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拘束力のある企業責任に向けて
FoEインターナショナル ポジションペーパー


【要約】

本文書は、企業の行動責任と補償責任に関する、効果的で法的拘束力のある国際的枠組み、あるいは条約の事例を検証するものである。この条約には、以下のものが内包される必要がある。それらは、1)企業活動によって影響を受ける市民やコミュニティーのための法的な権利、2)社会そして環境に関する企業の責務、3)企業が世界のどこで活動をしようとも、高い水準の行動規範を確保するための規則である。この提案では、「他国籍企業のためのOECDガイドライン(OECD Guidelines for Multilateral Enterprises)」などの自主行動を定めた文書の発展と本質的な限界を認識すること、そして拘束力があり、強制力のある枠組みの中でのそうした自主行動イニシアティブに関して最良の規定を記述することを模索している。FoEインターナショナルは各国政府に対して、持続可能な開発に関する世界首脳会議(以下:WSSD)において、企業責任条約のための交渉開始にコミットするよう働きかけている。


【パート1】法的拘束力のある企業責任の必要性

FoEインターナショナルが企業責任に懸念を抱いている理由

先進国と途上国両方からの68団体の国際的な連合体として、FoEインターナショナルは企業の行いに関して幅広い経験を有している。持続可能な開発の実現、環境的正義の確保、環境債務や気候変動などの問題の認識とそれの解決に向けた行動をとるには、政府は企業が責任ある役割を果たすことを確保する必要がある。ローカルアジェンダ21に記述のあるようにコミュニティーを通じた行動へのコミットメントを考えてみても、企業が影響を及ぼすコミュニティーに対して行う活動に関して責任を負わなければ、持続可能な開発のための行動の基本的な柱は崩れることになる。FoEインターナショナルの経験では、市民やコミュニティーのための明確な権利の確立は公平な結果を生み出すための最良の方法である。本文書に記述のある原則を満たした行動責任や補償責任の確立した規定があれば、市民や政府は例えばボッパールでの有毒ガス漏出事故、ナイジェリアの化石燃料産業の活動、エリカやエクソン・バルディーズなどの原油流出事故などの危機、またダイアモンド採掘などの懸念に対処する、あるいは回避するのが容易であったかもしれない。


企業責任に関する経緯と現状

1992年に開催された地球サミットにおける大きな失敗は、国連多国籍企業センターの存在がなきものとなり、多国籍企業に関する行動規約策定プロセスが放棄されたことだ。拘束力のあるルールの代替案としての自主的努力を確立する取り組みはあったが、結果として国際的枠組みのない状態が過去10年間続いた。これはこれまで認識されてきたことだ。企業責任に関する進展が特定の側面で見られたことは多くあったが、こうした動きは企業のグローバル化に関して広く波及した市民や政府の懸念に対する首尾一貫した対応とは言えなかった:

国連開発計画は人間開発報告1999年度版の中でこのような結論を出している。「多国籍企業は世界経済における重要度と独占性が高すぎるため、自主規制は十分ではない。世界的に同意された原則や政策は以下の要素のために必要である:労働基準や人権を守ることを確保するための人間の懸念への対処、公平な貿易や競争力のある市場を確保するための経済効率性、劣化や汚染を防ぐための環境的持続可能性」。また同報告書はこのようにも述べている。「多国籍企業は世界経済においてすでに独占的である。しかし、それらの活動の多くは記録されず、説明されることもない。株主への報告だけ行っていれば良いということは全くないのである。国内の法や規制、そして規則の寄せ集めだけでなく世界的ガバナンスの体制の中に置かれるべきである。」

「労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関宣言とそのフォローアップ」が1998年に採択されたのを受けて、国際労働機関(ILO)は「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」を打ち出し、これを政府や労働者、雇用者、そして多国籍企業による活動によって、海外直接投資や企業活動から生み出される労働や社会の問題に対処するための枠組みと位置づけた。これは、こうした原則を解釈し、調査を行う多国籍企業局によって維持されている。

国連人権委員会の下部組織である人権小委員会は現在、「企業のための基本的人権原則草案」に関して討議を行っている。これは、企業の義務や人権侵害に関する法的な責任について述べており、多くの条約や国際協定には、企業の義務が内包されているとしている。しかし、こうした義務はこれまで、人権問題に関する企業責任のための法的枠組みとして機能するには体系的に充分でなかったため、原則が新たに作られている。

