めるような文言案を作るのに手こずっているのだろう。昨日27日に開かれた記者会見で米民主党議員は、米政府の気候変動問題の取り組みへの態度を批判した。
 ノルウェーから出された提案では、全ての国々に対して京都議定書を批准することを求めている。EUはノルウェー提案を支持しているが、これに関しては内部で意見が別れているいう情報もある。
エネルギー
 ブラジルは再生可能な自然エネルギー(大型水力と伝統的なバイオマスを含まない)が占める割合を2010年までに10%まで引き上げるという案を挙げた。これには、ノルウェー、フィリピン、メキシコ、モロッコなどが支持を表明した。EUは、これよりもかなり弱い目標を見直すよう圧力がかけられている。これに関しては、閣僚級会合へと上げられるだろう。サウジアラビアは他のアラブ諸国にブラジル提案に支持しないようにと動いており、モロッコをアラブ諸国の利益を売り払ったと非難した。モロッコは、自国内で2011年までに10%、2020年までに20%という導入目標を持っている。
 昨晩、ファシリテーターによって、(化石燃料プロジェクトなどへの)補助金の段階的廃止に関する期限の設定と、企業の社会責任を促進するような政府間で合意された枠組みなどの官民のパートナーシップを促進するというパッケージテキストが出された。G77も新案を持っており、それは地域ごとの自主的な目標であるという情報が流れている。
共通だが差異のある責任
 10年前のリオサミットでは、各国政府は「共通だが差異のある責任」という原則に合意した。これは、すべての国々は、環境に対して同じ責任を持っているが、地球環境問題は主に先進国が引き起こしているという事実を受けたもので、先進国が率先して取り組みを行うべきだということを意味している。バリでの準備会合で、米国はこの原則に関して括弧をつけるよう要請し、そのまま残っている。リオ原則は環境保護や持続可能な開発にとって必要不可欠な概念である。もし、ヨハネスブルグサミットでこれらが削除されるようなことがあれば、サミット失敗ということになるだろう。
グリーンウォッシュ大賞:企業ロビイストに
8月31日、ヨハネスブルクのヒルトンホテルで行われる、国際商工会議所(ICC)主催の「世界サミット持続可能な開発パートナーシップのためのビジネス賞」は、史上最もひどいグリーンウォッシュ表彰式である。
「皮肉にもICCは、この表賞をすることで自らが持続可能な開発の模範であると示している。しかし、その表彰内容はまったくグリーンではないにもかかわらず、これにより政府や庶民は、ICCは持続可能な社会向けて本当に働いていると思い込んでしまう。これは最もひどいグリーンウォッシュである。」
とFoEインターナショナルのリカルド・ナバロは語る。
「もちろん、誰もが企業が良い行いをすることを望んでいる。しかし、環境の賞を受ける企業の評判が上がるかどうかということに関して、ICCの役割は、そうした賞の信頼を傷つけるものであり、最大のグリーンウォッシュを行う試みだ。」
ICCの記録には以下のものがある。
環境に対する予防的アプローチを支持するグローバルコンパクトの第7原則や、より大きな環境責任を促す第8原則があるにもかかわらず、京都議定書や生物多様性条約、有害物質の輸出を規制するバーゼル条約など、世界の主要な環境協定に強硬に反対するロビー活動を行っている。
「気候変動と環境の悪化に対して世界的に取り組んでいる」として東京電力を表彰している。東京電力は、日本最大の原子力発電事業者であり、また、炭素排出クレジットを得るために、タスマニアの3000haの原生林を伐採し、ユーカリのプランテーションにした。
拘束力のある企業責任を、ヨハネスブルクサミット実施文書に盛り込むことに抵抗しており、「すべてに応用可能」ではなく、実行可能ではないとしている。
国連による、企業の自主的取り組みのレビューから離脱した。国連とともに現在着手している他の取り組みに労力をさくべきとしている。
ICCはエンロン、モンサント、エクソンなどの企業も含む。エンロンは、この10年でUSの最大のスキャンダルを起こした。エクソンは京都議定書への反対から国際的なボイコット運動の対象となっている。モンサントの遺伝子組み替え作物を世界へ広める動きは、市民の間で大きな波紋を呼んでいる。
FoEは世界中の大企業の悪い行為を「巨大企業との衝突」という報告書にまとめ、紹介している。そして、各国政府に対し、市民やコミュニティーの権利に基づいた企業の行動責任と完全な保証責任を保証し、法的拘束力のある国際的手法を取り入れるよう求めている。
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