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開発金融と環境プログラムキャンペーンJBICガイドライン改訂関連情報>ガイドライン改訂論点6「生態系の保全」に関する補足参考資料を提出
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ガイドライン改訂論点28「地球環境保全に貢献するプロジェクト支援」 に関する補足資料提出

2008年7月10日

JBIC/NEXIは、地球温暖化防止に関係するプロジェクトを積極的に支援するため、
ガイドラインに以下の点を盛り込むことを提案しました。

・「当該案件が、省エネ、CDM候補等地球環境保全的要素を有する場合に、積
極的に把握、公表」
・「具体的には、上記地球環境保全的要素について、プロジェクト実施主体者に
求める環境社会配慮に必要な要件とは切り離し、例えば、スクリーニング・フォー
ムに別枠を設ける格好で、申告していただく」

FoE Japanは、これまで大規模ダム開発事業が、地元の環境や社会に多大な負の
影響を及ぼしてきたケースを見てきた経験から、温暖化ガス排出が少ないという
理由で、別の側面においては必ずしも地球環境に負の甚大な影響を及ぼすような
プロジェクトまでもが「地球環境に良いプロジェクト」として扱われることを非
常に危惧しています。

そこで、JBIC/NEXI が「地球環境保全に資するプロジェクト」を積極的に支援し
ていくのであれば、(a)「地球環境保全に資する」プロジェクトの選定方法や基
準、審査手法を策定・公開すること、(b)個別案件の審査結果を、(a)の審査基準
に即して具体的に公開することが必要であること、また大規模水力発電、原子力
発電関連事業、大規模農地を必要とする)バイオ燃料事業、(大規模用地を必要
とする)産業用植林事業が「地球環境保全プロジェクト」として支援されること
への疑問を補足資料として地球・人間環境フォーラムと共に提出しました。


2008 年7 月10 日
提出者: 国際環境NGO F o E J a p a n
満田夏花(所属:地球・人間環境フォーラム)

「論点28 地球環境保全に貢献するプロジェクト支援」補足コメント

すでにコメントを提出しております通り(「ガイドライン改訂検討に係る論点整理(案)7/3 時点」論点28 ご参照)、私たちは、JBIC/NEXI が「地球環境保全に資するプロジェクト」を積極的に支援していくのであれば、(a)「地球環境保全に資する」プロジェクトの選定方法や基準、審査手法を策定・公開すること、(b)個別案件の審査結果を、(a)の審査基準に即して具体的に公開すること――が必要であると考えます。

また、地球環境保全に資する案件の選定には気候変動、生物多様性の保全、森林の保全等を含む包括的な評価が必要であると考えます。一方、@大規模水力発電事業、A原子力発電関連事業、B(大規模農地を必要とする)バイオ燃料事業、C(大規模用地を必要とする)産業用植林事業――に分類されるプロジェクトは、下記のような理由から大きな環境社会上リスクが伴います。かかる観点から、これらの案件が「地球環境保全プロジェクト」として支援が行われることに関して疑問を感じています。

1.大規模水力発電事業
大規模ダム建設は広範囲に及ぶ複雑な環境社会影響を伴います。典型的なものとしては例えば下記のような影響が考えられます。

@自然環境への影響
ダム水没地における既存の生態系の消滅(森林の水没など)、ダム建設による河川の分断、減水域における河川生態系の消滅・変化、貯水池の水質悪化、下流域の水質悪化、貯水池からのメタンガス等の発生、河川の水量の変動パターンの変化に伴う下流域の河川生態系の変化、貯水池およびその上流部における土砂の堆積、河川の土砂流動の変化、堆積土砂の処分に伴う影響、ダム湖周辺・下流域における土壌浸食、海岸浸食、
アクセス道路建設に伴う諸影響 等

A社会環境への影響
大規模な非自発的住民移転(*1)、森林・河川などに依存した生活を送ってきた人々にとっての生計の消失、その他@の自然環境の影響・変化を通じた社会影響 等

なお、世界ダム委員会(WCD)(*2)は、2000 年11 月、世界8 ヶ所の大型ダムのケーススタディ、56 ヶ国125 のダムに関する調査、協議などをもとに最終報告書を取りまとめ、ダム開発に当たっての、意思決定のための戦略的優先順位やガイドライン等を提唱していますが、同報告書はダムの環境社会リスクに関しても多くの情報を提供しています(NGO が取りまとめた報告書の要点は別添を参照)。

