辺野古新基地建設事業に関するファクト・シート

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1.事業の概要

事業名称: 普天間飛行場代替施設建設事業
実施主体: 防衛省沖縄防衛局
主な関係機関:
-日米安全保障協議委員会(2プラス2)
-沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会(SACO, Special Action Committee on Facilities and Areas in Okinawa)
-沖縄県
-名護市
場所: 沖縄県名護市辺野古岸域

事業内容:
-施設の規模・・・広さ205ha、高さ10m
-埋立て面積・・・160ha(代替施設本体約 150ha、護岸部分約 5ha 及び辺野古地先水面作業ヤード約 5ha)公有水面の埋立ての事業実施区域
-滑走路と周辺の長さ・・・1800m(1200mの2 本の滑走路をV字型に配置)
-施設
1) 進入塔(北側滑走路の南西側に約 780m、南側滑走路の北東側に約 420m)
2)燃料桟橋、燃料貯蔵施設(容量30000KL)、給油所
3)格納庫(8棟程度)
4)駐機場(約 240,000 ㎡程度)
5)  飛行場支援施設(通信施設、車両整備場、電子・通 信機器整備場、倉庫等)
6)洗機場(3 カ所で約 12,000 ㎡程度)、排水処理施設
7) 航空障害灯
8) 無線施設(航空保安施設及び航空管制施設として、管制塔、送受信施設等)
9) 航空灯(火飛行場灯台、滑走路灯、誘導路灯等)
10)弾薬搭載エリア(約 16,000 ㎡程度)
11) エンジンテス トセル(約 900 ㎡程度)
12) 消火訓練施設
13) ヘリパッド
14) 汚水処理浄化槽
15) 護岸(係船機能付)*ヘリ等が故障した場合の船舶を使用した輸送のため

出典:「普天間飛行場代替施設建設事業に係る 環境影響評価書」(防衛省)(https://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/hyoukasyohosei/3.pdf)

2.主な経緯

1995年9月米海兵隊員らによる12歳少女暴行事件発生。以後、米軍基地反対運動の機運が高まる。
11月日米両政府が「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」を設置。
1996年4月橋本総理とモンデール駐日大使が普天間飛行場の全面返還に合意。
12月SACO最終報告で普天間飛行場の返還が合意。 
1999年11月稲嶺沖縄県知事(当時)、移設候補地が名護市辺野古沿岸域に決定。
12月岸本名護市長(当時)が受け入れを表明。
「普天間飛行場の移設に係る政府方針」を閣議決定。
2004年8月沖縄県宜野湾市の大学構内に米軍ヘリが墜落。
2006年5月日米安全保障協議委員会「在日米軍再編実施の為の日米ロードマップ」を発表。
「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」を閣議決定。
2007年8月環境影響評価手続き開始
2009年9月鳩山内閣発足。普天間飛行場移設先変更も含めた在日米軍基地の在り方について見直しの方向で合意した連立政権合意書を締結。
2010年1月名護市長選で基地反対派の稲嶺進氏が当選。
4月県外移設を求める県民大会開催(9万人規模)。
5月日米両政府、普天間飛行場の移転先を辺野古とする共同声明を発表(2プラス2)。
2011年6月「2プラス2」で日米両政府が辺野古崎にV字型の滑走路を建設することに合意。
11月沖縄県知事選で仲井真氏が県外移設を公約に掲げて再選。
12月沖縄防衛局が午前4時過ぎに環境影響評価書の一部を県庁守衛室に持ち込む。
2012年2月日米両政府が普天間飛行場移設と、海兵隊のグアム移転を切り離すロードマップの変更案を発表。
12月環境影響評価を補正した評価書を県に提出。
2013年1月県内全41市町村長が「東京行動」を展開。「建白書」を安倍首相に渡す。
3月沖縄防衛局が県に辺野古埋め立て承認願書を提出。
12月仲井真知事が公有水面埋立て申請を承認。
2014年1月名護市長選で稲嶺進氏が再選。
4月名護漁業協同組合、岩礁破壊工事に合意。5年間で36億円の漁業補償。
8月沖縄防衛局、辺野古の埋立て予定地で海底ボーリング調査を開始。
12月基地反対派の翁長雄志氏が県知事に就任。
2015年1月「臨時制限区域」へフロート設置、岩礁破砕許可範囲外で2~45tのトンブロックでサンゴ破損。
2015年3月翁長知事、辺野古での海底作業中止を要請。沖縄防衛局が農林水産省に不服を申し立て。
(参考: www.city. nago.okinawa.jp、各種報道より)

3.主な問題点

(1)環境アセスメントの手続きにおける問題
・ 当初提出された方法書には重要事項が欠落。さらに修正版には住民意見陳述の機会も設けられなかった。
・ 準備書には、方法書にない4つのヘリパッド、係船機能付き護岸、汚水処理施設が追加された。方法書からのやり直しが必要。
・ 「事前調査」や「補足調査」と称する巡視船や掃海艇などによる強行調査により、ジュゴンの追い出しを図った可能性があり、アセスメント法違反。
・ 船によるジュゴンへの悪影響を把握していたにも関わらず環境アセスメントに詳細記述なし。
・ 2012年に作成された環境影響評価補正版の英文全訳が米国国防総省に渡されていない。

