FoE Japan
開発金融と環境プログラム
開発金融 トップ キャンペーン 資料室
開発金融と環境プログラムキャンペーン>JBIC個別プロジェクト>スリランカ:南部交通網開発>質問趣意書
南部交通網・トップページ
プロジェクトの概要
スリランカ・南部ハイウェイに関する質問趣意書


 2004年8月5日、民主党の前田雄吉衆議院議員が、スリランカ・南部ハイウェイに関する質問趣意書を提出しました。以下は、その質問とそれに対する日本政府の答弁です。

スリランカの南部ハイウェイ建設事業(以下「本件事業」という。)に対しては、一九九九年にアジア開発銀行が約九十億円の融資を決定し、二〇〇一年には国際協力銀行が一八七億七千万円の政府開発援助の供与を決定している。

 しかしながら本件事業に関しては、環境影響評価及び社会影響評価が不十分であること、ルート選定の適切性、さらに補償及び住民移転に関する様々な問題が現地より指摘されてきた。これらの懸念の声を受け、スリランカ首相はスリランカ国内の高速道路事業に関する委員会を設置した。現在、委員会では優先事項として特に本件事業の問題に関する審議が行われ、その問題への対応が検討されている。またアジア開発銀行においては、現在、アカウンタビリティーメカニズムのスペシャル・プロジェクト・ファシリテーター(以下、「SPF」という。)が問題解決を図っている。一方、国際協力銀行も本件事業の問題を認識し、現在はその解決に向けて調査及びモニタリング等の作業を行っているものと承知している。

 以上を背景に、次の事項に関し質問する。

一、 二〇〇四年八月現在まで、本件事業に関して、国際協力銀行からスリランカ政府への融資の拠出は行われていないものと理解しているが、かかる問題が解決されるまでは、融資の拠出は見送られるべきではないか。これに関する国際協力銀行の見解を示されたい。

(日本政府答弁)
 スリランカ民主社会主義共和国(以下「スリランカ」という。)政府は、コロンボ近郊から南部地域までの自動車専用道路を建設する事業(以下「本件事業」という。)について、わが国政府は、二千年十一月十三日にスリランカ政府との間で円借款の供与に関する交換公文を締結し、国際協力銀行は、二千一年三月三十日にスリランカ政府との間で借款契約を締結した。

  本計画は、スリランカ政府の事業であり、その実施における環境等への影響については、第一次的にはスリランカ政府が責任を持つべきものであるが、スリランカ政府は、本計画の策定にあたり環境影響評価を実施し、本計画の路線選定などに特段の問題はないと考えていると承知している。我が国政府としても、国際協力銀行による審査を通じ、スリランカ政府が環境等の面への影響を十分に考慮して路線を選定したことを確認している。また、住民の移転を伴うものを含めて本計画の実施に当たって必要となる土地収用に係る補償は、スリランカ政府が作成した移転実施計画に基づいて実施されることになっており、一部では既に支払いが開始されていると承知している。

  スリランカ首相が本件事業に係る住民からの苦情を処理すること等を目的とした委員会を設置し、また、アジア開発銀行において異議申し立て協議手続きが進行していることは承知している。国際協力銀行は、政府開発援助として実施される本計画への円借款供与がその目的を十分に達するよう確実を期すとの観点から、本計画について環境等の面への配慮が適切に払われていることを確認するために、これまで必要に応じ、住民移転に関する状況の把握や関連情報の取得等を行ってきているところであり、我が国政府は、これまでに本計画を中止しなければならないような問題は生じていないと承知している。

  国際協力銀行は、本計画の工事に先立つ設計及び入札補助の実施のために円借款の拠出を既に一部開始しており、我が国政府及び国際協力銀行としては、引き続きスリランカ側において本計画について環境等の面への配慮が適切に払われることを確認しつつ、今後もスリランカ川での作業の進ちょくに応じて拠出を行い、もって、スリランカの経済社会開発を支援していく考えである。

二、 二〇〇四年八月現在まで、本件事業に関してアジア開発銀行がスリランカ政府に対して融資した総額、日本政府が理解している本件事業の総事業費、及びその内訳踏まえ、融資が適正と考えるかどうか政府の認識を明らかにされたい。

