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Vol.04(29 August 2002)
 
 
WTO貿易交渉と化すサミット交渉
事務レベルの交渉は28日でほぼ終わり、29日からは閣僚級が9月2日の首脳級まで続く。政治宣言は南ア政府の意向で第一週は公式には一日のみ、あとは水面下での非公式会合で準備されている。そういった状況で今日の世界実施文書の交渉は次のレベルを意識した移行期の趣がある。ガバナンス、実施手段の章が2つのコンタクトグループの交渉で進められるなか、エネルギー、気候変動、有害物質、衛生、持続可能な生産と消費はほぼ閣僚級へ決着が持ち越されると見られている。

 実施手段の章で貿易協定の推進を圧す先進国側は、ガバナンスでは先進国の意向が色濃く反映される非国連の国際経済金融機関の改革に対し、途上国内の民主化を提案し途上国側の反発を受けている。このコンタクトグループは再開された27日から28日夜半までほとんど進展が見られない。これに対し、貿易、資金、グローバライゼーションを扱う第十章は昨夜からかなりの部分で合意を見、28日夜中には交渉を終える可能性も出ている。

 先週の非公式交渉始めから第十章貿易と資金に関する米の非公式提案で始まった。先のバリでの準備会合に続き昨年カタールで採択されたWTOドーハ宣言をベースとした提案で、その後一週間近くの交渉全体は、さながら来年のメキシコでのWTO会議を睨んだ貿易交渉に乗っ取られた様である。これまでのところ、資金ではFDI、輸出保険、ODA目標、重債務最貧国救済など、主要輸出産品価格変動などの点で合意に至る一方、平等だが差異ある責任(リオ原則)の引用、知的所有権保護と必需医薬品のニーズの衝突、市場アクセス、民主的な国内ガバナンス、国際経済金融機関の意志決定改革、対外債務救済の拡大や補助金改革の点が積み残しとなっている。

 途上国はこれまでに自国に課された貿易協定・市場開放による社会、経済的影響に深い懸念を抱いており、その言及を求めている。

 その一方で、途上国側は環境や人権、ILO労働基準などが貿易交渉で利用され先進国市場の閉鎖につながることを恐れている。そこにはGATT協定の下で自国市場を開放されるなか、約束された先進国市場の開放がいっこうに進んでいないという事実がある。

 またこの関連で重要なのは、90年代に入りますます影響力を増してきた非国連の国際貿易金融機関と、数百に上る国連条約等を通じた国連システムによる地球ガバナンスとの対立が顕著になっていることである。極端な一方的外交を進めるブッシュ政権の登場で、米国は自国が主導できるこれら非国連機関が地球的統治の実質を押さえるのだという姿勢を隠そうとしない。ドーハ宣言では貿易に関係する実施手段を採用する国連環境条約群と貿易協定の優劣が次回貿易交渉で評価されることになっており、サミットで国連側がこれら国連外の機関にその判断を譲り渡してしまうかどうかは、ますます難しくなる環境と経済の関係、地球ガバナンスの将来に深い影響を与える可能性がある。



企業責任の行方は?

企業の責任に言及するパラグラフが、29日にも決着される可能性が出てきた。バリ準備会合終了時の実施文書(バリテキスト)中にあった企業責任のパラグラフに関しては、ジョン・アッシュ率いるコンタクトグループ(貿易・資金)で話し合いが行われているが、このコンタクトグループの交渉が大詰めを迎えている。

企業責任に関するパラグラフは交渉の中で幾度となく形を変えてきた。企業責任の必要性に対する関心は高まってきてはいるものの、特にアメリカ、EU、そして日本は強く反対しており、「自主的」ということに固執しているため合意が達成されにくいところといえよう。G77は全体としては後ろ向きではあるが、G77の中でも意見が割れているようで、ここは企業責任に対して前向きな政府を押す必要がある。

28日午前3時まで続いた直近の交渉では、ノルウェーがバリテキストの中にあった「人権や環境、そして労働水準に関する国際合意を基本とし、(企業責任を促進する)」という文言を復活させることを要請したが、今度はG77がこれに合意できずに括弧付けを行い、交渉はストップした。ここでG77は、EUとこの条項に対する新たな提案を行うということを申し入れ、現在は次のコンタクトグループ再開待ちというところである。

争点となっている「枠組み」という文言が入っていることは評価できるものの、これが「現存する民間と政府のパートナーシップの促進のため」というところも問題である。

企業責任に関する国際的な規制作りに着手する可能性を残せるかどうか、働きかけも正念場に差し掛かっている。  
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