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質の高いCDMプロジェクトの奨励を―NGOが日本政府に申し入れ
2003年3月13日
内閣総理大臣 小泉 純一郎殿
外務大臣   川口 順子殿 
財務大臣   塩川 正十郎殿
経済産業大臣 平沼 赳夫殿
国土交通大臣 扇 千景殿
農林水産大臣 大島 理森殿
環境大臣   鈴木 俊一殿
CC CDM理事会副議長 岡松壯三郎殿
拝啓
私達は、京都議定書によって設けられたクリーン開発メカニズム(CDM)と、議定書目標達成のための日本の同メカニズム利用について、日本政府に対し以下の点を申し入れます。CDMの持続性と効果を確かなものとするために、質の高いプロジェクトを奨励するため今から行動に移されるよう要望します。
私達は、非附属書I国での温室効果ガス削減と持続可能な開発双方を達成するべくそのポテンシャルを引き出すためには、再生可能エネルギーを重視し、吸収源や大型の化石燃料プロジェクトを除き、水力は10MW以下の小規模のものに絞ることが不可欠であると考えます。残念ながら、締約国は第六回締約国会合(COP6)に於いてそれとは異なる決定を行い、原子力のプロジェクトからのCERは発行しないという合意を得ることはできたものの、その後の交渉でCDMプロジェクト適格性に制約を設ける考えは否定されました。この結果、気候を守ることと持続可能な開発の手段としてのCDMの実効性が損なわれることになりました。
私達が懸念を持つこれらのプロジェクトは、その多くが追加的ではない活動ーつまり、CDMがなくとも実施されたであろう活動です。CDMが主に見せかけのクレジットを生み出すための道具となり、経済効率や持続可能な開発の視点からの手段が二次的なものでしかなくなってしまう危険があります。潜在的にかなりの量となり得る既存の活動からのクレジットが大量に流れ込むことにより、クレジット価格が低落し、結果的に、本来持続可能な開発のためにCDM下で優先される必要のある、再生可能エネルギーのようなプロジェクトが閉め出されてしまうことになるでしょう。
しかしながら、私達は、原子力のクレジットが排除された様に、これらの技術からのCERを使わないと独自に決めることにより、日本がCDMの充全性と効果を大きく促進させることが出来ると考えています。これが真に持続可能なCDMへの強い政治的支持となるばかりでなく、形成されつつある炭素市場のもとで、最も魅力的な型の技術を示す明確なシグナルを投資家や買い手に送ることにもなります。日本は大口のCERの買い手となるでしょうし、特定の技術に対し明確な選択を与えることで、炭素市場に前向きな影響を与える機会を持っています。
私達は、これがいかなる意味に於いても、自国の持続可能な開発の優先順位を決める非附属書I国の権利を侵害するものではないことを強調します。そうではなく、原子力に於ける約束同様、附属書I国が同様の権利を持ち、どの様な市場に於いても、何を買うかは買い手が決める特権を持つと認識しています。消費者が質を改善するために定性的基準を設けることは、食品、林産品、電力等の商品で明らかな前例があります。
従いまして、私達は日本政府が以下の型のプロジェクトからCERが派生しないようにするよう、ここに求めるものです。
1.吸収源プロジェクト
  CO2を吸収する森林他の生態系ー炭素吸収源に基づくプロジェクトに関しては、潜在的な吸収量の大きさと科学的他の不確実性とそれに由来するリスクに関して強い懸念が残ります。