(2)環境影響
・ 移設予定地には、サンゴ礁、アマモ等の藻場、環境省の「日本の重要湿地500」に選定された干潟及び湿地(※2) 、国の天然記念物であるジュゴンの北限の生息地、ウミガメの産卵地であり、また多くの新種が発見される豊かな生態系が育まれ、世界的にも貴重な生物多様性のホットスポットのひとつ。
・ 環境影響評価書(2012年)では「埋め立て予定地でジュゴンの活動は観察されず、埋め立てても直接的な影響はない」と結論付けられているが、2014年に環境NGOにより藻場にジュゴンが泳ぎながら食べた跡を110カ所確認。跡が複数の筋となっていることも確認(※3)。 また、2013年、防衛局自身の調査により建設予定地でジュゴンの食痕を発見しているが、公表はせず。
・ ジュゴンに関して複数年の調査を実施していない。
・ ラムサール条約事務局が辺野古沖と大浦湾について、環境影響評価に基づく保全措置を取るよう求める文書を環境省に提出(※4)。
・ IUCNが複数回に渡り沖縄ジュゴン保護を求めて勧告。
・ すでにボーリング調査のためのアンカーやワイヤーロープによりサンゴ礁が破壊されていることが確認。
・ 埋立て用の土砂(2100万立方メートル、10tトラック350万台分)の大半(1640万立法メートル)を県外から購入(アセスメントを必要としない)することが予定されているが、調達先での環境破壊及び辺野古、大浦湾へのアルゼンチンアリ等の外来生物の侵入が懸念される。
・ 久志地域の水がめである辺野古ダム周辺からの土砂採取による赤土流出の懸念(※5)。

(3)社会影響
・ オスプレイ配備に伴い、騒音、事故等が住民生活に大きな不安を与えている。
・ 現在のキャンプ・シュワブにおける訓練による騒音と普天間飛行場の騒音状況を鑑みると移設後の騒音増加が及ぼす住民生活への影響が懸念される。
・ キャンプ・シュワブ内からの土砂採取に関しては、キャンプ・シュワブ内に土壌汚染が発生している可能性もあり、埋立てに利用されることによる自然環境破壊及び漁業・観光業への影響が懸念される。

(4)民意無視
2010年に開催された普天間飛行場の国外・県外移設を訴える県民大会では9万人が参加。2014年には、名護市長選挙、名護市議会選挙、沖縄県知事選にて移設反対の民意が明確に示された。現在もキャンプ・シュワブゲート前には反対を訴える人々による座り込み、海上でもカヌー隊の抗議運動が継続。安部首相は「沖縄の方々の気持ちに寄りそう」と発言しながらも、民意を無視して辺野古移設を「唯一の解決策」と主張(2015年1月30日)。沖縄県知事選における反対派の翁長氏の当選後は、沖縄振興予算を削減し、知事との面会を避け、さらに沖縄県知事による準備作業の停止要請を受けながらも大規模な作業を継続。

(5)国家権力による暴力
キャンプ・シュワブゲート前及び海上にて続けられる市民による非暴力抗議活動に対し、海上保安官が暴言、暴力行為を繰り返している。2014年8月にはカヌー隊メンバーが海上保安官により抑え込まれ頸椎捻挫で全治10日の負傷、2015年1月には大浦湾で海上保安官が女性に馬乗りにされ、2月22日には米軍により沖縄平和運動センターの事務局長他1名が拘束されるなど、その他抗議する市民、マスコミの船やカヌーに海上保安官が乗り込んできての日常的な暴力が繰り返されている。

4.最近の動き

・2015/1/11:辺野古移設反対運動で初の逮捕者。
・2015/1/14:政府は2015年度の内閣府沖縄振興予算を前年度比4.6%(61億円)減の3339億円にすると決定。一方で防衛予算では米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設経費として本年度から2倍増となる1736億円を計上(※6)。
・2015/1:県が埋立て承認の法的瑕疵を検証する第三者委員会設置。
・2015/2/16:翁長知事が辺野古移設準備作業の一部停止を沖縄防衛局に指示。
・2015/2/26:沖縄県が許可区域外でサンゴの損傷を確認。沖縄の翁長知事、辺野古の準備作業一部停止を指示。
・2015/3/23:翁長知事、アメリカ軍普天間基地を名護市辺野古へと移設するための海底作業を1週間以内に停止するように、防衛省沖縄防衛局に指示
・2015/3/25:沖縄防衛局が不服審査請求

(※1)普天間飛行場代替施設建設事業に関わる環境影響評価書の補正後の環境影響評価
   https://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/hyoukasyohosei/3.pdf
(※2)https://www.sizenken.biodic.go.jp/wetland/453/453.html
(※3)https://mainichi.jp/feature/news/20140710k0000m040042000c.html
(※4)琉球新報 https://ryukyushimpo.jp/news/storyid-233960-storytopic-271.html
(※5)普天間飛行場代替施設建設事業公有水面埋立承認願書に対する名護市長意見
  https://www.city.nago.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/3honbun.pdf
(※6)https://ryukyushimpo.jp/news/storyid-237357-storytopic-3.html

 

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