1995年のコペンハーゲンで開かれた社会開発世界サミット以後の進捗状況レビューのために開かれた国連臨時総会では、法的枠組みを設定することによる企業の社会的責任の必要性が浮かび上がった。2000年7月1日付けの国連総会決議S-24/2では、このような記述がある。「企業の社会的責任を促進するための法、経済、そして社会政策の枠組みを持つことにより、社会発展と成長の間の関係に関する意識を向上させ、企業の社会的責任を助長する」

1999年の英連邦首脳会議で採択されたグローバル化と人々を中心とした開発に関するファンコート宣言でも、民間セクターは責任を負わなければならないとしており、その中では、「よいガバナンスと経済発展は直接関係していることを認識し、我々はすべての公的階級そして民間セクターにおいて、より良い透明性、行動責任、法規制、そして汚職の根絶を追及するという我々のコミットメントを確認する。」と記されている。

EUは現在、企業などの補償責任に関する要素を明確にするために補償責任に関する指令をまとめている。しかし、これは地域的なイニシアティブであり、補償責任に関する国際的枠組みの一部分をなしていたとすれば、さらに広く行き届く潜在性を秘めている。国連環境計画や政府の多くは補償責任に関する枠組み条約の構想を挙げている。

持続可能な開発委員会(CSD)第6回会合での産業と持続可能な開発に関する決議6/2では、持続可能な開発のための基盤は良い規制にあるとしており、「委員会の強調するところは、持続可能な開発の達成のためには、政府が健全な規制の土台を基礎とした、能力構築のための政策の枠組みを生み出し、維持することが重要である。そしてこれは経済政策との分別のある調整、自主的なイニシアティブや協定、また公と民のパートナーシップで補足される」としている。

FoEインターナショナルは、企業の説明責任と補償責任に関する枠組み条約、あるいは同様の確固としたメカニズムの中で、規制の土台を確立することを通して前進し、こうした措置の経済政策との「分別のある調整」において期待に沿った結果がWSSDで出なければならないと考えている。「企業のための基本的人権原則草案」と提案されている補償責任条約などのイニシアティブをまとめることで、首尾一貫性が確保されるだろう。


責任の必要性

多くの政府はグローバル化が持続可能な開発の支援となる必要性を認識している。企業責任のための法的枠組みはそのようなアプローチの必要な柱である。したがって、企業責任への要望は高まり、多くの変化が起こっている。

真に世界的な企業の成長というものは、企業が多国籍にわたって活動するものである場合、市民やコミュニティーにとって、補償をうけることがより難しくなったということを意味している(たとえば、多国籍企業の法的な本拠地は断定できない)。

非関税障壁の除去をおこなう中で、市民の利益に関する制約が緩和されたり廃止されたりする傾向がある。

多国籍企業の巨大化によってそれらの支配力や影響力の統合が起こっている一方で、企業トップとコミュニティー、そして企業活動によって影響が及ぶ人々はお互いに疎遠になっている。

以前は政府によって運営されていた産業やサービス業を民間企業がコントロールする傾向は強くなってきており、しかも政府が対処しなければならないより広い意味での市民の利益に関する責任問題への取り組みがなされていない。

企業の影響は衰えるところを知らず、そうした影響はともに企業の株主や取引先とは関係なくなってきている。

しかし、企業は株主だけに法的な責任を負っているのが現状である。

FoEインターナショナルは、企業の肯定的な側面も認識している。特に地域経済の一端を担い、地域のコミュニティーへの責任を負っている中小企業がそうである。また、企業の技術や創造性などにおいて進歩がみられるために必要な、再生可能エネルギーなどの明るい産業もある。しかし、議論となっているのは、株主だけでなく他の利害関係者に対しての企業責任がどのように改善した形で果たされるべきかということにある。企業がオーナーや株主に対して負っている責任は詳細にまとめられた規制や規則に記述してある。FoEインターナショナルは、新規の規制によって他の利害関係者への責任も保障されなければならないと考えている。


企業の社会的責任?

被雇用者、コミュニティー、消費者、市民団体は、雇用、汚染、遺伝子操作、製品安全性、公共事業、そして他の多くのものに関して懸念を挙げている。最大の懸念は、最貧国における企業の行いである。こうした国々では、ガバナンスと財政的な制約のために、法律、環境、健康、そして安全に関する基準が先進国のそれに追いつくのが困難となっている。例を挙げれば、環境、もしくは社会への影響評価はおろそかに行われている、もしくは全くおこなわれていないということもありえるかもしれない。