(日本政府答弁)
 我が国政府が理解している本件事業の総事業費は、千九百九十九年十一月のアジア開発銀行の融資承認時点で、約二億九千六百万米ドルであり、このうちアジア開発銀行の融資承認額は、六千四百八十六万特別引出権(融資承認時点で約九千万米ドル相当)であると承知している。
そして、アジア開発銀行融資承認時点で、アジア開発銀行のほか、国際協力銀行が約一億二千万米ドル、ノルウェー開発基金が約六百七十万米ドル、スウェーデン国際開発庁が約百万米ドル、スリランカ政府が約七千八百二十万米ドルをそれぞれ本件事業に資金提供するとされていた。
アジア開発銀行がこのような金額の融資を決めたことに、特段の問題があったとは考えていない。

三、 国際協力銀行は、現在、本件事業の環境影響評価及びルート選定の問題に関する調査を行っているものと承知しているが、その調査期間、調査方法、分析手法の実情を踏まえ、これに関する政府の認識を明らかにされたい。

(日本政府答弁)
円借款供与の対象となる事業において、環境影響評価は、借入国政府が行うものであり、国際協力銀行が行うものではない。また、本計画の路線選定についても同様であると承知している。
 しかし、国際協力銀行は、政府開発援助として実施する本計画への円借款供与がその目的を十分に達するよう確実を期すとの観点から、スリランカ政府により本計画について環境等の面への配慮が適切に払われることを確認するため、これまで必要に応じ、スリランカ政府との協議等を行い、住民移転に関する状況の把握や関連情報の取得等を行ってきている。国際協力銀行のこのような活動は適切なものであると考えている。

四、 本件事業の環境影響評価及びルート選定に関する調査は、現在、国際協力銀行が独自に行っているものと承知している。本件事業は、二〇〇三年十月以前に融資要請がなされているため、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(以下、「新ガイドライン」)」の適用外だが、新ガイドラインの基本姿勢は本件事業にも適用されるべきである。
従って、本件事業の環境影響評価及びルート選定に関する調査においても、新ガイドラインの基本姿勢である、アカウンタビリティーを確保したプロセス及び、かかるプロセスにおける本件事業の影響を受ける地域住民や現地NGOを含むステークホルダーの参加が重要かつ不可欠である。国際協力銀行として、本件事業の環境影響評価及びルート選定に関する調査に、どのように地域住民や現地NGOを含むステークホルダーの参加を確保するのか、具体的に説明されたい。

(日本政府答弁)
 国際協力銀行は、地域住民や現地非政府組織の意見を重視しており、スリランカ政府の行う地域住民等との協議等において、環境等の面への配慮が十分ではない等の具体的な指摘があった場合には、必要に応じ、スリランカ政府による適切な対応を促すこととしている。

五、 国際協力銀行がアカウンタビリティーを確保するためにも、国際協力銀行による本件事業の環境影響評価及びルート選定に関する調査結果は公開され、調査結果に対するパブリックコメントを受け付け、そのコメントを最終的な調査結果に反映させることは、最低限必要ではないか。

(日本政府答弁)
 本計画は、スリランカ政府の事業であり、スリランカ政府が、本計画の策定に当たり実施した環境影響評価は、既にスリランカ政府においてパブリックコメントの手続きに付されている。国際協力銀行が行うのは、スリランカ政府が本計画を実施するに当たり、環境等の面への適切な配慮を払っているかどうかを国際協力銀行としても確認することであり、環境影響評価において取りまとめられるような調査報告書を取りまとめることではないので、国際協力銀行として、パブリックコメントの手続きをとることは考えていない。

六、 本件事業の環境影響評価及びルート選定に関する調査の結果は、当然、本件事業の実施に実際に反映されるものであると理解しているが、その理解でよいか。国際協力銀行の見解を示されたい。

(日本政府答弁)
 国際協力銀行は、住民移転に関する状況の把握や関連情報の取得等を通じスリランカ政府に伝達すべき情報を得た場合やスリランカ政府の行う地域住民との協議等において環境等の面への配慮が十分ではない等の具体的な指摘があった場合には、必要に応じ、スリランカ政府による適切な対応を促すこととしている。

七、 二〇〇三年十二月、スリランカ政府高速道路省はスリランカの地方役場と土地収用委員会に対し、「土地補償は、政府評価額の二十五パーセントをこえてはならない」との通達を出したと承知している。ここで言及されている「政府評価額」とは何を指すのか。また、その算出方法を明らかにされたい。

