先住民族グループが国際協力銀行にレター送付―LNGカナダ事業への融資を行わないよう求める

カナダの先住民族であるWet’suwet’enのハウスグループであるCas Yikhは、三菱商事やシェルが出資を行なっているLNGカナダ事業に対し、国際協力銀行に融資を行わないよう求める書簡を提出しました(国際協力銀行への提出は2021年3月)。
書簡は、LNGカナダ事業に関連するパイプライン事業に対する懸念や、先住民族の権利が侵害されている現状について、また気候正義の観点からも事業に融資しないよう求めています。詳しくはレター本文をご覧ください。(原文英語、以下FoE Japanによる仮訳)


2021年3月27日
CAS YIKH

東京都千代田区大手町4-1-1
国際協力銀行
代表取締役総裁 前田匡史 様

私たちCas Yikhは、Wet’suwet’en NationのGidimt’en Clanに属するハウスグループであり、貴社のLNGカナダプロジェクトへの投資に関して、すべての金融支援を拒否するとともに今後の投資に関与しないよう、ここに正式に要求します。

ご存知かと思いますが、私たちはカナダのブリティッシュ・コロンビア州(以下BC州)で、私たちの領域を横断し、環境的、社会的、そして経済的に莫大な犠牲を払うことになるコースタル・ガスリンク・パイプライン (以下CGLパイプライン事業)の違法建設に反対しています。全長670キロのこのパイプラインは、BC州北東部で採掘されたガスをカナダでは最大規模となる海岸沿いで計画中のLNGターミナルに運ぶものです。LNGカナダ事業はパイプラインと切っても切り離すことができず、ひいては私たちの土地、生活様式、人々にもたらす破壊とも切り離すことはできません。

私たちは、土地の利用、占有、世襲の統治システムを維持しており、パイプラインの建設が予定されている土地も含め(カナダ政府等への)譲渡契約が未承認の土地(”unceded land”)に関して決定を行う権限と管轄権を含む所有権を私たちが保持しているということをお伝えします。CGLは、LNGカナダにガスを供給するものであり、BC州北東部のフラッキングによるガス採掘と合わせて一つのプロジェクトとして評価する必要があります。これらの事業は独立して成り立つものではなく、累積的な影響を考慮しなければなりません。

法的観点からも、Anic’niwh’it’ën (Wet’suwet’enの法律) の下、また「先住民族の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP)」に謳われている「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」に鑑み、私たちの土地へのアクセスを決定し侵入を防止するため、私たちは我々の土地に対する管轄権を再度主張しています。

CGLパイプライン事業は、州・連邦レベルで採択されているUNDRIPの第10条「先住民族は、自らの土地または領域から強制的に移動させられない。関係する先住民族の自由で事前の情報に基づく合意なしに、いかなる転住も行われない。」という規定に違反しています。UNDRIPによると、国家や第三者は「先住民族自身の代表機関を通じ」かつ「先住民族自身の手続きに従って」先住民族と協議し、協力すべきであるとしています。

国連人種差別撤廃委員会はカナダ政府に対し、「協議を行なう義務が十分かつ適切に果たされた後に、Wet’suwet’enの人々が自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)を与えるまで、Wet’suwet’enの伝統的かつ未譲渡の土地及び領域におけるCGLパイプライン事業に関する建設を即時停止し、全ての許認可及び承認を停止すること」を要請しています。CGLパイプライン事業がなければLNGターミナル事業は成り立ちません。つまり、私たちのFPICなしにこの事業は遂行されません。

1997年、Wet’suwet’en(及びGitxsan)の伝統的酋長は、カナダの先住民族の権利に関する最も重要な訴訟を闘い、勝利しました(Delgamuukwケース)。Delgamuukw判決で、カナダ最高裁判所 (SCC)は、条約が署名されていない場合、その先住権原は先住民族にあり続けると認めています。この最高裁判決は、未譲渡の領域を統治する我々の権限を認め、我々の権原が決して消滅していないことを立証するものです。したがって、Anic’niwh’it’ën、カナダの法律および国際法はすべて、あらゆるレベルの政府が、係争のある領域の統治権限を有する指導者の同意を求める義務を持っており、それを怠ることは先住民族の権利を直接侵害することになると規定しています。

10年以上にわたり、私たちは化石燃料企業らが私たちの土地に侵入するのを阻止するため、土地に対する権利を主張し、それがエンブリッジ社のノーザン・ゲートウェイ・パイプラインの中止やシェブロン社のパシフィック・トレイル・パイプライン撤退につながってきました。  近隣地域および、炭素集約型エネルギー事業が予定されている回廊の途中に建設された100万ドル規模のコミュニティプロジェクトであるUnist’ot’en Healing Centreは、Wet’suwet’enの抵抗の中心地です。これは、抗議行動やデモではありません。Wet’suwet’enの部族が、何世紀にもわたって維持してきた伝統的な領域を占有し使用していることを意味します。

私たちの管轄権と、同意することも拒否することもできる固有の権利があることを表現するために、私たちのFPICの手順が実施されています。Unist’ot’enのインフラは、私たちの領域とのつながりの表現であり、私たちの領域の継続的な使用と占有を示す一例です。私たちの伝統的な統治構造は、私たちの土地と水の適切な使用とアクセスの方向性を示し続けており、伝統的な先住民族の法制度は損なわれることなく、私たちの人々と私たちの土地を統治しています。

先住民族コミュニティからのFPICが得られない事業が建設に進めないことは、議論の余地なく明らかになりつつあります。例えば、2020年2月下旬、Tech Frontierは、カナダ最大のタールサンド鉱山をアルバータ州に建設するための申請を取り下げました。2020年3月初旬、ケベック州でEnergie Saguenay Projectを運営していたGNLケベック社は、CGLパイプラインに反対する鉄道封鎖の後、「カナダの政治情勢における課題」のため主要投資家を失いました。 BC州の資源プロジェクトを監督する州の環境機関である環境アセスメント局 (EAO) は、GCLパイプラインの環境影響報告書を承認することはできないと書いています。我々は現在、連邦政府及び州政府の大臣との間で、我々の土地の権利及び所有権を承認し、維持するよう交渉を行っていますが、これはCGLパイプライン事業に関する合意が存在することを意味するものではありません。私たちは、私たちのハウスグループの領域における石油及びガスのパイプラインに断固反対し続けます。私たちの土地、空気、そして水を引き続き守っていく決意を固くもっています。私たちにとって、フラッキングで採掘されたガスも、それ以外の化石燃料も、正しい気候変動対策の一部にはなりえません。

過去10年間に、20件以上のLNG事業がカナダの西海岸で提案されましたが、マーケットは不安定で、コミュニティの同意も得られず、気候危機への対処にもならないことから、推進された事業はほとんどありません。(CGLの)建設資金を確保するため、(CGLに出資する)TC Energyは、同事業の株65%をKohlberg Kravis Roberts&Co. (KKR) (資産2000億ドル以上のニューヨーク市拠点の投資会社) とAlberta Investment Management Corp (AIMCo) に売却しました。

私たちは、LNGカナダ事業への投資を即時停止し、撤退することを貴社に要請します。パイプラインを建設している企業が私たちの同意を得ていないだけではなく、この事業は環境、社会、ガバナンス (ESG) の投資基準を満たしていません。

Awetza,
Dinï zé’ Woos, Frank Alec, Cas Yikh Gidimt’en Clan, Wet’suwet’en

 

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