Wet’suwet’enとの連帯声明ー先住民族の権利を無視したカナダでのガス開発は即時中止を!

化石燃料

本日、FoE Japanは「Wet’suwet’enとの連帯声明-先住民族の権利を無視したカナダでのガス開発は即時中止を!」を発出しました(声明の本文は下記ご覧ください)。

日本の官民も関わるカナダのガス開発の現場で深刻な先住民族の権利侵害や環境破壊が発生しています。FoE Japanはこれまでも国内外のNGOらとともに、事業に関わる日本の官民に対し撤退を求めてきました。(過去の声明はこちらをご覧ください。) 私たちは引き続き、事業に関わる企業や銀行に対し、撤退を求めていきます。


私たちは、大地・文化・水・歴史などを守るために闘っている先住民族Wet’suwet’enに連帯を示します。またWet’suwet’enが大切にしているこれらのものを破壊し、彼らの権利を侵害する事業に関わってきた企業や民間銀行に対し、先住民族の権利を尊重し、事業を即時中止すること、またカナダおよび日本の政府に対し、これらの事業への公的支援を即時中止するよう求めます。

現在、カナダのブリティッシュ・コロンビア州(BC州)で一連のガス開発行われています。「LNGカナダ事業」は三菱商事やロイヤル・ダッチ・シェルが出資し、液化プラントと輸出ターミナルを建設する事業です。BC州北東部モントニーで採掘したガスを670kmの「コースタル・ガスリンク・パイプライン」で運搬し、キティマット港の同液化プラントで処理してアジア市場にLNGを輸出する計画です。

日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)がLNGカナダ事業に対する融資を検討しており、日本の民間銀行も協調融資を行うと見られますが、どの民間銀行かは今のところ明らかではありません。しかし日本の三大銀行はすでにコースタル・ガスリンク・パイプライン事業に融資を行っており、LNGカナダ事業に融資を行う可能性も十分あります。

開発事業者であるコースタル・ガスリンク・パイプライン社(CGL社)はWet’suwet’enの権利を一顧だにせず、パイプライン敷設を強行しようとしています。8月にはパイプライン事業者が、Wet’suwet’enの遺跡がある地域での工事を先住民族の同意なしに開始し、遺跡内の遺物も先住民族の同意なしに回収しています。事業者は土地改変許可(Site Alteration Permission)を得たとしていますが、先住民族はこの土地改変に同意してはおらず、これは先住民族にとって重要な、土地、文化、歴史の破壊に他なりません。カナダ政府も採択している「先住民族の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP)」の11条(文化的伝統と慣習の権利)に明らかに違反しています1

CGL社は現在Wedzin Kwa(Morice river)下での掘削を進めようとしています。Wedzin Kwaは、Wet’suwet’enや現地に生息する動植物にとって大切な水源です。大地・文化・水・歴史を守るため、現地ではWet’suwet’en自身、そしてその闘いを支持する先住民族や各地から駆けつけた人々が非暴力の反対運動を続けています。Wet’suwet’enの呼びかけに応じ、カナダ各地で連帯を示す行動も起きています。

一方、現場に派遣された現地の警察当局(RCMP)が反対活動を行う先住民族を強制排除しようとしています。RCMPのメンバーは、キャンプ(コヨーテ・キャンプ)に設置されている貯水タンクの水を故意に抜く、また抗議者に対し逮捕をほのめかすなどのハラスメント行為を行なっています2。実際に、すでに逮捕者も出ています。

そもそも、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業により直接影響を受けるWet’suwet’enは、これまで一度も土地の権利を手放したことはなく、1997年にカナダ最高裁判所は、これらの土地に関する利用権は先住民族に属しているとする判決を出しています(Delgamuukwケース)3

国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)も、2019年12月13日付けで、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」(FPIC)が得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業、トランス・マウンテン・パイプライン事業、サイトCダムの建設を即時停止するよう連邦政府に求める決議を発表しています4。つまり、国際的にもこれらの事業でFPICが取得されていないことが指摘されているのです。

私たちは、先住民族の権利が侵害され、自らの大事な大地・文化・水・歴史を守ろうと正当な権利を主張している抗議者が不当に抑圧されている事態を看過することはできません。事業に関わる企業や銀行は、国際的なスタンダードや各々が有する人権方針に従って先住民族の権利を尊重し、事業から撤退すべきです。

注:
1:UNDRIP 第11条では右記規定している。「 1. 先住民族は、自らの文化的伝統と慣習を実践しかつ再活性化する権利を有する。これには、考古学的および歴史的な遺跡、加工品、意匠、儀式、技術、視覚芸術および舞台芸術、そして文学のような過去、現在および未来にわたる自らの文化的表現を維持し、保護し、かつ発展させる権利が含まれる。 2. 国家は、その自由で事前の情報に基づく合意なしに、また彼/女らの法律、伝統および慣習に違反して奪取されたその文化的、知的、宗教的およびスピリチュアル(霊的、超自然的)な財産に関して、先住民族と連携して策定された効果的な仕組みを通じた、原状回復を含む救済を与える。」
2:https://twitter.com/Gidimten/status/1447286562006388739?s=20#AllOutForWedzinKwa
3:“’We still have title’: How a landmark B.C. court case set the stage for Wet’suwet’en protests”,https://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/delgamuukw-court-ruling-significance-1.5461763, CBC News 2020年2月13日
4:Committee on the Elimination of Racial Discrimination “Prevention of racial discrimination, including early warning and urgent action preceedure” https://tbinternet.ohchr.org/Treaties/ CERD/Shared%20Documents/CAN/INT_CERD_EWU_CAN_9026_E.pdf?_ga=2.171294304.1158930249.1618 324061-1016472279.1618324061, 2019年12⽉13⽇

以上

(画像:@Gitimtenのツイッターより)

 

関連するプロジェクト