(日本政府答弁)
 スリランカ政府ハイウェイ省は、二千三年十二月三十一日付けの文書により、本件事業に関して収用の対象となる土地についてスリランカの土地収用法に基づく法定補償額に加えて、更に支払いが行われる場合に、当該支払いが原則として当該法定補償額の二十五パーセントを超えるべきではないとの趣旨の土地収用移転委員会の決定を関係先に通知したと承知している。
 当該法定補償額は、スリランカの土地収用法上、収用の対象となる土地の市場価値に基づき算定されるとされており、当該市場価値は、当該土地が自由な市場において売却された場合に得られることが期待される金額とされていると承知している。

八、 「住民移転計画」は、国際協力銀行は契約同意の条件として、またアジア開発銀行は融資開始の条件として、スリランカ政府から提出されたものである。「住民移転計画書」は、家と土地に対する総交換費用での補償を約束している一方で、八で述べたスリランカ政府高速道路省のかかる通達にある「政府評価額」は土地に対する総交換費用を補償したものではないため、高速道路省による通達は「住民移転計画」に違反しているのではないか。
これに関する国際協力銀行及び日本政府の見解及び対応を示されたい。

(日本政府答弁)
 お尋ねの住民移転計画とは、二千二年十月にスリランカ政府が作成した移転実施計画を指すと考えるが、この計画においては、土地等の種類等によってその交換費用等が補償される旨記述している。この交換費用等は一般に法定補償額を上回ると理解しているが、七について述べた通知は、土地収用移転委員会が算定した土地評価額が法定補償額を上回る場合に、当該法定補償額に追加して住民に支払いを行うことについて規定したものであり、移転実施計画の趣旨に反するものではないと理解している。

九、 アジア開発銀行のアカウンタビリティーメカニズムの業務マニュアル・パラグラフ十二によると、SPFは異議申立受付から四十九日以内に再調査及び評価の報告書をアジア開発銀行総裁に提出することになっており、その期限に関する例外は、パラグラフ十三の記載事項に限られている。

 しかしながら、本件事業においてSPFが期限延期の理由としてあげているのは、スリランカの首相が設置した委員会の中間報告書の完成であるため、パラグラフ十三の例外事項には該当せず、業務マニュアルに違反している。本来、SPFは、国内の各種手続きにとらわれることなく、業務マニュアルに則って適切に進められるべきではないか。日本政府の見解を示されたい。

(日本政府答弁)
 アジア開発銀行は、その業務により影響を受ける人々が問題解決を求められるよう異議申し立て協議手続きを有している。アジア開発銀行の業務マニュアルのうち、この異議申し立て協議手続きの進め方などについて定めているアカウンタビリティー・メカニズムの業務マニュアル(以下「業務マニュアル」という。)のパラグラフ十二で示されている別添一には、異議申し立て協議手続きの段階ごとに日数が表示されていると承知している。

 しかしながら、業務マニュアルに表示されている各段階の日数は、あくまでも目安としてのものであるというのがアジア開発銀行事務局の見解であり、我が国政府としても、そのように考えている。

 また、パラグラフ十三では、問題解決のための行動を実施する過程で問題解決を促進するために各当事者が必要とする期間については異議申し立て協議手続きの期間に算入しないとされている。本件事業に係る住民からの苦情を処理するなどの目的でスリランカ首相が設置した委員会が中間報告書を取りまとめる期間は、一方の当事者であるスリランカ政府が問題解決を促進するために必要とする期間であるといえるので、アジア開発銀行において異議申し立て協議手続きを担当しているスペシャル・プロジェクト・ファシリテーターがその完成を待つことは、この規定に沿ったものであると考えている。

 このようなことから、本件事業に係る異議申し立て協議手続きにおいて、スペシャル・プロジェクト・ファシリテーターが異議申し立て協議の受付から四十九日以内に審査及び評価の報告書をアジア開発銀行総裁に提出していないことが直ちに業務マニュアルに違反するわけではないと認識している。

 我が国政府としては、アジア開発銀行が、スリランカ政府や申立人と十分協議の上、業務の範囲で生じた問題の解決をできる限り早期に行うことが当事者双方にとって望ましいと考えており、今後もアジア開発銀行の本件異議申し立て協議手続きが適正に進行されるよう注視してまいりたい。

(c) 2002 FoE Japan.  All RIghts Reserved.

サイトマップ リンク お問い合せ サポーター募集 English