これらの不確実性やリスクの問題は何れも解決されてはおらず、この評価は2年前同様、今も変わってはいません。心配するにたることとして、最初のCDM承認過程のプロジェクトの中には、産業用単一種植林での炭素吸収によるクレジットを含むものがあります。世界銀行の炭素基金を通じ、日本もこのプロジェクトに出資しています。これは気候によいことではなく、日本や附属書I国全体の信用を損なうものでもあります。吸収源がCDMに含まれたからといって、それを使わなければならないというわけではありません。
2.大規模水力プロジェクト
  大規模水力を助成することは持続可能な開発というCDMの使命と合致するものではありません。世界銀行と国際自然保護連合(IUCN)主催の世界ダム委員会が示したように、大規模水力プロジェクトは深刻な社会的、環境的悪影響をもたらし、慢性的な低パフォーマンスを示しています。さらに、大規模水力はとりわけ追加的でない傾向が見られます。これらが生み出す大量のCERは、CDMの実効性と信用に対し、深刻な問題を提起しています。現在CDMの検討対象として上がっているプロジェクトに関し、潜在的なクレジットの約40%が、大規模な、そしてほとんどが追加性のない大規模水力プロジェクトからのものです。更には、貯水池がかなりの量の温室効果ガスの発生源となり得ることを示す証拠が相次いで示されています。従って、私達は、CDM適格な水力プロジェクトの10MW以下にするよう、またそれに加え、クレジットを生み出す如何なる水力プロジェクトも世界ダム委員会が設けた基準を満たすものであるよう求めます。
3.石炭プロジェクト
  CDMを通じクリーン・コール技術のような化石燃料プロジェクトを支援することは、気候に火を付ける燃料を注ぎ込むようなもので、潜在的に炭素市場を占有し、再生可能エネルギープロジェクトに悪影響を及ぼします。現在、途上国では官民ともに化石燃料プロジェクトに巨額の投資をつぎ込んでおり、CDMへの最も楽観的な投資規模見通しをも矮小化してしまう程の額に上ります。CDMを、この大海に落ちる一滴としてしまうことは、明らかにその2つの使命を侵すことになるでしょう。
4.中核となる民間開発業者が京都議定書の未批准国からであるプロジェクト
  米国やオーストラリアのような国々の、京都議定書を弱体化させようとする明らかな意図を考えると、これらの国々の企業が、京都メカニズムから恩恵を得ることは許されるべきではありません。しかしながら、既に、最大のプロジェクト収益を得るためCDMを利用する米企業があることを示す十分な証拠があります。オランダ政府が現在検討中の4つの大規模水力CDMプロジェクトが米国のエネルギー、エンジニアリング企業の子会社によって開発されており、一方で、ケニアとインドネシアでは米エネルギー/化学会社がCDMプロジェクトを開発しており、これもオランダ政府のCDM対象プロジェクト候補に含まれています。これらの6プロジェクトを合わせると約3000万トンのCO2(30MTCO2e)、額にして約1億2千万米ドルのクレジットに相当します。豪政府の議定書自体への強硬な反対にも拘わらず、オーストラリア企業もCDMの利用に目を向けています。

議定書未批准国の企業にCDM利用を許すことは、不適切かつ逆効果で、CDMへの世論の支持を侵す危険があります。これらの企業は議定書下での排出量削減の責任を逃れてかつ、そのメカニズムによって提供される恩恵を自由に享受できる状況を生んでしまいます。そうすることにより、彼らが自国の政府に批准するよう促す大きなインセンティブが失われてしまいます。結局、もし自分たちがその責任を負わなくても、現状で議定書批准国の削減責任から利益を得ることができるとしたら、誰が批准を支持するでしょうか?更には、議定書の制約に実際直面する日本や欧州の企業は、なぜ彼らの政府が、議定書に制約されない競争相手が排出量削減義務を逃れているにも拘わらず京都メカニズムを利用しようとする、その手助けをするのかと問いかけ始めることでしょう。

これらのプロジェクトのCERを認めないことにより、CDMと京都議定書の実効性と充全性を大きく改善し、CDMにおける日本の主導力を高めることにつながります。

どうか私達の要望に対して、早期にご返答頂けるよう願います。
敬具
賛同団体:

国際河川ネットワーク
CDMウオッチ
気候ネットワーク
WWFジャパン
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
環境エネルギー政策研究所
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