9月10日(水)から始まった、第5回WTO閣僚会議は、5つのWorking-Groupでの若干の調整のあと、12日午後には事務局から第2次の閣僚宣言ドラフトが出された。このドラフトは先進国・途上国双方の修正要求に若干配慮して柔軟性を取り入れたものの、基本部分は米国とEUが作ったと言われる第1次ドラフトと殆ど変わらず、13日夕刻からのミニグリーンルーム会合、更には14日の午前からの30カ国のグリーンルーム会合で途上国からの異論が続出、米国・EUと途上国のギャップは極めて大きいことが明らかとなった。14日の午後2時頃に議長と事務局は、この期間中には合意に達することは困難と判断し、会議の中断を提案、午後4時になり「今回の閣僚会議での問題点を整理したものをジュネーブの一般理事会で12月までに纏める」と言う簡単なメモを採択して、あっけない幕切れとなった。
1999年、シアトル閣僚会議での立ち上げに失敗したWTOは2001年のドーハでは閣僚宣言が採択され、遅れ馳せながらWTO体制が立ち上がったかに思えたが、ドーハでの途上国への無理強いが、カンクンにおいて途上国からの反発に繋がったと言えよう。米国とEUは今回の会議の2ヶ月前に2者間でその対立点を解消する交渉を行い、これをベースに閣僚宣言の1次ドラフトを作成した、その際に途上国の主張への配慮が大きく欠けてしまったのだ。途上国は経済支援などをちらつかせれば、結局は"IMPLICIT CONSENSUS"が得られるとの甘い判断があったようだ。
先進国主導のWTO体制に反発する途上国が"G21"を結成、これに同調する途上国が会議中に70カ国までに膨れ上がった。インド・ブラジルを先頭に南ア・中国それにベニンなどのアフリカの小国までもが米国に'NO' をはっきりと言ったのが今回印象的であった。
この間にあって、日本政府の会議におけるプレゼンスは全くと言ってよいほど見られなかった。政府だけで200人、業界・メディアを入れると400人とも言われ、数の上では米国と匹敵する人数を送り込んだのに、米・欧に相手にされないばかりか、途上国にも相手にされず、会議の失敗を自ら反省することもなく、税金の無駄使い以外の何者でもないように、私には見えた。
'EXPLICIT CONSENSUS'この言葉は'明白な同意'とでも訳せばよいのか、カンクンで、NGOや途上国がWTO体制を批判するのに多用したキーワードとなった。もともとドーハ閣僚宣言の採択に当って、NEW-ISSUEの取り込みに最後まで反対をしたインドを説得するのに「EXPLICIT CONSENSUSを得てNEW-ISSUEをWTOに取り込む」と言う文章が付け加えられて、ようやく閣僚宣言が採択された。そんな謂れのあるNEW-ISSUEが今回の閣僚宣言のドラフトでは堂々とCONSENSUSを得たかのように枠組みに取り入れられようとしていたのだ。EXPLICIT CONSENSUSは如何見ても、'全員賛成投票'とか'全員挙手'とかを指すはずなのに、WTOのルール決定プロセスは極めて不明朗で、いつのまにかIMPLICIT CONSENSUSが得られたことになってしまう。国連の諸会議では、1国・1票と言うルールが明白で、それ程「密室決定」と批判されることが少ないのに、WTOでは先進国が、経済的優位を背景にその政治力で途上国の意見や提案を封じ込めてしまう方法でWTOのルールを作る過程がこれまでしばしば行なわれてきた。
FOEIはWTO・バッジをぶら下げる紐に、このEXPLICIT CONSENNSUSを各国語で印刷したものを首にかけ、キャンペーンに臨んだ。結果としてカンクンでは途上国のEXPLICIT CONSENSUSは得られず、NGOの活動の意図も表面的には達成された。FoEIからのカンクンへの参加は40名、広報活動・市中でのデモ参加・各国政府への働き掛けなど多彩な活動を行い、その意図実現とプレゼンスの強化には貢献出来たと考える。