MEAsに関する交渉は取引の道具なのか?
ドーハ閣僚会議で定められた交渉は、全て「シングル・アンダーテイキング(一活受諾方式)」の一部になっている。つまり、これらの交渉が一つのパッケージとして行われて、ある交渉分野の獲得が他の交渉分野で譲歩することによってバランスをとられるかもれないことを意味する。WTO/MEA関係の交渉は、「やられたらやり返す」経済的取引の考えに則って行われる訳である。そのため、MEAsで定められている特定の貿易義務とWTOルールとの関係についての政府の立場は、他の交渉分野での経済的利益を守るための取引道具として、簡単に利用(誤用)されるかもしれないのである。
目下WTOにおけるほとんど全ての交渉が行き詰まっている。中でも、農業交渉は最も議論の激しい分野であろう。農業交渉では、様々な国の政府が自国の農作物輸出の市場アクセスを増大するよう要求したり(または要求しつつ)、特に妥協を知らないEUなどの政府が国内農業市場をもっと保護するよう要求したりしている。次に同点2位を占めるいまいましい問題は、アメリカが、安価なノーブランドの医薬品(コピー薬)に途上国をもっとアクセスできるようにするというドーハ合意を撤回することが許されるかどうかという問題、そして、投資などの新たな議論をWTOに導入しようというEUの提案が、いやいやながらも途上国に最終的に受け入れられるのかどうかという問題である。
明らかに、環境はどの国の欲しいものリストをとってもその上位にあるとは言えないし、カンクンでのどの政府代表団にとっても優先度の高い問題ではない。ということは、貿易の交渉担当者でさえ、MEA交渉よりも高い関心が寄せられているその他の領域、特に農業交渉や投資交渉などを優先させてしまう可能性が限りなくあるということである。
国際環境ガバナンスに影響を与える国際政策の策定は、WTOの「やられたらやり返す」式の経済的取引の手続きに則って行われるべきではない。持続可能な社会のために地球環境問題に取り組むMEAsに関する交渉や実施は、国際ガバナンスを支える重要な柱である。MEAsは決して貿易ルールに従属してはならないし、その自立性と権威が認識されなくてはならない。