2.原子力発電事業
原子力発電事業は、核拡散の防止、放射性物質の漏出、放射性廃棄物の処理といった固有かつ大きなリスクをもたらす要因を有しており、ひとたび事故がおきたとき広範囲・長期間におよぶ甚大な影響をもたらします。

3.(大規模農地を必要とする)バイオ燃料事業
バイオ燃料の原料生産に関しては、現在、特に食糧価格の高騰をもたらすという点について論争が行われていますが、生態系や水資源、土地の奪い合い、社会環境影響についても指摘されているところです。私たちは耕作可能な土地が有限であるということから、ワラなどの非可食部などを原料とする次世代型バイオ燃料や、ヤトロファなどの食糧原料以外の植物であっても、同様の影響が生じると考えています。大規模なバイオ燃料事業がもたらす影響としては例えば下記が挙げられます。

・ モノカルチャー化を伴う農地の拡大
・ 生態系の大規模な消失および生物多様性の減少
・ 森林の農地転換による温室効果ガスの発生
・ 破壊された泥炭地などからの温室効果ガスの発生(*3)
・ 水資源の枯渇、汚染
・ 上記を通じた地域コミュニティへの影響
・ 土地をめぐる紛争(*4)
・ 食料生産・土地利用の競合による、食糧価格の高騰

4.(大規模用地を必要とする)産業用植林事業
大規模な産業用植林事業は、大規模な用地を必要とすることから、基本的に3.と同様の影響が生じます。とりわけ、自然林の単一プランテーションの転換(*5)、原生林の破壊、生物多様性の低下、土地の囲い込み、地元住民との土地をめぐる紛争(*6)、地元住民の権利の侵害(慣習的な土地利用権など含む)などに関して報告があります(*7)。
「植林は環境にやさしい」というイメージが先行している感がありますが、植林を一律に環境にやさしいとすることは間違いです。

以 上

別添:世界ダム委員会(WCD)最終報告書の要点(地球の友ジャパン:プレスリリース
2000 年11 月16 日より)

*1 世界ダム委員会によれば、全世界で4000〜8000 万人が、中国とインドでは1950〜1990 年の間に3500万〜4200 万人がダム建設によって立退きを強いられた。International Rivers によれば現在も年間約200万人が移転させられている。
*2 大型ダム建設のもたらす大規模な環境・社会影響に対処するため、過去の経験のレビューとこれをもとにした国際的に受け入れ可能な枠組みの策定を目的に、世界銀行と国際自然保護連合(IUCN)によって1998 年5 月に設立された。政府機関、NGO、ダム運用者、草の根市民運動、企業、学界、業界団体、コンサルタントなど様々な立場をもつメンバーで構成された。
*3「東南アジアの泥炭地の乾燥による二酸化炭素排出の評価」(Wetlands International, 2006 年12 月)に
よれば、アブラヤシ農園開発や製紙用のパルププランテーションなど泥炭湿地帯での森林伐採による泥炭の乾燥化などによって排出されるCO2 は年間約20 億トン(化石燃料の燃焼由来のCO2 の発生量の8%に相当)にのぼる。
*4 アブラヤシはBDF の原料の一つとして有望視されているが、たとえば現在、サラワクにおいては、アブラヤシ農園開発業者に対する住民訴訟は、確認されたものだけでも40 件に上る。なお、森林伐採、植林地造成なども含めると、土地紛争は150 件にものぼる。
*5 マレーシアのNGO のSahabat Alam Malaysia(SAM)によれば、1985〜2000 年までのマレーシアにおける森林減少の約87%はプランテーション開発によるとされている。また、サラワクだけで、240 万ヘクタールの森林が2004 年までにプランテーション開発のために割り当てられている
*6たとえば、インドネシアにおいては、造林地開発時には、地元住民との間で多くの紛争が生じている。2001 年7 月までに記録された813 件の土地をめぐる紛争のうち、261 件は造林などのプランテーション開発をめぐるものである。スマトラなどにおける製紙会社の天然林の破壊や地元住民への圧迫の状況は、 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)の報告書などで詳しく報じられている。
*7 一方で、地域住民の土地利用や社会経済評価を十分踏まえた上で設計され、地域住民に利益を還元することを重視したコミュニティ型林業などのグッドプラクティスもある。

 
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