化石燃料セクターに関しては、汚染、資源の略奪、そして人権侵害などが懸念として挙げられている。森林セクターでは、多くは違法貿易である。EU向け熱帯材の半分以上は違法と考えられる。先住民族の土地での伐採、汚職、原生林の伐採は共通の懸念である。衣服や玩具などの産業においては、低賃金で長時間労働といういわば搾取工場のような条件や、健康や安全への配慮不足、また子供の労働力を用いていたことが、文書に記録されている。

企業の中には、倫理的な活動において歓迎に値する進歩を見せたところもある。これは、政府によって支持されており、中には企業の社会的責任を推進する義務を閣僚が負っているところもある。しかし、そうした自主行動はすべての企業にとって一般的ではない。すべての企業が平等に環境や社会的影響に対して責任を果たすようにされなければ、企業行動の改善が全般的におこなわれるインセンティブはほとんど残らないであろう。さらに、もっと社会的に責任を果たしたいとする企業を妨害しているのは、コストの外部化と責任を逃れ続けることによって価格をさらに下げている競争相手である。中には倫理的に良い投資を扱うところが新興セクターとして出てきている地域もあるが、主流の投資家の支持を得ていないため、それは小規模であり、多くの企業はもっと社会的な責任を果たすことに関して限定的な進展しか遂げていない。それゆえに自主的なイニシアティブを伴った代替的な規制は、実際に十分な進歩を遂げられなかった。


国境を越えた解決法


企業は国境を超えて活動し、往々にして製造、販売、そして所有権はつじつまの合わない規制をもった異なった法的管轄下におかれている。企業は株式市場にしばしば上場され、活動するところや本拠地のあるところからは離れた国々に拠点がある。どの国においても法的枠組みの違いによって、その国における企業の短期的な競争力に対する本当のあるいは実感できる影響がでることになる。政府の中には、国際市場で競争力を保つために企業が有用と思わない規制を一方的に導入することを嫌うようになってしまったところもある。ゆえに多国間での法的拘束力をもった公平性をもたらす枠組みを作ることは賢明なことである。枠組み条約は調印国の政府に対して各国独自の法的な伝統を考慮したうえでの合意をもたらすことができるものである。


自主的イニシアティブを超えて

企業責任に関する最近の進歩のほとんどは自主的イニシアティブの発展によってもたらされたものである。国連グローバルコンパクトは企業の社会的な責任のある自主行動を支持するプロセスを作るために生み出された。OECDはさらに確立されたメカニズムである「多国籍企業のためのガイドライン」の改定をおこなった。途上国で事業展開する欧州企業のための欧州行動規範はさらなる自主的アプローチであり、これは事例の情報公開のためのプラットフォームを設けている。他の多くの組織や産業団体は部門ごとの行動規範を作り出している。これまで、こうした規範は継続する企業の力の乱用を防止することができなかった。そして、これには多くの理由がある:

不遵守の場合の資金的インセンティブとつりあうような、遵守できた場合の強力なインセンティブがなかった。

強制執行はもちろんのこと、独立機関による実証さえもなく、自主規制を通じた形骸的な遵守に頼っていた。

市民や利害関係者への権限付与がない。代わりに関係者による対話のようなアプローチが用いられても、企業 責任問題をその企業によって定義されるようなトップダウンなものとして提示している。

責任を履行するには自主的アプローチを超え、遵守の場合の適切な法的、資金的インセンティブをもたらすメカニズムを確立する必要がある。また、企業に異議を申し立てるような利害関係者に権限の付与もしなければならない。とりわけ、自主的イニシアティブが前向きなものにも、その反対にもなることができるが、それらは権利、義務、そして首尾一貫した行動の基準を確立する強制的な規制の代替案となることはできない。


企業責任の目的


企業責任条約は以下のことをおこなわなければならない。

悪影響を受けている利害関係者が権利の施行を通して補償をうけるためのメカニズムの確立

企業に対する社会的、環境的な義務の確立

首尾一貫した高水準な企業行動ための規則の確立

先進的な企業が利益を享受でき、企業のロビー活動よりも市民の要求に対して適切に対応する市場の枠組みの創出

制裁措置の確立

企業が南の国に対して負っている環境債務の払い戻しの確保

環境不公正、南北問題の脅威にさらされているコミュニティーのための環境的公正性の確保

FoEインターナショナルは、株式上場企業への責任追及を提唱する。競争しなければいけなかったり、業者が高い操業水準を保てないような価格や納入時期を要求されたりと、小規模な会社に低い水準の操業を強いているのはこうした企業の経済力であることが往々にしてある。さらに、大企業はより容易に、そしてより迅速に高水準を満たすことができる。株式上場企業の責任を確保することによって、民間企業が運営体制の改善を確実にすることを模索することにもなる。また、これによって、短期的で不当な利得や、より広いコミュニティーへのコストの外部化を促進してしまう株主の収益を最大にするという法的義務の存在の大きさにも対処することにもなる。


