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プロジェクトの概要
世界遺産「都江堰」に作られる新しいダム (中国青年報 2003年7月9日)

 中国青年報 2003年7月9日

世界遺産「都江堰」に作られる新しいダム
張 可佳


2003年6月18日、ユネスコの北京事務所で文化部門プログラムアシスタントとして活躍しているエドモンド・モウカラ氏が、四川省建設庁、ユネスコ中国国内委員会に対し、「世界遺産である都江堰のサイトに新たなダムが作られようとしている」と訴えた。

四川省都江堰管理局は都江堰の魚嘴分水路から1300mほど離れた場所に高さ23m、幅1200mもの楊柳湖ダムの建設を計画している。このダムは、都江堰の中心部より350mしか離れていない。

2200年もの歴史を持つ都江堰は、ダムを必要としない水利施設として名高く、洪水や土砂堆積の防止、灌漑などの多目的な機能を持つ重要な水利施設である。この都江堰によって、100万人もの人々が灌漑を利用しているため、四川省はまた"天国の地"としても知られている。青城山と都江堰はユネスコの世界文化遺産に登録されているが、紫坪鋪ダムによる影響が予想されることから、自然遺産にはノミネートされなかった。したがって、文化遺産のみの登録になっている。

2003年4月28日、都江堰管理局は四川省水利庁、文物庁、建設庁、環境保護庁、規劃庁並びに遺産庁の代表や専門家を招待し、楊柳湖ダムサイトへのフィールドトリップ並びにシンポジウムを開催した。専門家達はこのダムプロジェクトに強く反対したが、都江堰管理局は推進している。管理局はまた、2003年6月5日にシンポジウムを開催し、ダムの推進を広く呼びかけた。

さらに、都江堰管理局は楊柳湖ダムによって、電力と水供給問題の解決が図られると信じている。「これから先、もし都江堰の分水路がうまく機能しなくなれば、灌漑地域で深刻な水不足が起きる。紫坪鋪ダムのピーク時調節は岷江の水位変動にすぐ影響を与えるため、将来的に魚嘴分水施設は直接的に壊される危険性が高い。現在の水供給量を支えている魚嘴施設を含め、都江堰全体を守るため、そして紫坪鋪ダム完成後の水供給を確保するため、楊柳湖ダムの建設が早急に必要なのである。もし、この楊柳湖ダムが建設されなければ、紫坪鋪ダムはきちんと機能しない上、膨大な投資への返済もままならず、四川省は大きな負債を抱えることになる。楊柳湖ダムが紫坪鋪ダムからの放水を調節するために建設されなければ、5000万元(約7億円)ものお金が毎年無駄に消えていくことになる。」

しかし、これらの説明は、明らかに紫坪鋪ダムを推進するためのものである。政府当局は紫坪鋪ダムの建設を決定時に、魚嘴分水路の近くには作らないと約束をした。現在、紫坪鋪ダムは建設中であるが、楊柳湖ダム事業で、既に終了したはずの論議がまた繰り返されているのである。なぜエンジニアはこのような特徴のある歴史的遺産をターゲットにするのか、理解できない。
楊柳湖ダムが建設されれば、深刻な環境破壊がもたらされる上、下流の魚嘴地域は干上がり、都江堰の灌漑施設も存続しないだろうと指摘する専門家もいる。楊柳湖ダムは都江堰世界遺産に極めて近く、その建設によって、都江堰が世界遺産のリストからはずされる危険性も高い。また、楊柳湖ダムサイトは国による名勝保護地域であるが、この建設により都江堰がこの保護地域のリストからはずされてしまう危険性も高い。

四川省環境保護委員会、文物委員会、国家建設庁、国家教育庁の専門家は明らかに反対の意思を表明している。彼らは、「一度変更を加えたら、取り返しのつかないことになる。水力発電ダムのために、先祖の代から残されてきた文化遺産を犠牲には出来ない。国家当局は世界遺産に影響を与えるプロジェクトを全て報告するべきだ。」と主張する。

新たに29のサイトが世界遺産に登録をされたため、政府は世界遺産保護に甚大な努力を尽くしてきた。中国政府は、これらの遺産を守ると世界に約束している。私達は政府がこの約束を守ってくれることを真に願っている。そしてまた、同じような問題や論争を避けるため、全ての世界遺産、国家自然保護地域、名勝地が開発プロジェクトの禁止地域になるべきだと専門家は訴えている。

また、楊柳湖ダム事業は国家水利部、四川省水利庁、成都市の利益となるが、その収益のうち、アバ自治区にもたらされるのはたったの10%である。

国家水利庁よると、「紫坪鋪ダムは西部大開発の重要プロジェクトになっており、楊柳湖は調節池として紫坪鋪ダムの機能を最大限生かすための重要な役割を果たすことになっている。楊柳湖ダムは建設されなければならず、岷江へのダム建設はもう行われないと約束した。最初の計画では、魚嘴から300mしかはなれていなかったが、現在では1300mかそれ以上上流に移して再計画をしたとのことである。「魚嘴から、このダムは見えない位置に建設されるため、景観は損なわない」と主張している。
 しかしながら、はたして、このような結論に、エドモンド氏のような懸念を抱えている市民は納得することができるのだろうか。

第二ダム(楊柳湖ダム)事業の中止を求める都江堰市市民団体からの声明文(日本語訳)

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