【パート2】法的拘束力のある企業責任の要素

企業責任条約は締約国政府に対して以下のことを要求する。


企業の責務の導入


1.株式上場企業、取締役、役員レベル職員に以下の責務を課す:

企業の環境的そして社会的影響、物質的危険性、環境的そして社会的な規範違反に関して完全な報告をする(そのような報告書は独立機関によって審査される)

影響を受けるコミュニティーとの効果的な事前協議の実施を確保する。これには、環境影響評価(EIA)や関連文書すべてへのアクセスを含む

企業活動が引き起こす環境そして社会への負の影響を企業の意思決定において最大限に考慮にいれる


企業と取締役に対する責務
取締役を特定の責務遂行者に含むことによって、現存の企業ガバナンスメカニズムを通して目的を果たすことが確保され、直接的に取り組む責任のある個人を設けることになる。


報告

報告方法を改善することによって、グローバルレポーティングイニシアティブ(GRI)のような進展を支持することなるが、第三者による検証を要求する重要な一歩を踏むことができる。しっかりした報告をおこなうことによって、投資家が重役と同じ情報を入手することを確実にし、市場が企業の"真"の価値を基にすることを確保する。


事前協議
EIAや事前の協議によって影響を受けるコミュニティーの参加体制を改善することができ、投資に関する相互のリスクや利益のより広い理解が可能になる。有用な先例としては、1989年のILO先住民・種族民条約がある。意味のある評価や協議をおこなわないことは強制執行の対象となるべきである。


考慮
現在、株式上場企業の取締役は株主への説明を行い、利潤還元を最大にする責務がある。新規の条文では、コミュニティーなどの他の関係者への説明をすることも彼らに要求し、こうした影響を受ける他の関係者の利益と利潤還元のバランスをとることとする。


企業の拡大補償責任


2.取締役に対する国内の環境・社会関連法違反、そして、取締役と企業に対する国際法や協定の違反に関する拡大補償責任


取締役の補償責任
上記の取締役に対する新規の責務の他に、現存の国内環境・社会法に関する責任がある。取締役は、個人として適応される法を企業が遵守すること、あるいは不遵守に関して責任を負うべきである。先例としては、1990年のイギリス環境保護法があり、これでは企業の汚染行為に関して取締役に補償責任が課されている。このような補償責任は企業合併などがあっても継続されなければならない。


国際協定や国際法

国際協定違反につながる企業活動に対する取締役や企業への拡大補償責任はすでに補償責任枠組み条約として考慮されている。多くの政府がWSSD準備委員会会合プロセスにおいて、この問題を優先事項として取り上げた。これにより、現在は国家のみに適応される多くの現存する環境や人権に関する協定が企業に直接適応されることを確保する。


環境債務
補償責任問題は生態系の劣化や回復のための補償も解決しなければならない。


市民の補償を受ける権利の導入

3.企業活動によって悪影響を受ける市民やコミュニティーが補償を受ける法的権利の保障は、以下を含む:

親会社の本拠地が定まっていると企業が主張をする場所において、世界中の影響を受ける人々が訴訟を起こ すための法的アクセス

利害関係者による企業の決定への法的な異議申し立て

そのような異議申し立てを支援するための公的資金を投入する法的な支援制度


公平性へのアクセス
公平性へのアクセスは責任を確保するためには必要不可欠である。提案では、市民やコミュニティーや影響を受ける第3者が、必要なれば親会社の本拠地のある国内の法廷で裁判を起こせることを担保する。たとえば、南アで起きたケープ社のアスベスト事件やその他の事例は、特定の法廷は審理をするための関連性のある場でなく、企業が責任回避をすることが可能であったこともあり、そのようなメカニズムの必要性があることを実証している。


決定への異議申し立て
企業や取締役が新規の責務を負っているのなら、決定事項に対して異議を申し立てる根拠を持つ人々のための権利が必要となる。これは新規の責務や企業の環境そして社会に関する報告に対しての法的拘束力が生まれることになる。法的な異議申し立ての権利は、真の懸念が抜け穴によって排除されることがないようにする一方で、濫訴を防止する必要がある。第3者としての関係者は訴訟を起こす材料をそろえるために、利権のあることを実証するか、損害を示すことを求められるかもしれない。


法的な支援
発展途上世界の国民は必要なコストがあるために躊躇しており、敗訴した場合に請求される企業のコストなどのリスクによって訴訟当事者などがたじろいでいるということがある。このため、法的な支援制度が必要である。


資源へのコミュニティーの権利を確立する

4.コミュニティーや人々が健康で持続可能な生活をおくるために必要な資源へのアクセスや管理に関する権利を確立する。それには以下の権利が含まれる。

先住民族やローカルコミュニティーのための共有の資源や森林、水、漁業、遺伝子資源、鉱物などの世界的共有物に関する権利

事前協議や企業の事業への拒否権、立ち退きに反対する権利

企業のためや企業によって収奪された資源に対する補償や賠償の権利

FoEは環境権について長期間にわたり提唱してきた。そして多くの政府もまた、WSSD準備委員会会合において、環境権の条約についての交渉を開始することを提案した。資源の監督権はそのような権利がどのように行使されるべきかということを示している。有用な先例としては、アボリジニの人々に彼らの土地における採鉱に対する拒否権を与えた1975年のオーストラリア土地権利法がある。実際に、これによって彼らが採掘権、職の提供、訓練などに関する条件を設定することができた。また、1997年のフィリピン先住民族権利法は、先祖伝来の土地における企業のプロジェクトに関して事前のインフォームドコンセントを必要としている。1989年のILOの先住民・種族民条約でも、コミュニティーや地域の人々の権利を尊重することが要求されている。コミュニティーには、権利の行使における予防原則を適応する権利や、障害の潜在性に関する立証責任が明確に関係企業に課されなければならない。


首尾一貫した高水準な行動規範の確立

5.環境、社会、労働の権利や人権に関する最小限で高い水準の規範を確立し施行する。これはたとえば、現存する国際協定や発展途上国に対する特別で差異ある対応に関して望ましい状況を反映することを基礎とする。

この提案している条約の焦点はメカニズムの実施にある。これは、特に貧しい国々やコミュニティーにおいて関連する品行の規範が実施され、施行されることを担保するためには能力開発が不可避であるためである。どのような規範であっても、それらは現存し発展段階にある多国間の環境・社会協定を基にされるべきである。発展途上国に対する"特別で差異ある対応"という概念は十分に確立されている。発展途上国が規範や資金支援へのアクセスを確立するためにそのようなアプローチをこの規定に適応することが適切かもしれない。行動規範はまた、たとえば、IUCNのIからIVの保護区カテゴリーのような高い生物多様性価値のある地域などにおいてはさらに厳しくある必要がある。


制裁の導入

6.こうした新規の責務、権利、補償責任(違反があればどこでも)の不履行の際に企業に課する適切な制裁のための国内法規定を確立する。それには以下が含まれる。


国内の株式市場への上場を一時停止する

公的助成、保障、融資などへのアクセスを抑制する

罰金

極端な事例の場合は、有限責任ステータスを剥奪する

一定の適切な法的制裁が必要である。政府はまた、企業に対する公的な資金支援を管理することができる。それゆえ、これは責任を確保する機会があることを示している。企業審査の原則も確立されなければならず、これには先例がある。中には、汚職条約やOECDの多国籍企業ガイドラインに違反した際には企業の輸出信用保証を留保しまうことを考慮している国もある。また、世界銀行のような国際金融機関による融資も審査される。


国際刑事裁判所の役割を拡大する

7.環境・社会の権利や人権に関する罪を犯した場合、取締役や企業を裁くために国際刑事裁判所の管轄を拡大する。

国際刑事裁判所は公聴会のための独立した場を設ける。これにはおそらく環境の濫用の際の特別法廷も含むであろう。審問あるいはこの法廷への付託などの適格性も定義づけられなければならない。


独占に関する管理を改善する

8.企業の合併や独占的慣行に対する国際的管理体制を確立する。

この措置は、いかなる規模でも、どこの市場においても、国内であろうが国際であろうが、独占状況がこれ以上の悪化を防ぐための確固たる制度を導入する一方で、国内の管理体制の強化を必要とする。そのような措置は、経済活動体の上位50以上が企業であるという結果を生み出した企業の経済力の統合に関する懸念に対処する。拘束力のある行動責任や補償責任制度のもとで対処される必要のある補償責任への企業の影響という観点から、合併もまた重要である。


実施制度の確立

9.条約の実施や効果をモニターし、レビューするための継続する体制やプロセスを確立する。

効果的な組織形態、厳密な実施、強制実施、そして効果的なモニタリングの制度がこのような条約が機能するには必要不可欠である。

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